厄介な過去で忘れたい汚点
再び大都会へ足を踏み入れ最初に行ったのは、病院への謝罪でした。やはりどんな理由があろうとも、多くの方が入院する病院で取っ組み合いの喧嘩をするの異常ですし、それで警察沙汰にならなかったのは偏に病院側の恩情に他なりません。
そうした大きな迷惑をかけたにも関わらず、時々ある事ですからと苦笑いをして許してくださった病院関係者の方々が見せる表情の裏に、ご苦労と情けなさを感じずにはいられず改めて謝罪とお礼を済ませた後、姉と母、そして交際相手が居るというリハビリを専門の病院へと歩を進めました。
今回こちらへ来た理由、一つ目は病院関係者の方と親類への謝罪、二つ目は交際相手とニートのどちらが問題なのかを見極め、場合によっては排除を考えなければならないからです。
病院側の話を聞く以上では交際相手の方が常識があるような行動を取っていますが、それでも私は知らない人物ですし、弱者を利用して救済制度を利用したり、(こちらは母の持病を考えればほとんどあり得ないのですが)生命保険殺人を行う人間だっていますので、それなりの警戒心をもっておくのは必要だと感じます。
そんなことを考えつそちらに今から向かうと姉に電話をして、病院のタクシープールに止まっていたタクシーに乗り込み、15分ほど郊外へ向けて移動すると目的の病院にたどり着き、先ほど聞いた母の部屋番号を訪ねると、そこには母と姉しかありませんでしたので、姉に母の交際相手はどうしたのかと尋ねると、あれだけ喧嘩をした後にいい年である私に会うのはバツが悪いから帰ったと、呆れるしかない理由を告げられます。
そんな下らないプライドがあるのなら、少なくとも病院で喧嘩をするという情けないことをしなければいいんですが、一本気な人だから××ちゃんが私の面倒を看ないのを叱ってくれたんだと、母が交際相手を庇う様な言い方をしますが、病院から話を聞いてきた私からすれば、頭ごなしに言ったんでしょうねと呆れてしまう内容です。
それなら電話でもいいから一度挨拶をしたいと告げると、今は仕事に出てるから連絡が取れないし、彼女にとって私がでしゃばるのは迷惑だから交際相手とは接触しないでほしいと言われます。
ああ、ここまで迷惑をかけて尚、この人はこんな言い方が出来るんだなと本気で呆れてしまい「だったらあなたが捨てた人間に、あなたの件でこれ以上迷惑をかけるのを辞めてくれませんか」と、いくら自分が迷惑を掛けられたといえど病に倒れた老婆相手に言うべきではない言葉が我慢することが出来ずに口をついてしまいます。
そうした私の言葉に帰って来た言葉は「私は頼んでいないし、あんたが勝手にやってるんだし、私が誰と付き合ってもあんたには関係ないんだから、私たち家族の事は良いからそっとしておいてくれ」でした。
ああ、確かに私はこの人にとって家族ではなく、厄介な過去で忘れたい汚点であった。
私はそんな簡単な事すら忘れてていたのかと、自分の考えの甘さに情けなさを覚えますが、それでも親類や病院関係者の方など周りに迷惑ばかりを掛ける存在とは戸籍上では家族ですから、どう転ぼうとも色々な連絡が私の下へと届くのは事実です。
ですが本人がこう言う以上、もはや付き合うは理由はないでしょうし、戸籍上の義務は十分果たしたと思う事にして「後は知りませんからご家族で問題解決してください、厄介ごとである私はもう帰ります」と残して病院を後にし、迷惑をかけた親類へ謝罪をするために、重い足取りでご自宅へと向かいました。