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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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VSボス戦! リーダーはメスカマキリで!? その2

 リンが【ポージング】で敵の注目を集める。

 俺の周囲から敵が減り、なんとか攻撃をしのげるようになった。


 その分、リンは多数の褐色カマキリからの攻撃にさらされている。

 カマキリが前腕を振り、リンの首を狙う。


 リンは盾を上げ、その陰に隠れる。

 盾は攻撃を防ぐ。

 ごんっと、硬質な音。


「きゃっ!」


 なんとか防いだものの、打撃の勢いは殺せない。

 たまらずにリンはよろけて後退した。


 さらに別の褐色カマキリがリンに迫る。

 びくりと身を(すく)めるリン。

 よろけた状態では次の攻撃は防げない!



 そこへ俺が追いすがる。


「させるか!」


 俺はすかさずカマキリの背を斬りつける。

 刃は深々と褐色カマキリに食い込む。


 握った刀に力を込め、刃を押し込みながら切り下げる。

 硬い前脚と違って、体内は思ったよりも柔らかい。


 刀を振り切ると、そのままカマキリは絶命した。


 カマキリが塵に変わると、俺はそこを突き抜けてリンのそばへ。

 包囲を狭めてくるカマキリたちを【フルスイング】ではじき飛ばす。


 奥からカマキリの一群が追ってきている。

 先ほど俺を囲んでいた残りだ。


 しかし、これはトウコに任せておけばいい。

 銃を構え、すでに狙いをつけているからだ。

 さらに銃口には力強い魔力の光が満ちている。


 トウコが引き金を引く。


「まとめてふっとべーっ! チャージショットーっ!」


 派手な閃光を伴って弾丸が飛ぶ。

 その軌道上にいた数体の褐色カマキリが貫かれていく。


 閃光が通り過ぎると、その後に魔石がコロコロと転がる。

 一網打尽である!


「やりいっ!」


 トウコは硝煙をあげる銃を構え、喜色(きしょく)を浮かべている。


 その背後、柱の上でなにかが動く。

 ぼやけてよく見えない。


 影か?

 いや……違う!


 ピントがぼやけたようなその姿が俺の目に映る。

 焦点が合うように、だんだんと姿を現してくる。


 まず見えたのは緑色。

 そして、巨大なシルエット。


 そいつは柱にピタリと張り付いている。

 鋭いトゲの生えたカマを振り上げ、今にも振りぬこうとしている!


 その下には得意げな笑みを浮かべ、

 俺たちのほうを見ているトウコがいる!


 トウコは気づいていない――!


 どうする!? 術をかける余裕はない!



 俺は全力で駆けながら言う。


「トウコ、ふせろーっ!」

「うぇあっ!?」


 トウコは即座に反応した。

 迷いなく首をすくめ、上体を倒しながら身を投げ出し――


 そこへカマの一撃が到達。

 トウコの背中へと吸い込まれた一撃は――すり抜けた!

 透過したのだ!



 それでもカマキリは動きを止めない。

 すぐさま逆の前脚を振り上げて、二撃目が(はし)る。


 床を転がって避けようとしたトウコの足にカマが届く。


「あだぁっ!?」


 トウコがつんのめるように姿勢を崩す。

 前に向かって倒れかけるが、地面に叩きつけられはしなかった。


 ふくらはぎを挟まれたトウコは、そのまま宙吊りにされている。

 前脚に挟まれた足にトゲが食い込み、血がつうっと流れる。


「うああっ!」


 持っていた銃が手を離れて落ちる。

 硬い床に落ちた銃は塵になって消えてしまった。


 巨大カマキリが大アゴをがぱりと広げる。

 キチキチと気色の悪い音を発しそうだが、音はしない。


 カマキリは前脚を口元へと近づけていく。

 トウコの頭部に噛みつくつもりだ!


 大アゴは人間の頭部くらい簡単に噛み千切ってしまうだろう。


 そんなことはさせない!

 俺はなんとか距離を詰め、トウコを掴んだ前腕を斬りつける。


「はなせっ!」


 妙な手ごたえ。

 刃が届いていない!


 この手ごたえは――ヒットポイントの防護膜だ!

 くそ、斬れない!


 一撃でダメなら何度でも斬るまでだ!


「ファストスラッシュっ!」


 加速した刃が前脚を斬りつける。

 先ほど斬りつけたのと同じ場所。

 防護膜が緩んだ箇所への一撃だ。


 手ごたえが変わる。

 刀が防護膜を突き抜けたのだ!


 だが刃は通っていない。

 無情にも、硬質な前脚の装甲が斬撃を(はば)んだのだ。



 ならば次の一撃を――

 しかしそれは叶わなかった。



 カマキリが邪魔なものでもどけるように前脚を振る。

 俺は上体をそらして躱す。

 あご先を掠めるように凶悪なトゲが生えた前腕が通り過ぎる。


 俺はそれを避けてのけぞり、背後に重心がかかる。

 これでは下がらざるを得ない!


 床に手をついて体勢を整えた俺の目に――ぱっと噴き出した赤い血が映る。


 リンが悲痛な声をあげる。


「と、トウコちゃーんっ!」


 ぶら下げられたトウコが振り子のように大きく揺らされている。

 その足からは赤い血が噴き出している。


 いや違う!

 揺らされてるんじゃあない!


 自分でやっているんだ。

 トウコが揺れの反動を利用して身を起こす。


 そして伸ばした手が腰のホルスターから銃をつかみ取る。

 流れるような動作で抜いた銃を構え、銃口を緑カマキリに向ける。


「んなろうっ! ピアス――ショットォォ!」


 不安定な体勢にあってもトウコの銃口はブレていない。

 ピタリと狙いをつけている。


 銃声。

 閃光が走る。


 放たれた貫通弾がカマキリの胸を貫き、背後へと抜ける。


 通った!

 貫通した!


 カマキリの胸から背にかけてぽっかりと穴が開いている。

 そこから体液がこぼれ出し、床を汚す。


 それでも緑カマキリはトウコを挟んだまま離さない。

 ぎょろり、と首を傾げたカマキリは逆の手でトウコを掴もうと動く。



 リンが手を突き出して叫ぶ。


「トウコちゃんを離してぇぇっ!」


 放たれたのはファイアランスだ。

 いつものような大きさはない。


 炎は細く鋭く絞られている!


 炎の槍が宙吊りにされたトウコを避け、

 わずかなスキマを()って飛んでいく。


 緑カマキリの胸の穴へと吸い込まれるように着弾!

 防護膜の穴を貫き、胸から背中を刺し貫いた。


 カマキリは燃え上がり、

 一瞬にして全身が炎に包まれる。


 カマキリはもがき、たまらずにトウコを放した。

 床に落ちたトウコは背中を床に打ち付け、ぐえっと声をあげる。


 俺はトウコに術の狙いをつけながら叫ぶ。


「入れ替えるぞ!」

「げほっ……りょっ!」


 準備が終わるまでのわずかな時間。

 長い……。

 体感ではとても長く感じる――


 トウコも慣れたものだ。

 動きを止めてじっと待っている。



 燃え上がっていたカマキリの炎が消える。

 ヒットポイントが炎を消したのだ。


 胸に焦げ跡を残し、ぶすぶすと煙を上げている。

 それでもカマキリは動く。

 前腕を振り上げ、攻撃の体勢に入っている!


 ここで【入れ替えの術】が成立。

 俺とトウコの位置が入れ替わる。


 目の前でカマキリが前脚を振り下ろそうとしているところだ。

 問題ない!

 俺はすでに刀を振り、攻撃のモーションに入っている!


「うおりゃあっ!」


 薙ぎ払った峰が緑カマキリの胸へめり込む。

 防護膜の手ごたえはない。


 【フルスイング】のノックバック効果が発生し、

 緑カマキリの巨体が背後へと吹き飛ぶ。


 まだだ!

 俺は振り切った刀を無理やり引き戻す。


 足裏に反発力を生み出して地を蹴って跳ぶ。

 さらに宙を蹴って加速。


 そのまま空中のカマキリへ追いすがり、

 【ファストスラッシュ】で突きを入れる。


 狙いは胸の穴。

 弾丸が貫き、炎が炙った傷口だ。


 刃は狙い通りに傷口を貫く。

 刀を突き込んだまま、さらに術を発動させる。


 【反発の術】だ。

 コストは度外視! 全力だ!


 スキルの上限を超える魔力を注ぎ込み、

 内側からはじき飛ばすイメージ!


「うおおおおっ!」


 体内に突き込んだ刀身に極限の反発力を生み出す!


 握った腕にぶるりと震えるような手ごたえを感じる。

 刀は肉に挟まれて行き場がない。

 肉を押し返そうとする反発力が行き場を失って体内で暴れまわっている。


 はじけ飛びこそしなかったものの、その威力は致命的だ。

 ごぷり、と大量の体液がまき散らされる。


 緑の体がびくりと痙攣すると、力を失ってくずおれる。

 カマキリは絶命し、塵となって消えた。


 俺は魔石を空中でキャッチして、滑りながら着地する。


「すごっ! 空中コンボっス!」

「やりましたねー!」


 二人が喜びの声を上げる。


「まだだ! 残ったザコを片付けるぞ!」


 大物は倒したが、数匹のザコが残っている。

 気を抜くには早い。


 俺たちはそのまま残敵を倒し、戦闘を終えた。


 ふう……。

 ひやっとしたが、なんとか勝てたな!


 二十階層ボス、討伐である!

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― 新着の感想 ―
[一言] 反発して反対にぶつかったらまた反発して中で刀がドカドカ暴れ続けるのか…えぐい
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