日常生活と物資の調達!
「んじゃ、いってきまーっス!」
「おう、いってこい!」
トウコを乗せた車が学校へ向かって走りだす。
運転しているのは公儀隠密のメンバーだ。
ここから俺の街は少し遠い。
遅刻しないように送迎を頼んだのだ。
まさに重役!
重役登校である!
トウコはそうまでして学校に行かなくてもいいっス!
などと言っていたが、そうはいかない。
高校中退して忍者が最終経歴とか、そんな人生は歩ませられない。
どうしてもツラいとかイヤだというのなら無理にとは言わないが、
やはり選択肢は残しておきたいと思う。
学業はちゃんとやっておいたほうがいい。
辞めるのはいつでもできる。
でも、やり直すのは難しい。
「では、私も講義を受けてきまーす」
「おう。またあとでな」
リンは大学のリモート授業を受けている。
場所がどこでも、それはできる。
日常生活を捨ててはいけない。
その上でのダンジョン攻略である。
俺も少し仕事をする。
公儀隠密ではなく、ファミレスのマネージャー業である。
マネージャーといっても、
ほとんど名ばかりの管理職である。
新店長のヤマダさんが実務をこなしてくれるから、
少し相談に乗ってアドバイスをするだけ。
このごろは俺が手伝わなければならないことも減ってきた。
店の人手不足問題は公儀隠密のおかげで解決した。
パンデミック禍のこのご時世、働き手はなかなか見つからない。
吹けば飛ぶような零細飲食店だしな。
公儀隠密のおかげ、と言ったが、公儀隠密側にもメリットはある。
働き手になるのは認識阻害を受けた人々だ。
ダンジョン関係の事件で、家族や記憶を失った人たち。
住む場所を失ったり、自我が薄くなったりした人たち。
だからと言って常識や能力を失ったわけではない。
普通の生活を送ることで社会復帰できる。
勤務態度はきわめてマジメ。
公儀隠密がケアしているので、これまで大きな問題も起きていない。
まさにウィンウィンの関係。
ダンジョンで使う物資を仕入れる。
さいわい、金には困っていないので、
買おうと思えば大抵のものは買える。
ホームセンターで買ってもいいが、
売っている品には限界がある。
あまり大量に買うのも変だし、運ぶのも手間だ。
通販で買うにしても、
アパートに大量の品物を運び入れるのは面倒である。
せっかく公儀隠密の拠点に居るので、
御庭と話していろいろと物資を融通してもらった。
公儀隠密に依頼すれば、
手に入れにくい品物も用意してくれる。
武器防具、素材などなど。
武器庫にあるものはなにを使ってもいいらしい。
銃や爆発物もあるが、それはいらない。
俺が持ち出したのは刀や槍、ナイフの類だ。
防具もいくつか持ってきた。
盾やアーマーである。
鎧といっても武者鎧のようなものではない。
現代的なプロテクターや防弾チョッキだ。
このまま使っても役に立つと思うが、
基本的には手を入れて使うつもりだ。
実用的な品はよく考えられているものだ。
見るだけでも参考になる。
無駄がなく、効率がいい。
その形になったことには意味があるのだ。
こうした品を素人の俺が一から作るのは難しい。
手を加えるとしたら、
使いやすいようにカスタマイズすることだろう。
重心を変えたり、サイズを変えたり、余分をけずったり。
ダンジョンで手に入れた素材を混ぜたり、置き換えたり。
ダンジョンの素材と現代の素材のどちらが強いとは言えない。
状況に応じて使い分ければいいのだ。
今回の物資にはお金はかかっていない。
タダでくれたというか、給料の一部みたいなものだ。
こういう点も融通が利いてうれしいね。
さて、物資はそろった。
拠点改造計画をすすめよう!
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