タイムアタック! 階層移動に使用回数はあるのか?
管理コンソールから十一階層へ飛び、十階層から戻る。
帰還モノリスから一階層へ。
また十一階層へ。
それを何度か繰り返す。
ひたすらに階段を駆け上がる。
まるでスポーツ根性マンガの訓練だな。
拠点へ戻ってきた俺は結論を下す。
「五回もやれば充分だな。
階層移動に回数制限はない!」
仮に使用制限があるとしても、日に五回も使わない。
困ることはないだろう。
基本的には最深の階へ飛ぶ。
しばらく攻略して引き返してくるのがいつもの流れだ。
帰りは二十階層の帰還モノリスってことになる。
ステータスウィンドウから一部のメニューが使えるようになったが、階層移動の機能は使えない。
だからこの機能でダンジョンの奥から戻ってくることはできない。
まあ、当たり前だな。
そんなことができたら簡単すぎる。
いつでも瞬間移動できるわけじゃないのだ。
階は選べても、出現場所はその階の階段のすぐそば。
ダンジョンの入口に近い、登り階段側である。
これ、場所も選んで飛べたら便利なんだけどな。
宝箱の前とかに飛べれば嬉しいんだが。
まあ、ぜいたく言ってもしょうがない。
最近は日課の宝箱回収ですべての階層を周るのが厳しくなってきた。
自律分身と手分けしても、ちょっと広すぎる。
十六階層以降は一人だと危険だし、
ボスが復活しているときは一人では戦わないようにしている。
油断して一人で戦って死んだら笑えない。
「さて、後は……」
二つ目の転送門を出せるようになったんだったな。
とはいえ、これはダンジョンの外でやることだ。
あとで借りている部屋のロッカーで試そう。
使っているロッカーはまだある。
ダンジョンの入口に変えるとなると、
入っている荷物を別のロッカーに移動しないとな。
いや、御庭がもうじき工事が終わると言っていたな。
それなら、アパートの部屋に二つ目の出入り口を作るか。
工事のスケジュールを確認しておこう。
俺はダンジョンを出て御庭のもとを訪れた。
御庭とナギさんは仕事をしていたようだ。
俺が来ると、手を止めて話を聞いてくれた。
工事の日程を聞くと、あと数日で終わるという。
「数日か。一度部屋に戻ろうと思ったんだが……」
「急ぎの用事かい?」
「いや、別に急がないんだけどな」
「あとは仕上げの工程だと聞いている。
部屋の確認をしたいのなら業者に声をかければいい」
「ダンジョン関係だから、業者に見られたくないんだ」
「なら遅い時間に行けば誰もいないよ」
「あ、そうか。業者がいない時間に行けばいいんだ」
「ダンジョンはこっちに移動させたんじゃなかったのかい?」
御庭が興味深そうに聞いてくる。
「移動させたんだけど、
もうひとつダンジョンの出入り口を増やせそうだから――」
俺は御庭に経緯を説明する。
「それは面白そうだね!
僕もダンジョンに入れたらいいのにな!」
「そういえば、出入り口が複数ある悪性ダンジョンはないのか?」
「僕の知る限り、そういう悪性ダンジョンはない。
だけど、クロウ君のように管理者権限を持っていた人が亡くなった場合はどうなるのかな?」
「管理者権限を持ったままダンジョン内で死んだ場合か……」
「普通ならダンジョンごと消えるか、悪性ダンジョンになるけど……。
管理者権限の有無によって違いがあるんだとしたら興味深いね」
「ちなみに御庭は管理者権限についてどれくらい知っているんだ?」
「クロウ君から聞いたこと以外はほとんど知らないよ。
僕らの仲間にダンジョン保持者は少ないんだ」
「スナバさんはどうなんだ? ダンジョン保持者だろ?」
「スナバ君はあまりダンジョンに潜らないんだ。
シズカちゃんを連れていくわけにもいかないしね」
「たしかに子供を連れてダンジョンに入るのは無理だよなあ」
ダンジョンに入るときはシズカちゃんは外で待っているのか。
御庭が思いついたように言う。
「そうだ! クロウ君たちが一緒に攻略するのはどうかな?
スナバ君のダンジョンは難しいから大変だって言っていたよ」
「へえ? それなら、今度スナバさんに聞いてみるよ」
「今日は任務で出かけているから、明日話してみるといい」
「ああ、そうする。リンたちにも相談しておくよ」
「明日なら僕とナギ君がシズカちゃんを預かれる。
スナバ君にも伝えておくよ」
難しいダンジョンか……。
内容にもよるけど、ちょっと興味はあるな!
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