無限戦機迎撃戦 そのころのフレンズ
IRイベント 無限戦機迎撃戦 の5日目の青&茶と黄の様子です。
他戦線の他プレイヤーの感じている雰囲気だけでも伝わればなと思います。
「ヒーハー!!今日も今日とてここは地獄だ、なあ青いの!」
「全くその通りだね!でも僕らもなかなかイケてるんじゃないの!?」
イベント5日目。赤いのはサンダーバード、黄色いのは武御雷に行っている中、俺と青いのはクソデカ蛇さんことナーガラージャ戦線である廃市街地のど真ん中で降り注ぐ鉄風雷火を避けていた。
初心者だってことを言い訳にする気はねぇが、初日はそりゃあもう散々なもんだった。俺も青いのも5機使ってゲーム内時間で一時間も持たず、そのあまりにも情けねぇ結果に俺たちはこれじゃいかんと奮起したんだ。
自分の作った機体を十分に使いこなせていないってのがまず大問題。理由としては色々あるが、青いのはやりたいことが多すぎて本人のキャパシティオーバー、俺の場合は操縦中に集中しすぎて搭載した機能や攻撃を忘れちまう。
改善点としては青いのは機体のシェイプアップ、俺はもうとにかく練習あるのみ。幸か不幸かIR界隈でトップクラスのプレイヤーである黄色いのがフレンドにいるので先生兼練習相手には事欠くことはない。
そしてボッコボコにブチ転がされまくった上に容赦のないダメ出しをこれでもかと浴びせられながら、俺たちは頑張った。ログインするたびにほぼ毎回ボロ雑巾みたいにされてる赤いのは、もしかしてドМなんじゃねぇかと割と本気で思う。
たった4日程度と侮るなかれ、黄色いののスパルタ教育を生き延びた今、初日と比べて格段に動きは良くなっている。
「改良した【凱旋】もいい感じだ、今日で3000点稼ぐぞオラァ!」
「そのいきだ茶管!僕の【青春18号】も絶好調だよ!」
青いのが乗る逆関節脚の人型レムナント、その名前は青山春人が作った18番目の機体だから青春18号らしい。マジで言ってんのかこいつと思わないでもなかったが、まあ人のネーミングにいちゃもんつけるのも失礼なんで黙っておいた。俺ぁよく知らねぇけど、こいつそこそこ売れてるモデルなんだろ?天は二物を与えずってやつなんだろうかねぇ。
おっと危ねぇ、ミサイルが迫ってきている。だが焦らず騒がず、男はクールに回避行動だ。右手元のスイッチを直撃一歩手前で押し込めば、機体左側に仕込んでおいたジャンプ用のブースターが火を噴いてバイク型の凱旋が右方向に跳ね上がる。
クルクルっと軽く錐もみ回転しながらミサイルを紙一重で避け、華麗に着地。結構このキレイに着地するってのが難しくてな、何回もブースターの微調整をしたもんだ。
「ヒュー、カッコいいー!」
「褒めるな褒めるな、この程度じゃあ『ミサイルくらい手動迎撃してください』ってあの鬼軍曹にダメ出しされるぜ」
「マジであの子は鬼だよね……。っていうかタイムマッチなら逃げ切れる赤がおかしいんじゃないかなって思うんだけど」
「あいつはあいつで変な方向に妙な才能持ってるよなぁ。何であんなヌルヌル動けるんだ?俺らの中で曲がりなりにも黄色を倒せたのもあいつだけだしな」
初見殺しと機体デザインで笑わせてからの奇襲とか言う、まっとうとは言い難い手段だが勝ちは勝ちだ。しかも笑い攻めは二回の実績がある。でも俺的に一番怖かったのは、赤いのがあのどう見てもウニにしか見えない機体を心の底から真剣に作ったという事実だ。あれには一通り爆笑した後に冷静になると狂気を感じた。
「ま、弱いなら弱いなりに楽しめばいいのさ。俺たちゃこれでメシ食ってるわけじゃねぇからな、ゲームは楽しんだもん勝ちよ」
「それには全面的に同意するね。マナーを守って迷惑かけない範囲なら楽しみ方はプレイヤー次第。最強を目指そうがひたすらバグを探そうが人それぞれだよ」
だがそれは言い訳じゃあない。本心から俺は楽しんでいると胸を張って言うために、少なくとも自分が満足いくレベルになるまでは練習するぜ。青いのだってそうだ、こいつもなんだかんだ言ってなかなか向上心がある。面はともかく性格はわりと普通にいいやつだしな。IRガチ勢の黄と海ガチ勢の赤に挟まれてよくやってる。
「っと、ナーガの頭がこっちに向かってきてるみたいだよ。そろそろ移動する?」
ナーガラージャはとにかくデカく、そのせいか戦場もアホみたいに広い。機動力のあるレムナントじゃないと場所取りもままならねぇ。かといって飛行タイプなら万事解決かと言われたらそういう訳でもなく、筆舌に尽くし難い対空砲火を喰らって塵になるのが関の山だ。なんせミサイルも榴弾も焼夷弾も、一度上空に打ち上げてから重力落下で爆撃してきやがるからな。マシンキャノンとレーザーキャノンも併せてクソみたいな対空防御だ。
「よし、行こうぜ。ついてこれるか?」
「当然。スマートになった青春18号はスピードもあるんだ。なんだったら僕が先導しようか?」
「言うねぇ。だったら……フルスロットルでぶっちぎるぜ!」
「合点承知ぃ!」
土煙を上げてホイールを回転させ、凱旋が走る。その後に逆関節特有のジャンプ力で跳ねるように駆けてくる。市街戦ということで黄色いのに徹底的に仕込まれた壁蹴りを使えているのは青いのの努力の賜物だな。
油断してるとすぐに頭上に降り注いでくる榴弾を避けつつ俺らは急ぐ。初日にゃあよく頭をカチ割られていたもんだが、さすがにもうある程度慣れたわな。
ナーガラージャは体そのものが武装コンテナだから側面が危ないと思うやつが多いし、実際俺もそう思っていた。だが実際に一番やべぇのは正面、頭部だ。俺がイモを引くくらいの超スピードで走りながら弾丸と爆弾をばらまく暴走列車みたいなもんで、ボーっとしてたら轢き殺されるし轢かれなくても撃ち殺される。
ランキング一位を昨日見たがアレはおかしい。なんであの殺意が列車砲に乗り移ったみたいなナーガとぴったり張り付いて並走できるんだ。そんでどうやったらその距離でスピードを落とさずに全部避けれるんだ。さすがに黄色もあれは無理だろ、無理と言ってください。
「……ねえ、茶管。僕のレーダーが狂って無ければなんだけどさ」
「言うな青いの。俺はそれをバグだということにしてる」
「そうだよねぇ、いきなりナーガラージャの進行方向が変わって僕らの方にきてるなんて、何かの間違いだよねぇ」
「「あっはっはっは!!…………逃げろぉぉおおおお!!!」」
地鳴りのような悪魔の足音が聞こえてくるぅ!いやナーガに足はねぇんだけどよ!ちくしょう、俺たちがあいつにまともに攻撃できるのは何時になるんだぁ!?
「ふーん、まあこんなものかな。5日目で二次発狂ならペースもいい感じね」
急に立ち止まりエネルギーを溜めるような行動をしていたので何が来るかと思えば、超ロングエネルギーブレード。多分あれがお知らせにあった都市を蒸発させたっていう武装かな?レンジもだいたいエリアの隅まで届いてたみたいだし。でも可能性の1つとして考えていたから、そこまで驚きはしないなぁ。
問題はこれをどれくらいの頻度でやってくるかってことよね。一日に数回くらいならともかく、チャージも短かったし、もしも連発するようならちょっと大変。私は問題ないけど他のプレイヤーたちは結構やられちゃうみたいだし、全体としての総火力が落ちちゃう。
「今日で30000点いけるから倒せるのならいいんだけど……うん、大丈夫ね。どうせ他のランカー連中が何とかするでしょ」
どうも他のランカーたちも昨日今日でメイン30000点を達成したみたいだし、何とでもなるわ。そういうことを成し遂げるのがあの人たちだし。そう言えばそろそろ10位台に上がりたいな。誰にケンカ売るのが一番早いかなぁ。
あーさんは今日で15000点いけそうだって言ってたし、ブルさんとちゃーさんは特訓の成果もあって6000点超えたらしいし、順調ね。最終日には点数を考えずにみんなでどこかに出撃出来たら楽しいだろうなぁ。
うん、今日終わったら7日目に集合できませんかってみんなに相談してみよう。みんなならきっと、ノリノリで応じてくれると思う。
「そのためにはまず、今日をすっきり終わらせる。いこう、クロスゾーン!」
デンジャーゾーンをより瞬発力と近接戦に特化させた新機体。両手にブレード、両腰から出たサブブースターに組み込んだマシンガン。そして両足の外側には下向きにつけたパイルバンカー。さらに腕と足は格闘用のパーツも組み込んであるわ。
剣士を相手にするならこちらも剣で挑む、これぞロマン。そしてそれをロマンで終わらせずにやり遂げてこそのトップランカーなのよ!
目前にそびえ立つ武神の名を持つ無限戦機は異常なまでの運動性能で剣術だけでなく格闘技まで繰り出してくる。それどころかこちらのレムナントを蹴り飛ばしてぶつけてくるような、ふざけた精密動作を持つ巨大ロボ。AI操作だからってちょっと盛り過ぎじゃない?
昨日までは一刀を片手で扱いながら、もう片方の手のひらからレーザーブラスターを掃射してきたり肩からグレネードを投射してきたりと、言っては何だけどありきたりな感じ。
だけど超ロングレーザーブレードを披露してからというもの、両手に刀を持った二刀流にスイッチ。これがもうかっこよすぎて惚れ惚れしちゃうの。頭部パーツの兜が取れたら中から歌舞伎みたいな髪の毛状のケーブルがばさーっと出てきて雰囲気がガラッと変わったわ。
「今日でお別れするつもりだったから、最後にその姿を見れたのは満足ね!」
横薙ぎに払われた太刀を軽くジャンプして躱し、そのまま突撃。一瞬の加速で最高速を出せるように吟味したブースターを最大限使い、ステップを踏みながら降り注ぐ機銃を潜り抜けていく。
瞬間加速に全振りしたせいでホバリングなんかはてんでダメなクロスゾーンだけど、逆関節脚並みの跳躍力を生かして周囲の瓦礫を蹴りつけてさらに加速。壁蹴り加速は市街戦のたしなみ。ブルさんはちゃんとできてるのかな?
そして刀を振るうのが難しいほどに接近すれば、タケミーはすぐに蹴りを入れてくる。でもね、そんなのは分かってたらどうということは無いの。
「道を作ってくれてありがとう!」
斜め前方に半ば踏みつけるような形で蹴りぬかれた脚をジャンプして避け、クロスゾーンはその蹴り足を道として駆け上がる。
「自分の脚は斬れないものね。今度からは脚に電磁パルスでも纏わせながら蹴ると良いわ」
ホントにやられたらイラっとするけど、その時はその時で別機体を持ってくるだけね。
太腿辺りに来たところでジャンプ、さらに胸の鎧の突起を踏みつけて再度ジャンプ。タケミーは装甲は硬そうだし剣の間合いならやたらと鬱陶しいけど、こうして密着すると不思議なほどに妨害手段がないのよね。
「教えてあげる。蹴りっていうのはこうやるのよ!」
武御雷の顔面に向かって回し蹴りを放ち、ヒットと同時にパイルバンカー!極太の金属杭が射出された手応えを感じつつ、さらにブースターを点火して頭を跳び越すように上昇。
「ねえタケミー。特大レーザーブレードを放つと同時に出たその髪の毛、ないと困るから出したんでしょ?だったら丸刈りにしてあげる」
後頭部に回った私は、落下しながらひたすらにケーブルを切り刻む。近くによると空気が若干揺らめいて見えるから、これはレーザーブレードの使用時に使う排熱用ケーブルで間違いなさそうね。現実のロボットなら頭に放熱ケーブルつける意味は特にないかもだけど、まあゲームなんだし多少は見栄え重視でいいよね。戦う側も相手がカッコいい方がテンション上がるし。
髪の毛がある位置よりも下に落ちれば、そのまま背中、腰と休むことなく切り続け、最後にはもう一度パイルバンカーを含めた蹴りをお見舞いしてさようなら。狙撃機でちまちま削るのもいいけど、ダメージを稼ぐなら近接戦がやっぱりいいわね。
「ん、この構えは……もう撃つの?やっぱりリキャストタイム短いね」
なされるがままに斬られ続けてるなあと思っていたら、向こうはすでにレーザーブレード第二刃に向けてエネルギーチャージを始めていた。
腰を落とし、両手を交差させて刀を抜き打ちの構えにして……放つ。
特大のレーザーブレードとはいえ、その刀身が現れるのはほんの一瞬。しかし両腕を左右に開くようにして放たれた横二文字の剣閃は、その刹那の内に視界に映る全てを両断する。
「まあ、ネタが分かれば避けるのは難しくないんだけど。でも構造的に伏せることができないレムナントは厳しいかな?」
最初の一回目に近接戦をしていて偶然分かったけど、一番簡単な避け方は可能な限りタケミーに接近してヘッドスライディングのように勢いよく伏せること。白兵戦特化機のくせに安地が足元って、これ大丈夫なの?
これくらい有情な設定なら五機も出撃権があるのは今回のイベントはちょっと優しいわね。
みんな、楽しんでるかなぁ。
個人的には逆関節脚が好きです。
脚にパイルバンカーはACVの一部脚パーツについてる蹴り用のアレだと思ってください。