VSボス戦! 隠密対策は万全で!?
大扉を抜け、ボス部屋へ入る。
十階層に似た広い部屋だ。
何本もの柱が伸びている。
天井は高く、柱の上部は闇に沈んでいる。
「んー。クモ部屋に似てるっス」
「いやな雰囲気ですねー」
トウコはきょろきょろと。
リンはおっかなびっくりという様子。
「気を抜くな。姿は見えないが、いるはずだ」
壁には松明がかかげられている。
揺れる炎は影をゆらゆらと揺らし、不気味な雰囲気を醸す。
ボスの姿は見当たらない。
やはり隠密で潜んでいるのか。
柱の裏、闇に沈んで見えない天井。
どこもかしこも怪しく見えてくる。
まあ、想定通りと言えよう。
俺は術を集中しながら言う。
「じゃあさっそく、ぶっ放すか! リンは奥。トウコは上を頼む!」
俺は手前を狙うつもりだ。
リンが手を突き出し、トウコはショットガンを上に向ける。
「はーい! ――ファイアボォール!」
「りょ! ――ピアスショットっ!」
火球が飛び、薄暗い部屋が照らされる。
銃声がとどろき、散弾がバラまかれる。
薄暗い室内で、ちらちらと何かが動く。
炎の灯りに照らされて、ちらりと見えたのはカマキリだ!
やはり潜んでいた!
しかも複数いる!
火球が作った灯りが柱の裏に潜むカマキリの影を落とさせる。
柱の上や壁面に張り付いた姿もある。
ひっそりと息を潜むように身動きを止め、黒い瞳でこちらを見ている。
火球が通り過ぎ、その姿が闇に消える。
部屋の奥へ炸裂した火球が大きな炎をあげる。
敵へ直撃はしなかったようだ。
燃え上がったのは壁だけだ。
部屋の奥が炎に照らされる。
そこにいた何かの影が大きく伸びる。
奥になにか居る。
細長いシルエット。
カマキリの影にしては大きい。
角度のせいでそう見えるだけか……?
炎が消える。
もう姿も影も見えない。
奥は後でいい。
俺は手前を狙う。
術の準備はできている!
「忍法――水噴射!」
両腕をそろえ、足に力を込める。
足裏を吸着し、全力で水流を放つ!
強い反動と共に水流が噴き出す。
狙うのは、炎のおかげで把握できた敵が潜んでいる場所!
手前から順に、柱の影を探るように狙いをつけていく。
水は放物線を描いて迸る。
そして――水流が見えない何かに当たって水しぶきをあげる。
当たったようだ!
水に押し流されて姿を現すカマキリ。
その数は一匹や二匹に留まらない。
五匹、六匹……それ以上のカマキリが奥へと押し流されていく。
「いたぞ……! カマキリがたくさんいる!」
「上にもいるっス! うへぇ!」
ぼとぼと、と散弾を食らったカマキリが落ちてくる。
それを見たリンが少し震えた声で言う。
「ま、魔力の反応はありませんでした……!」
つまり隠密状態!
複数のカマキリが潜んでいたのだ!
俺は放水を続けながら叫ぶ。
「ゴブリンのときのような集団パターンだ!
囲まれないように気をつけろ!」
ボスは一体とは限らない。
十五階層ではゴブリンの集団だった。
「はいっ! ファイアボールっ!」
リンが放った二発目の火球が、
水流に押し流されて壁際にまとまっていたカマキリ達に向かう。
俺の出した水は一定時間で消える。
水気が消えたカマキリ達はいともたやすく燃え上がった。
「うらうらっ! 落ちろカマキリッ!」
トウコはショットガンを上へ向けて連射している。
その度に、撃ち落とされたカマキリが落ちてくる。
カマキリ達は柱や天井に張りついて待ち伏せしていた。
潜んでいるところを撃ち落とされ、なすすべもなく撃墜されている。
隠密はバレると脆いからな。
ただ隠れていてもダメなんだぜ!
「ぜ、ゼンジさん……!
奥のほうに魔力の反応があります。大きいです……!」
リンの言葉に、俺は部屋の奥を注視する。
先ほどちらりと見えた大きな影か。
燃え上がるザコカマキリの炎のおかげで、その姿が俺の目に映る。
「デカいな……!」
巨体のカマキリだ。
これまで見たカマキリは褐色系だが、こちらは緑色。
腹や胸は他の個体よりもふっくらとしていて厚みがある。
背が高く、手足は長い。
前脚を高く掲げ、胸の前で拝むようなポーズを取っている。
黒々とした複眼がこちらを睨んでいる。
そう見えるだけだが……迫力を感じる。
こいつがリーダー個体か……!
ご意見ご感想お気軽に! 「いいね」も励みになります!




