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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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ボクサー VS レンジャー!

 オカダが床を蹴る。

 開幕から全力で突っ込んでいく。

 これは俺との一戦目に近い。


 それに対してスナバさんはほとんど動かない。

 鋭い踏み込みに反応できなかったのか?


 いや違う。反応している!

 スナバさんが動く。


 すると次の瞬間、オカダは床に転がっていた。

 投げ飛ばされたのだ。


「がはっ!」

「攻撃が荒い。立て」


 スナバさんは少し距離を置いて立ち、オカダが立ち上がるのを待つ。


 オカダが拳を構える。

 そして素早くステップを踏みながらスナバさんに向かっていく。


「しゃっ!」


 今度は大振りではない。

 素早い左ジャブ。


 しかしスナバさんはそれに合わせていく。

 拳を手で払うようにして防いだ。


 俺にもしっかりと見えたわけではない。

 動きが速すぎて追うのがやっと。

 結果から、防御が成功したとわかるだけ。


 何度か攻防が繰り返される。

 スナバさんにはオカダのジャブが見えているらしい。


 ふむ……すごいな。

 俺はオカダのジャブを見切れなかった。

 ガードはなんとかできても、払う余裕はない。


 これはやはりスキルだろう。

 スナバさんのスキル……。

 何を使っているんだ?


 【回避】や【危険察知】だろうか。

 前に言っていた【探知】か【軌道計算】か?


 スキルによらない、素の格闘技術かもしれないな。



 スナバさんは元特殊部隊員(レンジャー)だ。

 格闘技術を持っていてもおかしくない。


 戦いのプロ。職業軍人。

 だけど、オカダも格闘のプロである。職業格闘家だ。


 そのオカダを上回るほど強い……?

 とんでもないぞ、それは!



 オカダの攻撃がスナバさんを捉えた。


「むっ」

「しゃあっ! 当たったぜッ!」


 だが致命打にはならない。

 打撃を受けながらもスナバさんは崩れない。


 追撃をかけたオカダの一撃を受け流し、体勢を崩す。

 そのまま引き倒す。


 床に倒して勝負あり、である。



 オカダががばりと上半身を起こす。


「っつうー! 強えぇっ! なんでそんなにポイポイ投げれるんだよ!」

「タイミングだ」


 スナバさんの言葉は端的だ。


 簡潔で明快。

 でもちょっと不親切だな。


「オカダが攻撃したスキをついてるって感じですか?」

「そうだ。受けていい攻撃を見極めて、相手のバランスを崩す」


 簡単そうに言っているが、これはかなり難しい。


 オカダのパンチは鋭い。

 大振りでなければほとんどスキがない。


 そもそもジャブに反応することが難しい。

 そのうえでスキを突く……?



 オカダが聞き返す。


「ん? わざとパンチを受けてるのか?」

「オカダのジャブには隙が無い。だからあえて受ける。攻撃するとき、攻撃が外れたとき、攻撃が当たったとき。それぞれに崩せるタイミングがある」


 うーん。高度すぎる!

 理屈はわかるが、できそうな気がしない。



 オカダが頭をかく。


「カウンターとは違うんだよなァ……」

「もっと余裕があればそうする。オカダのパンチには隙がない。だから当たりに行くんだ」


 ボクシングや格闘技におけるカウンターは、パンチの直前か直後にこちらの攻撃を当てる。

 カウンターを撃つ側は、基本的に被弾しない前提だ。

 相手が向かってくるときに攻撃を当てるので威力が高い。


 でも、スナバさんがやっているのはそれとは違う。


「攻撃を()()()()()投げているんですよね?」

「そうだ」


 格闘技でいうなら、クリンチしてからの首投げみたいな感じ。


 でももっと速い。

 組みついたり、掴んだりしているようには見えない。

 接触はごくわずかな時間だけ。


「でもよぉ、殴られたらそのまま投げるのはムリだろ?」

「普通に殴られたら体勢が崩れる。投げには入れない」


「だよなー?」


 オカダが首をかしげている。


 パンチが当たれば衝撃がある。

 押し戻されたりふらついたりして、投げる余裕はない。


「つまりスナバさんは、特殊な殴られ方をしてるってことですね?」

「そうだ」


「たしかに、手ごたえがねーなぁ」

「角度とタイミングだ。パンチが打ち込まれる角度。腕が伸び切る前か後。ダメージを最小限にして、最適なタイミングで相手を崩す。強い力はいらない。少し押すだけでいい」


 そういうことか。

 肉を切らせて骨を断つ。

 柔よく剛を制す。


 角度とタイミング……。

 スキルか!


「それは【軌道計算】スキルを使っているんですね?」

「それも使っているが、あとは経験だな」


 スナバさんは誇るでも偉ぶるでもなく、淡々と言う。

 スキルがなくてもできそうな口ぶりだ。


 本来は狙撃用のスキルのはずだ。

 それを格闘技……パンチの軌道を読むことに使っている。

 パンチだけじゃないか。

 移動経路、体さばき、バランスや重心移動なども計算できるのかもしれない。



 おもえばエドガワ君と三人で護衛ゲームをしていたときもいい動きをしていた。

 計算スキルでこんなに戦えるとは……。


 とはいえこれは、もともとの格闘技術があってのことだろう。

 いくら軌道が読めても、体を的確に動かせなければ意味がない。


 あるいは戦闘経験があるから、攻撃の軌道が計算できるのか。


 ふーむ。

 俺も【回避】で似たことができる。

 これは参考になるな!


 【回避】は安全な位置を教えてくれる。

 つまり逆もわかる。危険な場所、攻撃の軌道がわかる。


 【軌道計算】よりも【回避】のほうが、少し()()

 あくまで攻撃を避けるためのスキルであって、攻撃の位置を知るものではないからだ。


 でも拡大解釈すれば……。

 どんなスキルも使いようだ。

 経験……練習すればできるかもしれない。


 回避からのカウンター。

 あるいはダメージを最小限にしての反撃。


 回避を攻撃に繋げれば戦略に幅が出る。

 ずっと試みていることだが、まだ足りない。

 もっと先がある。



 オカダが楽しげに言う。


「パンチの軌道がわかるってことか? すげーな、レンジ!」


 あ、呼び捨て。しかも下の名前を!


 さすがオカダ!

 殴り合ったら友達になれるタイプ!


 気安いぜ!

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― 新着の感想 ―
[一言] この場合は後の先というのかな 拳法でいう回し受けからの崩し技 合気道の四方投げ、剣術の鎬磨上げからの逆袈裟斬り 柔術で腕を躱して河津落とし等々… なんでも先制攻撃が有利とは限らない例
感想一覧
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