VSボス戦! リーダーはメスカマキリで!?
部屋の奥に緑色の巨大なカマキリが現れた。
奴はくっくっ、と上半身を揺すっている。
俺たちの姿に気付いたようだが近づいては来ない。
好都合だ。
こちらから近づく必要はない。
このまま遠くから攻撃させてもらうぜ!
「くらえ――水噴射!」
水流を放つ。
だが、当たらない。
巨大カマキリはさっと柱の影に身を隠してしまった。
さすがに避けるか……。
俺はそのまま放水を続けて、柱の裏へ届くように調整する。
だがこの程度の水量じゃ流れ出てこない。
直撃じゃなければ無理か。
体が大きいからか?
あるいは、既に移動した?
まだ柱の影にいるのか?
「ファイアボールっ」
リンが放った火球が飛び、柱の近くに着弾する。
それは、見事に柱周辺を燃え上がらせる。
しかし敵の反応はない。
巨大カマキリはそこにはいなかったらしい。
既に柱を登ったか、姿を隠したまま別の柱の陰に移動したのだろう。
くそ……。
隠れて移動されると厄介だな!
炎が周囲を照らしている間に目をこらしてみる。
ダメだ。見えない!
壁と柱を伝って移動できるとなれば、
いきなり背後から攻撃を仕掛けてくることもありうる。
「リン! どこいったかわかるか!?」
「いえ、わかりません! 隠れちゃったみたいです!」
【隠密】を発動させたのだろう。
トウコが苛立たし気に言う。
部屋の奥へ走り出しそうな勢いだ。
「このっ! イモカマめーっ!」
「追うな! まずは小粒を削れ!」
制止したのは危険だからだ。
途中にある柱の一つ一つ、
その陰に小粒の褐色カマキリが潜んでいるかもしれない。
うかつに近づくのは危険だ。
カマキリの攻撃は鋭く、動きも速い。
「リョーカイっス! じゃあ、こっからばらまくっス!」
「はいっ! ファイアボールっ」
敵も隠れているばかりではない。
褐色のカマキリたちがじわじわと近づいてきている。
柱の陰から飛び出してくるもの、
闇の中から翅を羽ばたかせて飛んでくるもの……。
「うらうらっ!」
「ファイアボールっ!」
空中の敵はトウコが撃ち落としていく。
速度はそれなりだが、動きは直線的だから狙うのはたやすい。
落ちたカマキリを炎が塵に変える。
「ていっ!」
俺は近づいてきた褐色カマキリの攻撃をかわし、刀を一閃する。
前脚の付け根を狙って斬り飛ばす。
さらに追撃を入れ、脆弱な首を刎ねる。
当たる。斬れる。倒せる!
取り巻きのカマキリは、通路にいる個体より弱いようだ。
だが数が多い。
二匹目が襲い掛かってくる。
【危険察知】と【回避】の助けを借りて、立っていた場所から飛び退く。
カマの一撃が通り過ぎていく。
そのまま柱に着地。
三角飛びのように跳び、斬りかかる。
カマキリは防御するようにカマのガードを上げる。
斬りつけても腕の防御は抜けないだろう。
ならばと、俺は手の中で刀の向きを変える。
「フルスイングっ!」
がちん、と峰が前脚を打つ。
強固な腕は砕けなかったが、ノックバック効果が発動する。
後ろに吹き飛んだカマキリは四本の足で踏みとどまろうとする。
だがバランスが崩れた。
腕もはね上がってスキだらけ。
「ファストスラッシュっ!」
踏み込んだ俺の一撃が首に命中。
カマキリが塵に変わり、魔石が床に落ちる。
いまは拾っている余裕がない。
俺は首を巡らせ、視線を動かす。
巨大カマキリの姿はない。
どこに行った……?
柱の影、天井……。
一度隠れられると面倒だな。
同じ場所にいるかもしれないし、姿を消したまま移動したかもしれない。
強力な【隠密】は移動しても視認できない場合がある。
油断して近づいてバッサリ……なんて目にはあいたくない。
視界の端で褐色のカマキリが動いた。
同時に、柱の上からカマキリが羽を羽ばたかせながら飛んでくる。
二体同時での攻撃。
俺は姿勢を低くし、転がって回避。
振り向きながら刀を振る。
カマキリの尻のあたりを切り裂くが、致命傷にはなっていない。
俺の周囲にはカマキリが集まってきている。
回避した先で囲まれてしまったようだ。
リンの声が響く。
「カマキリさん! こっちですよーっ!」
盾トンファーを持った手を大きく振っている。
【ポージング】による惹きつけ効果だ。
俺を囲んでいたうちの数体がリンに向かっていく。
おかげで包囲が緩んだ!
「助かった!」
しかし注目を集めたリンはカマキリに狙われ、多数が群がっている。
今度はそっちをどうにかせねば!
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