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ファイヤーボールは不毛の土地を生むらしい

生活魔法は凄いんだ!

俺は逆上がりが出来なかった。

まぁ、体重に対して、筋肉が足りなかったのである。

そんな子を手助けしなさいと言われたら、きっと、背中を支えてやったり、アドバイスを与えたりするだろう。

しかし、神は違った。

『体重が重いなら、無くしちゃえば良いんだ』

逆上がりの為だけに、世界中から重力を無くすと言う暴挙をあっさりしてしまう訳だ。

つまり、俺が何を言いたいかと言うと、神って脳筋なんじゃないのかって事。

「勇者様、もうすぐ、敵のアンデットの軍勢が参ります!!!!!」

「はいはい、分かったよ」

「はいは一回ですぞー!!!!!!」

5㎝サイズのナイスミドルに絶叫されながらら、俺はどうするかなぁと空を見上げる。

勇者が絶対安全安心に世界を救う為に全世界スケールダウンしちゃえ!とか考える神、やっぱり、邪神じゃないだろうか…。

足元をわちゃわちゃ歩き回るミニフィギュアさん達は俺を召喚したアストロ王国の軍勢である。

彼らの国は魔王に攻め入られ、多くの領土を魔物達に奪われていた。王都では、王と貴族が徹底抗戦を行なったが、魔王の圧倒的な力により敗北したのだ。今も王族と貴族は非常に強い眠りの呪いで城の地下で封印されているのである。

生き残っている王族は西の果ての神殿にて、神官の道を目指していた末娘のアリーナ姫のみ。

か弱き姫が為に僅かばかり魔王軍から逃げ延びた魔術師達は限界まで力を振り絞り、勇者召喚を行ったのだ。

そんな壮大なストーリーを聞かされたのが、ボランティア活動志望の勇者だった。

一番良さげな服で来てと神に言われていたから、リクルートスーツで来たのも悪かったなと今なら思える。

しかも、戦闘用の加護がスーツについているとかマジで勇者くんちゃんの服だから、いっぱい加護っといたと言う邪神ボイスが聞こえてきそうだ。

スーツに革靴にヒノキの棒が初期装備だけど、俺はこの原罪を永遠に背負っていかないといけない。

何故ならば、ここの住民、みんな、体長が5㎝だからね!

サイズオーバーである。

服と言うか、世界観からサイズがね、オーバーしちゃってる。

エクスでカリバーな剣とか爪楊枝だから、伝説の爪楊枝。

拝啓、邪神様。

俺が完全に異世界からの巨人勇者ジャンルになっていて、中級攻撃魔法を使おうとすると、世界崩壊カウントダウンが表示されるバグを治してください。草々。

なんちゃって。

召喚の儀、御世界救いに参りました!志望動機はボランティア活動経験です!みたいなノリで来ちゃったら、あかんくらい悲壮感が漂っていたんだよ。

マジですまん。

よく分からない服を着ためちゃくちゃでかい人間が現れたら、ビビるよね。

廃棄された神殿で、屋根もフルオープンの廃墟だったから、召喚出来たけど、普通にちゃんとした場所だったから、修理費を稼ぐところから始まる話だったわ。

最初、小さ過ぎるみんなを見つけられなくて、ボッチスタートと震えたのは秘密ね。

ちなみに、え!?!?え!?!?!?!?って姫から三度くらい、目をゴシゴシされたのだが、魔術師達は魔力不足で気絶していたので、彼女しか残されていなかった。

ちなみに勇者さんは素直に色々話した。ボランティア活動とか就活とか自己分析とかを愚痴ったとも言える。

まぁ、最後まで世界は救うし、なんとかするから大丈夫だよ!ボランティア活動だからね!と言う訳だ。

「勇者様、ボランティアカツドウの始まりですね!」

「ん〜…やんちゃ姫さん、何をしてるんですかね」

小声で返事をすると胸ポケットから、ちゃんと防御魔法貼ってますから、普通の声でも大丈夫ですわ!と可愛いらしい声がする。

あんまり近くで、でかい声出すと、みんなの鼓膜がね、死んじゃうから。

囁きの勇者である。

赤毛にグリーンの瞳が子犬みたいにキラキラと輝くガチリトルプリンセスが嬉しげにそんな勇者を見つめていた。

十三歳なんですって、可愛いけど。

本当に小人すぎて、胸ポケットに潜り込まれたら分からないんだよな。

「一番、安全な場所にいなさいってじぃが言ったのです!」

「確かに安全ですが…多分、じぃ的には違うと思いますよ」

「そうかしら!私、勇者様のお胸のポケットに居る時が一番、安心出来るのよ!!」

「それは…ありがとうございます」

ニコニコと悪気無く話すお姫様にじぃには俺が謝ろうと誓う。

何気なく話しているが、召喚時のお姫様はなかなかズタボロだったから、ついつい、甘やかしてしまうのだ。

ロリは正義、はっきりわかんだね。

「勇者様ー!!!!アンデットが第一陣に到着します!!!!」

「…では、行きます!」

「頑張ってください!勇者様!!」

お姫様の声援を受けながら、俺の頭の中でアンデットの情報が駆け巡る。

強い光か、火によってしか殺せぬ不死の魔物。蠢く奴らは体を真っ二つにしても殺せない。

だから、ここで俺が使う魔法は光か、火になる。

本当の所はカッコ良く決めたいし、ファイヤーボールとか投げたい。

勇者様的なムーブ決めて、俺、何かしちゃいました?とかボケたい。

勇者様だよ?やりたく無い?

魔法とかバンバン使って、キャーキャー言われるのが仕事なとこあるじゃん??

しかし、ファイヤーボールは使えない。使ったら、5年ほど火が消えずに不毛な土地になるってウィンド表示が出るからです。

じゃあ、もう、あの生活魔法しかない。

これ、本当にいるの!?と思ったし、邪神からもまぁ、お茶目特典みたいな奴?ちょっとしたエッセンスだよ〜!使わないと思うけどと散々言いまくったアレが。

アレしかなくて。

アレか〜…。

「…………………生活魔法!ミラーボール!」

天空に輝く銀の球体から放たれる七色の光に勇者の目とアンデットが死んでいく。

心にディスコミュージックが流れ出す。

何も知らない王国軍と姫様は歓声を上げた。

「流石!勇者様の慈悲の光!!七色の慈悲!!」

七色の慈悲って何やねん。

「あぁ!全方向のアンデットが死んで行きます!!!!凄い!!僕も勇者様に弟子入りしたい!!!」

ミラーボール志望な弟子とかやめて。

「うぉー!!!!!!!!1人も傷つけずに、また、勇者様が王国を救われた!!!!!慈悲の勇者!!!!七色の奇跡と語り継ごうぞ!!!!」

新しい七色の歴史を生み出さないで。

色々、精神的なダメージを負いながら、勇者は曖昧な笑みを浮かべる。

「勇者様!凄いわ!!とっても綺麗!!!今日のボランティアカツドウも凄いわ!!」

「…あんまり身を乗り出して、騒がないようにね」

「ふふ、分かりましたわ!!」

ボロ雑巾みたいだった君が、キラキラと子犬みたいに可愛く笑うなら、今日のボランティア活動も悪くなかったなと思わなくもない。

勇者って、可愛い子の為にやるもんじゃん?

「うぉー!!七色の勇者様ー!!!」

「待って!」

「七色の慈悲ー!!!」

「お前ら、本当に待って!お前達、邪神の親戚か!?」

「ふふ、勇者様ったら!謙虚な方ですわ!」

「そうじゃないんだよ!リトルプリンス!」

可愛く笑う姫ですら浄化されない心の傷が生まれそうなんだよ!

勇者は、軍勢を踏み付けないようにその場に突っ立ているしかない現状に邪神許すまじと誓う。

いや、まぁ、イージーモードは有り難いけどさ!何も聞いちゃいない軍勢が雄叫びを上げながら、黒歴史を拡散する未来はやっぱり、良くないでしょ!?!?

「七色に輝く勇者ー!!!」

「マジでゲーミング勇者はやめて!!」

今日も勇者は生活魔法で世界を救うのであった。



お読みいただきありがとうございます!

とっても嬉しいです!

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