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正義としての戦い

ボルトレイダーイベントをJEABDでプレイすると現れるボス戦です。

後書きにはGTレクスの設定を載せています。

「我が名はジャック・フリーダムズ、最も自由を愛する男。好きに生きることが罪ならば、それすら受け入れ愛おしもう!【罪血(クライムブラッド)転身(・ターンオーバー)】!」


血煙を晴らして現れるは、最強と呼ばれる魔人の片割れ。全てを喰らい、踏みつけ、何も顧みず己が思うままにのみ生きる悪の総帥。

その身に宿る魔の血は、古来より悪の存在の代表格であると同時に王の象徴ともされる圧倒的な力の権化。


「お前たちが投げてよこした名は殲滅者(アナイアレイター)、だったか。フフハハハハハ!そうとも!生きるも死ぬも、生かすも殺すもすべては自由!さあ選べ。正義の下に儚く散るか!すべてを投げ捨て逃げ出すか!!」


タイプ:クライムドラグナー、スタイル:オールブラッド。

漆黒の甲殻に覆われた強靭無比たる体躯に一対の翼。悪を率いる殲滅者とは、罪をも友とする魔龍であった。


「デスパレード総帥、アナイアレイター!たとえここで力尽きようと、悪の首魁たる貴様は必ず倒す!いくぞ、【ゴリ・ラリアット】!」


相手がカッコいいドラゴンモチーフなのに、どうしてウチのはゴリラなんだ。いや、ゴリラは嫌いじゃない。むしろ好き。でもドラゴン相手にゴリラはなぁ、どうしても字面からギャグ感が出ちゃうんだよなぁ。

JEABDだからGTレクスが使えないのはともかく、なんでわざわざアジサイさんはゴリラをチョイスしたんだろう。違うわ、確かゴリラが一番初めに作った魔人なんだっけ。


「G2ゴリラを孤立させてはいけません……!サードオルキヌス、お願いできますか?」


「……了解。援護は任せた、アポトロン」


「ええ、言われずとも。この身はすでに世界平和に捧げていますので。共に正義を為しましょう」


アジサイさんのスーパー熱血ゴリラもそうだが、ツキクサさんもアイシレリィの時と性格が真反対だ。この胡散臭いエンジェルとは話してるだけで背中が痒くなってくる。

サードオルキヌスをディフェンダーに変えるだけじゃなくて、いっそ俺もいつもと違うはっちゃけた魔人でも作ればよかったかな……ロールプレイできないから無理か。


「はああああ!【ゴリ・ラッシュ】!」


「ハッハッハ、この程度が全力か?」


G2ゴリラが両拳で怒涛の連撃を放つも、アナイアレイターは薄ら笑いを浮かべて挑発。そして流血したかのように両腕を紅く染まらせる。


「獣魔の血とはこう使う!【獣血励起・ビーストレイジ】!」


ただでさえ力に満ちている龍の腕がさらに一回り太くなり、肥大化した両腕を地につけた姿はまるで四足の獣。対峙するG2ゴリラは全タイプ中でも純粋な身体能力ならダントツのビーストであるはずなのに、両者を比べるとあまりにも貧弱に見えてしまう。


「ふっ!」


歪なまでにパンプアップされた腕が無造作に振るわれた。軽いジャブのように見えるが、それは常識を超えた膂力によるあまりに速く重たい必殺の一撃だ。


まともに食らえば大ダメージは免れないが、それでもG2ゴリラは回避をするそぶりも見せない。己が全てを攻撃に費やし盲目的なまでに拳打を繰り返す。なぜならそれが自分の役目であり、龍の剛腕を防ぐ者は他にいるということを知っているからだ。


「【バリアリーフ】!グッ、ガードの上からこの威力とは……!まったく、損な役回りだ」


「それでも為し遂げねばなりません。我らこそが正義の砦なのですから。【リトル・ブレス】」


早い話が徹底的な役割分担。G2ゴリラは攻撃にのみ専念し、サードオルキヌスが敵の攻撃を受け切り、アポトロンが回復に従事する。数回の挑戦を経て俺たちが至ったのは、チームプレイの基本であり奥義だった。


アナイアレイターの特殊能力は『他のタイプの能力を使える』こと。倒した魔人の奪い取ることができるという、異能力バトルでお馴染みのアレだ。

その力でクリエイターのように武器を具現化させることもできるし、先ほどのようにビーストの力で肉体強化も行える。だが言ってしまえばそれだけなので、あらゆるタイプのプレイヤーとのバトル経験があれば驚くようなことはない。


「熱苦しい正義の味方には、灼熱の炎が似合いかな?【炎血励起・インフェルノフラッド】」


「背中に隠れろ、G2ゴリラ!【カレント・ウォール】!」


その代わりというべきかこの通り攻撃が苛烈極まりなく、最も硬いアイスロード・ディフェンダーですら連続で攻撃を食らえばあっさり沈む。反面、見た目のわりに体力は低いことが分かっているので、どれだけ的確に攻撃を入れ続けられるかが勝負になる。


そうなると考えられる手段は二つ。

一つは今俺たちがやっているように腕のいいアタッカーを攻撃に専念させ、残りのメンバーで手厚くサポートする方法。

そしてもう一つは、全員攻撃特化のフルアタッカーで殺られる前に殺れの特攻祭り。


前者はアタッカーが本当に優秀なプレイヤーでないと中盤でのダメージチェックに引っかかり、ジャスティス・ワンが現れてアナイアレイターが撤退してしまう。また、全員がそれぞれの役割に特化しているので一人が落ちれば敗北濃厚。

後者は意外とやれないことはないけど全く安定しない。特にさっきのフレイムマスターモードの炎とアルケミストモードの毒撒きが事故死を多発させる。


「私にはなんと心強い仲間がついていることか……!おかげでこうして、なんの憂いもなく拳を振るうことができる!」


「存分にやれ。俺が倒れるまでは守ってやる」


「そしてワタクシが居る限りサードオルキヌスは倒れませんので、お心安らかに悪を滅しなさいますよう……」


そんなこんなでとりあえず両方試してみたが、ウチにはアジサイさんという最高峰のアタッカーがいることと、ツキクサさんがエンジェル経験者という二つの理由により安定策を取ることにした。フルアタッカー作戦も楽しかったけど、ボルトレイダーとの戦いを超えた先でのワンパン二人事故死を経験したから、ちょっとね……。


定期的に飛んでくる時空操作能力への対処をしつつ合間合間に攻撃を入れるターン制バトルに近いジャスティス・ワンに比べると、アナイアレイターは多彩で強力な攻撃を持つが初見殺しはないので純粋な強敵との戦いを楽しめる。個人的にはこっちの方が好きかな。


「フフハハハハ!存外粘るではないか、JEABD。だがまだだ!このジャック・フリーダムズを倒したいと思うのならば、さらに血を(たぎ)らせろ!我が自由を正義の鎖で縛るにはまるで足りんぞ!」


アナイアレイターはこのザ・ボス戦って感じがたまらないぜ。ジャスティス・ワンの淡々と殺しにかかってくるスタイルも緊張感があってよかったけど、こっちはテンションの高さで盛り上げてくれるから好き。


「人の世を壊さんとする悪を砕くため、握り締めるはこの拳。なぜ私が魔の血を得る運命にあったのか、その答えこそが今この時!貴様を打ち倒すためならば、獣にでもなってみせよう!」


「すべての元凶とは言うまいが。それでも、お前を倒せば俺の家族の平穏も多少は保証されるだろう。命を懸けて戦う理由には十分だ」


(あまね)く照らす陽光のもとにすべての悪は浄化されましょう。悪いことをすれば罰される。そのことを粛々と受け入れるがよろしい」


さて、今回で何回目の戦いだったか。勝利したのも一回や二回じゃないけど、そのいずれも同じものは無かった。はたしてこの戦いはどんな物語を紡ぐのやら、楽しみだな。






「やはりアナイアレイター戦後はスッキリしますね」


「そりゃアタッカーはそうだろうさ。回復役のエンジェルは毎回冷やっ冷やだよ、BP管理をミスったら総崩れだからね」


「ははは、適材適所というやつですよ。私もいろいろと試したことがありましたけど、結局はビースト・アタッカーに落ち着くのです」


アナイアレイター戦を終えて小休止。幾度もの戦いでアナイアレイターそのものに慣れたということもあり、多少危ない場面もあったが勝つことができた。スコアもなかなか安定して稼げるようになってきたし、やりようによってはランキング上位入りも夢じゃないかも。


「適材適所と言えば、赤信号さんのディフェンダーも板についてきたね。サードオルキヌスは元々シューターだったのに、クリムゾルカでアタッカーで今回ディフェンダーとコロコロ変わるのにすごいよ」


「タイプは同じなので。……ツキクサさんみたいに、二タイプは使えません」


タイプが変わると操作感が違うとかいうレベルじゃないからなぁ。特に尻尾のあるビーストに慣れると他が難しい。ストーリーモードなら色々と使ってるんだけど、対人戦で使えるのはビーストとクリエイターくらいだ。


「複数のスタイルを使い分けられるだけで十分ですよ。高い身体能力以外に特殊能力がないビーストは、スタイルの違いが特に顕著に出ますからね」


同じアタッカーを使うとどうしてもアジサイさんに見劣りするから消去法に近い考えで選んだディフェンダーだけど、ビースト一位にそう言ってもらえたら光栄であります。

自分から攻撃を受けに行ったりしなくちゃいけないから最初の方は結構難しかったが、極限状態のボス戦を何度か経験したら割とすんなり慣れる。慣れなきゃ死ぬし。


「しかしアナイアレイターと戦えるのは嬉しいものです。私がデスパレードをメインにするきっかけになった相手ですからね。なんとなくJEABDで始めて、ストーリーモードでアナイアレイターに一目惚れですよ」


「GTレクスが恐竜型なのも、ドラゴン型のアナイアレイターに一番近いからだっけ?」


「私自身が恐竜好きなのもありますけどね。まあ、多少のリスペクトはしていますよ。中身は私好みにしましたから全然別物ですが」


GTレクスの設定に、転身症を発症する前にアナイアレイターを見たとかなんとか書いてたっけ。あれはアジサイさん自身の話でもあったんだな。人の数だけ物語があれば、魔人の数だけ物語があるってことね。


「さて、そろそろもう一度行きましょうか」


「オッケー。エンジェルやってるとボルトレイダーも怖いんだよねぇ。飛んでる時にスタン食らうと落ちちゃうし」


「アナイアレイターを重視しすぎると、ボルトレイダーが面倒になる。……運営もよく考えてます」


「手応えがあっていいではないですか。さあ、今度は誰がメインでいきますか?」


イベントが終わるまであと数日。悔いが無いように全力で遊び倒してやろうじゃないか。

魔人ネーム:GTレクス

所属:デスパレード

タイプ:ビースト スタイル:アタッカー

転身口上:切り裂け牙よ!響けよ咆哮!食物連鎖の頂点に立つ王、それが俺様よォ!【竜血転身】!!

名乗り口上(通常):平伏せムシケラ!俺様の名はGTレクス!この世の全てを食らう者だ!!

名乗り口上(ノってる時):俺様の名はGTレクス!!強者たるお前を喰らう、絶対王者だ!!

キメ台詞:王に必要なのは雑魚どもに有無を言わさねェ力!すなわち暴力だ!!

【背景設定】

日々喧嘩に明け暮れる一人のチンピラ。彼は腕っぷしだけを頼りに目に映る全てに挑み続けていた。当然ながらつまはじき者だが、それがどうしたというか。

街を歩けば人々が自分を避ける優越感。以前叩きのめした者は目線すら合わそうせず、少し凄んでやれば誰もが自分の言いなりになる。

何とも言えぬ充足感。この世のすべては自分のものだとすら感じていた。


そんなある日、彼の町に1人の魔人が現れる。その名は『アナイアレイター』、悪の魔人連合デスパレードの総帥。その暴威は尋常ではなく、応戦に現れたJEABDの魔人すら鎧袖一触。全てを平らげ、そして何事もなかったかのように去っていった。


圧倒的な力の一部始終を目の当たりにしたチンピラは震えた。

今まで自分が感じていた優越感など、何とちっぽけなものだったのか。悠々と町一つを破壊してのけたあの力の前に、自分とはどれほど矮小な存在か。

――欲しい。なんとしても、あの力が欲しい。

内側から溢れる衝動が身を焦がす。尽きぬ欲求が飢えをもたらす。

そんな彼の欲望を悪魔が見初めたのか、転身症が発症。古代の王者たる暴竜の力を手に入れる。

食物連鎖の頂点を自称し、あの力を手に入れるために全てを、特に強者を狙い喰らう。町に被害を出せば自然と現れるJEABDはおあつらえ向きの獲物だ。


力があれば。他者に有無を言わさぬ絶対的な暴力があれば。この世のすべては自分の物。ゆえにこの世の全てを喰らってやるのだ。

瓦礫と化した町の中心に、竜の咆哮が響き渡る。それは世界に対する宣戦布告。お前たち有象無象など自分の餌でしかないという傲慢な宣言。


この世の全てを手に入れるために、この世の全てを喰らいつくす。

魔の血に魅入られてしまったチンピラは、すでにその考えが破綻していることに気付かない。全てを喰らいつくしてしまえば、手に入れるものなど何も無いというのに。


ロールプレイポリシー:『一体以上のNPCを自分の手で殺害する』『傲慢な態度を崩さない』


この長さの背景設定を見せられた主人公はトッププレイヤーのガチ度に震えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして、キャラの設定はフレンドとかじゃなくても閲覧出来る様になってるのw ゲームの所持キャラ一覧みたいにみんなの妄想の塊がズラッと並んでるのを想像すると…いとおかし。 自分の妄想をみん…
[一言] 作り込みがガチ過ぎる(笑) 主人公は我慢強そうだからカウンター型結構合いそうですよね。
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