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修行の成果

 チェーンの修行は苛烈を極め、三時間もしないうちに奈々木は心身ともにぼろぼろになった。


 その様子を見ていたファイは、最初の数分は奈々木のスキルという見たこともない技術に興奮するも次第に奈々木の心身が不安になりチェーンに止めるように懇願した。


 だが、チェーンは止めなかった。ファイはチェーンの力で気絶させられた。奈々木は幾度も修行を諦めてすべてを投げ出しかけそうになったがチェーンが「YC2が憎くないのか」というたびに目に黒い炎を宿し立ち上がった。


 奈々木はこの修行で闘いの意味を知った。そしてスキルの扱い方に加えて休み方、脱力の仕方、疲れにくい動き方を中心に奈々木は上達していった。


 そして奈々木の修行がある程度終わったと判断された二時間と五十二分後、奈々木は空を向いて倒れていた。指一本動かせそうになかった。


 「シンジ、すごいよ。初めてでここまでやれるなんて。今のシンジならYC2とも戦えるよ。うん、ちょっと休んでて。楽な寝っ転がり方が分かると思うよ」


 チェーンはそう言って奈々木から離れた。奈々木は修行の結果、どんなに疲れ果てていても自分の周囲の動くものの位置をおおまかに把握する力が付いていた。


 奈々木は雲を見つめた。その雲は日本のどこで見た雲よりも白く蒼を映えさせた。


 「綺麗だな」

 奈々木はつぶやきながらチェーンとの出会いを思い出す。


 その瞬間、奈々木は周囲で何かが動いていることに気が付き気を引き締める。


 「大丈夫、ナナキ? シンジ?」

  それはファイだった。ファイは奈々木を見下ろすようにして言った。


 「ナナキでいい」

 そう言いながら奈々木は脱力する。


 「あのちっちゃいのはシンジって呼ぶのに?」

 ファイは頬を膨らませ腕を組み小さな背でを伸ばしながら言った。


 「チェーンって呼んでやってくれ。それはそうとチェーンが酷いをことをした。ごめん」


 「なんでシンジはそんなにあのちっちゃいのの事をかばうのよ? 謝るのよ?」

 ファイは不満そうに言った。


 「チェーンは俺の一部だ。だからチェーンのしたことは俺の責任なんだ。本当にごめん」

 奈々木は倒れ伏したままファイに詫びた。


 「どういうこと?」


 「チェーンは憎しみしか知らされずに鎖の体で生まれたんだ。そして生まれ育った国を滅ぼした。なにくそって気持ちでいっぱいで攻撃することしかできなかったらしい。それが何の因果かスキルとして俺と繋がっちゃったんだ。チェーンは誰かを愛し、思うことを知ったばかりなんだ。だからチェーンはこれからも誰かに酷いことをすると思う。それを詫びるのはチェーンと繋がってしまった俺の役目だから、ごめんなファイ」

 修行の報酬として聞かされた話をファイに伝えた。


 ファイは奈々木とチェーンの関係性の不気味さに少し怯んだ。


 「あれ、ナナキのスキルってなに? 黒い鎧? 鳥さん? チェーン?」


 「死んだ仲間のスキルを引き継ぐスキルさ。今じゃ38個。スキルを失って蘇るスキルを残してくれた誰かのおかげで二回死ねた」

 奈々木は笑っていた。


 ファイは奈々木を見ているのが怖くなった。 


 「あのイレってなんなの?」

 

 それでもファイは好奇心を抑えきれず一つ質問をしてしまう。


 「イレは憎しみしか知らなかった頃のチェーンだ。チェーンの推測では距離を操るスキルで見えない壁を作ったり瞬間移動したりできるらしい」


 「見えない壁ってことは……」


 ファイは何かに気が付いたようだった。


 「ファイ、どうした?」


 「ケミドアの街から出られなくなっているのはイレのせいだったの?」


 ケミドアの街、イレもそんな事を言っていたと奈々木は思い出す。


 「シンジ、食事はこんな感じでいい?」

 チェーンが木の器を持って奈々木の元へ飛んできた。


 「ファイの分もあるから安心して」


 ファイはチェーンの言葉を聞いてそっぽ向きいらないと言った。


 チェーンは寂しそうにうつむいた後、奈々木の口にスープを流し込んだ。よく分からない味だった。


 味はまずかったが体がほしがっていることを奈々木は感じた。


 大きな物が近づいてくる音と振動を奈々木は感じた。この場所はチェーンが隠蔽して普通の手段で辿り着くのは困難になっている。にもかかわらずこちらの方向を目指して真っすぐ近づいてくる巨大な何かを奈々木は最大限の警戒で迎えようと考えて奈々木は力を振り絞り立ち上がり闇の鎧を装着した。闇の鎧の付属品である闇の槍を杖にして少しでも体の消耗を抑える。


 チェーンはアキヤラボパに変身する。奈々木はチェーンの翼をまさぐり羽をむしった。アキヤラボパの羽は石のナイフとしても扱える。ここで山賊魂が発動して奈々木の身体能力にバフがかかる。


 奈々木は空気に宿るコクー粒子を操作するスキルのデメリットの石化を利用して下半身だけを石化した。これにより筋力の消耗を抑える。


 奈々木達は接近している存在を目視する。それは4mの巨大な人型の存在。


 「あれは建設用巨大魔道具、巨大魔人。なんでこんなところに」

 コリガ王国で建物の建設に必ず用いられる巨大な魔道具4mの巨人。巨大魔人を見てファイは震えた。


 「その異世界人を殺してケミドア、ひいてはコリガを救う為だよ。お嬢ちゃん」

 初老の男性が巨大魔人の操縦席である巨大魔人の頭部に当たる場所からファイに反応した。


 「最初から必殺技で行こう」

 奈々木がそう言った瞬間、チェーンはアキヤラボパの姿で空を飛び巨大魔人の頭上へ向かった。巨大魔人はアキヤラボパを掴もうとする。その瞬間、奈々木は下半身の石化を解除して闇の槍を構えながら闇の槍にアキヤラボパの羽を吸収させる。


 「アキヤラボパ ビナッキャ」

 奈々木はそう叫びながら闇の槍を突いた。闇の槍の先からアキヤラボパの羽が無数に出現して巨大魔人の足に刺さり、突き抜ける。


 闇の槍の特殊な特性を吸収する能力によりズニに伝わる神鳥アキヤラボパの羽に凝縮された神の気が解放され、莫大な力を産み巨大魔人の足に大きな穴を開けた。


 巨大魔人はバランスを崩し転んでしまう。そのタイミングでチェーンはアキヤラボパから妖精の姿に戻り操縦席の初老の男性に 『スキル【植物操作】 特殊なウイルスを生成して植物の遺伝子に働きかける』で作成した極度に眠くなる花粉を嗅がせた。落下する初老の男性を奈々木が上手くキャッチした。


 奈々木は植物操作のスキルで木の根を捻じ曲げて初老の男性を拘束した。


 「シンジ」

 チェーンは心配そうに奈々木を呼ぶ。だが奈々木は大丈夫だと言わんばかりに仁王立ちして闇の鎧を解除して笑顔を見せながら言った。


 「チェーン、分かったよ。イレのやり口。イレは人を傷つけながら全ての責任を俺に転嫁して人を煽り利用する。だから一刻も早くイレを倒さないと事態がこじれる。イレを倒しに行くって言ったらチェーンは止める?」


 「シンジ、一回寝てからの方がいい」

 チェーンはアキヤラボパから人間の姿に戻り安心したように言った。


 「分かったよチェーン」

 奈々木はそう言って大の字で寝っ転がった。


 寝ようと念じた途端、奈々木は深い眠りに落ちた。


 緊張の糸が切れて疲労が一気に出たのだ。


 植物操作のスキルによってチェーンが調合した今の奈々木の体の回復に必要な栄養素が奈々木の体を巡り傷ついた全身を回復していく。


 チェーンは奈々木の睡眠の環境を少しでも良くしようと植物操作のスキルと 『スキル【モーゲ召還】 モーゲと呼ばれる穴を掘ることに長けたロストテクノロジークリーチャーを召還する』で隠蔽と快適なベッドを作り上げた。


 ファイはその手際の良さに見惚れていたが、作業が終わりかけた時、ふいに言葉が口を突いて出た。


 「一体ケミドアで何が起こってるの? チェーン、答えて」


 「それはね、ファイ。イレたちとそれ以外の生存競争。イレたちが滅びるかそれ以外の全てが滅びるかしか道はない争い」


 「だから、どういうこと?」


 「イレはケミドアに結界を張って出られなくした。それをしたのはシンジだって言ってケミドアの人たちにシンジを殺させようとしてる。シンジはイレに勝って事態をどうにかしたい。そういうことだよ、ファイ」


 「えっ……」

 ファイはチェーンの言葉に驚いた。


 「あっ、シンジが寝ている間に動くのはもう限界みたい。おやすみ、ファイ」

 そう言ってチェーンは消えた。


 「ケミドアの人たちはナナキに酷いことしかしてないんだよ。それなのになんでナナキは、なんでナナキは…… なんでナナキは戦ってくれるの!?」

 ファイは泣き叫んだ。その悲鳴を聞くものは誰もいなかった。

ビナッキャとはアキヤラボパの故郷であるズニの言葉で風を意味するらしいです

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