メッセージはユニークで!
リンネで検索したところ、
同名の候補がたくさんヒットしてきた。
リンと向き合って視線を交わしているが、別に色っぽい話じゃない。
検索結果に戸惑っていただけだ。
メッセージを送りたいだけなのに、ぜんぜん進まないぞ!?
ふむ……。
どうしたら、正しい宛先にメッセージを送れるんだ?
そう考えていると、リンがポンと手を打つ。
「あの。ゼンジさん。
私の名前を変えたらどうでしょうか。
すごーく長い名前にしちゃえば私だと分かりますよねー?」
「お、それは名案だな! なるべく長くしてくれ!」
リンのダンジョンへ移動して、コンソールから名称を変える。
こちらに戻ってきて、再度検索。
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宛先の検索
ダンジョン名:草原ダンジョン
所有者名:リンネ@ゼンジさんへ! 今日のごはんはカリカリのベーコンとコーンスープ、それと食パンですよー!
検索 汎用ポイント10
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名称の上限である五十文字ギリギリ。
この文面なら、かぶりようがない!
「よし、検索っ!」
「あ、今度はうまくいったみたいです!」
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選択してください。
リンネ@ゼンジさんへ! 今日のごはんはカリカリのベーコンとコーンスープ、それと食パンですよー!
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「よし! 検索結果が一件になったぞ!」
「成功ですね!」
「ではこれを選択して……」
「メッセージを書ける画面になりましたねー!」
よしよし。
うまくいったな!
俺は件名と本文を入力する。
文字数は少なめにしておこう。
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宛先:リンネ@ゼンジさんへ! 今日のごはんはカリカリのベーコンとコーンスープ、それと食パンですよー!
件名:交換日記
本文:それは楽しみだ!
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必要ポイント:12
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「これでよし! 送信!」
「では、届いたか見てきますねー!」
そういうとリンはぱたぱたと走っていく。
そんなに急がなくても……と思ったが、
止める間もなく転送門から出ていってしまった。
まあいいか。
トウコを起こして飯にしよう。
腹も減ってきたし、朝食が楽しみである。
俺はクローゼットダンジョンを出て、トウコを起こす。
「うえぇ? もう朝っスかー?」
「そうだよ! 飯を食ったら学校だぞ!」
トウコを連れて草原ダンジョンに入る。
リンは管理コンソールに張り付いていた。
指先でメッセージ画面をなぞり、のの字を描いて、
嬉しそうに笑っている。
「ゼンジさーん! 届いてましたー!
お返事書きますね!」
リンはコンソールを操作しようとしている。
俺は苦笑を浮かべる。
「名前の変更はしばらくできないぞ。
それより、飯にしようぜ!」
リンはてへっという感じのゆるい笑みを浮かべる。
「あ、そうでした!
ではごはんを温め直すので、テーブルにどうぞー!」
トウコはしょぼついた目をこすっている。
まだ半分寝ているな。
そして、大あくびをしながら言う。
「ふわぁー。リン姉、おはよーっス」
「おはよう、トウコちゃん! いい朝だね!」
俺は人数分の飲み物を用意してテーブルに置く。
リンが機嫌よく、俺と寝ぼけ眼のトウコの前に皿を出す。
朝食のメニューは予告通りだ。
コーンスープがほかほかと湯気を立てて、
甘く香ばしい香りを漂わせている。
カリカリに焼き上げられたベーコンが、
バターがたっぷり塗られた食パンの上に身を横たえている。
黄金色に溶けだしたバターが、草原の柔らかな日差しを受けて輝く。
おお、なんとも美味そうだ。
こらえきれず、俺の口の中に唾液がたまっていく。
トウコは目を輝かせ、よだれのたれた口元を拭っている。
リンが席に着き、上機嫌に言う。
「おまたせしましたー」
「いただきます」
「いただきーっス!」
こうして、俺たちは朝食にありついた。
パンにかぶりつく。
サクサクカリカリでうまいぜ!




