同名、同ダンジョン! そんなのありかよ!?
一通目のメッセージはリンに送ることになった。
まさか、リンがこれほど期待しているとは思っていなかったぜ!
しかしそんな内心の葛藤はリンには見せられない。
何事もなかったように話を続けよう!
「じゃ、宛先を変えて……。
『ダンジョン所有者情報』は、リンネに設定してるんだよな?」
「はい。そうですー」
宛先欄にリンネ、と入力する。
すると、コンソールの表示が変わる。
表示されたのは宛先の検索をする画面か?
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宛先の検索
所有者名:リンネ
ダンジョン名:
検索 汎用ポイント10
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「名前だけでは見つからなかったんでしょうか?」
「同名の人がいるってことか。
しかし、検索するのにポイントを取られるのか……」
考えてみれば、そういうものか?
所有者名はメールアドレスと違って一意に識別できるものじゃないからな。
「ええと、ダンジョン名は草原ダンジョン、と入れればいいはずですねー」
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宛先の検索
所有者名:リンネ
ダンジョン名:草原ダンジョン
検索 汎用ポイント10
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「よし、入力した。検索っと!」
「あれ? なにか、いっぱい出てきました!」
表示されたのは――
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選択してください。
リンネ:草原ダンジョン
リンネ:草原ダンジョン
リンネ:草原ダンジョン
リンネア:草原ダンジョン
リンネア:草原ダンジョン
リンネス:草原ダンジョン
リンネット:草原ダンジョン
リンネル:草原ダンジョン
リンネル:草原ダンジョン
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思わず「はぁ?」っと声が出る。
コンソールがバグっているのか?
と一瞬疑うが、違う。
単に複数の検索結果が返ってきただけだ。
にしても多い。
「もしかして、同名……というか似た名前の人がヒットしたのか?」
「うぅーん。ダンジョンを持っている人がこんなにいるんですねー」
驚いたのはヒットした数に対してだ。
正直、こんなに多いとは思っていなかった。
リンネだけでも三人。
リンネ以外の名前があるのは、後方一致でヒットしたのだろう。
草原ダンジョンという名称はありふれているのかな?
こう見ると、
ダンジョン保持者は案外たくさんいるのかもしれない。
「で、どれが本物のリンなんだ?」
「さ、さあ?」
俺たちは顔を見合わせ、首を傾げた。
これは予想外だ。
名前だけならまだしも、
ダンジョン名まで指定したのに被るのか!
こうなると、どれがリンのダンジョンなのかわからない。
三つのうちどれかが正解のはずだが、
このままでは一つに絞れない。
じゃあ、適当に選んで送るか?
あるいは全部の候補に送り付ける?
しかしそれでいいのか?
赤の他人にメッセージを送ることになる。
ただの間違いメールでした、で済むのか?
いや、済まない。
少なくとも自分の存在が相手に知られる。
ダンジョン保持者であると喧伝するようなものだ。
まあ、知られるのは偽名とダンジョン名だけ。
これはいつでも変更できるが……。
いや、ダメだ。
相手は受信したメッセージにいつでも返信できる。
俺が名前を変えても、
リヒトさんはメッセージを送れている。
いわゆるアドレス帳のように、
一度やりとりした相手を保存する機能があるのだ。
名前を変えても、相手には識別されてしまう。
そうなると、リヒトさんとのやりとりに使っている、
名前を変更する連絡方法が使いづらくなってしまう。
考えすぎかな?
メッセージくらい気軽に送っても問題ないのか?
などと俺は考え込む。
リンは相変わらずじっと俺を見ている。
いや、見つめ合っている場合じゃないんだよ!
どうすればいいだろう?
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