青春チャンネル生放送【WILD BOND編】
2020年最後の投稿です。
嘘です、一分後に本編投稿します。
デデンデンデデン、デデンデンデデン!と重厚なBGMとともに三分割された暗いスクリーンの真ん中が点灯する。
『外見に意味なき電脳世界でも、嘘はつかないこの筋肉。筋骨隆々、始まりのハゲ……アカハゲ!!』
次に右側が点灯。
『多少の出来事には動じない、常にクールな輝く頭。沈着冷静、第二のハゲ……キハゲ!!』
最後に左側だ。
『二度あることは三度あるぅ?だったらこの俺こそが真打よ!堂々登場、ラストハゲ……チャハゲ!!』
それぞれがダブル・バイ・セップス、サイドチェスト、モストマスキュラーを決めた3ハゲがデカデカとスクリーンを占領。なおこの間、それを眺めている俺たちは四人中三人が満足げな顔で残り一人は遠い目をしていた。
『青春チャンネルをご覧の皆様』
『いつもご声援ありがとうございます』
『新入りの俺を入れたこの三ハゲ』
『『『どうぞよろしくお願いします!!』』』
バァーーーーン!!とド派手な演出が加えられたそれは、動画加工の妙と言ってもいい。もとの録画でもそれなりにインパクトがあったと思うが、いやはや編集担当のスタッフさんの加工技術たるや。
「「「ふぅー……(堪能したため息)」」」
「君らさぁ、こういうのを主役乗っ取りっていうの知ってる?」
「ハゲマッチョに勝てる個性がないお前が悪い」
「ぐはぁっ!?」
銃に撃たれたように勢いよくテーブルに突っ伏したアオハルがピクピク震えている。これはやっちまったかな、つい口が勝手に。
「おおーっと、これはメインパーソナリティに痛恨の一撃です。アオハルさん戦闘不能につき、私たちが進行をすることをお許しください」
「惜しいやつを亡くしたぜ、後は俺らに任せて安らかに眠りな……」
「生放送でまで乗っ取りを画策するんじゃない!……ったくもう、WILD BONDはこれだから心配だったんだ。次いくよ、次!」
次いくっつってもお前、WILD BONDのお前はよ……。
『僕は鳥匠やりたいんだけどいい?』
『異議なし。だったら俺は戦士をやるよ』
『私は呪術師で』
『んじゃ俺ぁ斥候だな』
「この選択をした当時の僕を心から殴りたい……」
「鳥匠はいねぇと困るのに誰かがやるだろで誰もやらないやつだから、正解っちゃ正解なんだが……動画を配信する身としちゃあ、な」
「ドローンオペレーターみたいなものですからね、本人に動きはないですよ」
俺、鳥匠は自分でやったことないんだよな。だって情報を集めて他人を指示する役だもん、そんなの俺にはできねぇ。無言で鳥を飛ばして一人頷いてるだけのやつっている意味ある?
そういうこともあって試合開始後には画面が四分割され、それぞれのプレイが流れているわけだが……。
『ホンビの弓なんぞに当たるかよ、しゃらくせぇ!駆け抜けるぜ相棒、最高速だ!うははははは!ババンバァーッ!!』
『【戦いの祈り】いきますよ。……おお、皆さん強いですね。ババンバー!』
『残念だけど、詰みだ』『正々、堂々、戦わないとは……臆病者の、ババンバ族め……!』
『えーっと、鳥匠っていうのは詰まるところ航空偵察兼連絡役で、空から見つけた敵の位置を味方に教えるんだけど、自分で走らなくても鳥を経由したりクラン・シャウトででも……って、あれ?もしかして僕これ、ますます動かない感じじゃ……』
一名だけひたすら説明で間を持たせようとしてる涙ぐましい努力の人がいますね……。
「違うんだ……僕は一番得意なのが鳥匠なんだよ……だって、フルメンバー揃って初めてなんだからいいとこ見せたいじゃん……」
「(微笑みながらアオハルの肩を叩くハゲ×3)」
「みんな……!」
「「「ばぁーーーーか」」」
「クソァ!次に何かする時は絶対に僕が有利取れるゲームを選んでやるからな!僕はそーゆーところ意外と根深いからね!?」
知ってるよ衛星砲乱射魔かつ核爆弾魔。いくらでも溜め込んでこい、俺たちがいくらでも受け止めて発散させてやる。
『マンモス風情に臆するな!我ら勇気のババンバ族、ホンビの頭でっかちなど返り討ちにしてくれる!同胞たちよ声を上げろ、ババンバァ!!』
『ババンバ・イズ・ジャァスティィィス!』
『バン・バン・ババンバ!バ・バ・ババンバ!ヒィィヤッホォォォウ!!』
『ウォッホホホ!バ、バ、バ……ババンバァァアアア!!』
「いやあ、蛮族蛮族。この時の味方めちゃくちゃ強かったよなぁ」
「マンモスに怯んでるやつ一人もいなかったからな。俺と一緒に足止め役をしてた斥候も中々だったぜ、マンモスにウッキウキで跳び蹴りかましたりよ」
「しかし、まさかこの戦いでマンモスが出てくるとは思いませんでしたね」
「いっそこれが見どころのない塩試合ならよかったのに……。マンモスは出るしハゲは飛ぶしで僕以外の見どころ満載だから、もう……」
撮り終えたあともその辺どうするか結構話し合ったもんな。最終的にいくつかの試合を候補として撮って青の事務所に提出したんだけど、そしたら即決でコレになったんだと。だから俺たちは悪くないんだ、選んだのは事務所のスタッフさんたちなんだから。
『跳べ、アカハゲぇぇえええ!!』
「本物がここにいるんだからやってもらおうか。はいどうぞ、アカハゲ」
えっ、何が?なんで俺は今マイクを手渡されたんだ?しかもみんなこっち見てるし、何待ち?言ってくれないとわからねぇよ、俺はエスパーじゃないんだ!
??きーちゃんがなんか口パクしてるな。えーっと、『ば』『ば』『ん』……はいはいはいはい、そういうことね。俺みたいなのには辛いよ、そのフリ。
「あっ、えーっと、その、ば、ババンバァアアア!!」
「「「ババンバァアアア!!」」」
楽しそうだなお前ら。まさか青からこんなパスが来るとは思ってなかったぞ、今日はみんなでイジり過ぎたかも。ちょっと反省。
「それにしてもこの時はアカハゲが大活躍だったな。サルを肩に乗せてコンドルで飛ぶハゲでマッチョな蛮族の勇者……いやぁモリモリだぜ、初登場の俺が全然目立たねぇ」
「いい感じに祭り上げられてる感あるけどな」
「でも士気を上げるっていうのは重要ですよ。人間って感情や勢いで戦闘力はかなり変わりますから」
「経験者は語……ごめんって、そんなマジな目で睨まないで。ほらほら、マンモスが倒されたよ!」
スクリーンの中では三体のマンモスを打ち倒したババンバ族が武器を掲げて鬨の声を上げていた。実はまだ戦いは終わってないんだけど、みんないい笑顔してるぜ。
『ババンバ族は走れぇぇえええ!!マンモスと戦ってるうちにシンボル盗まれたぞぉぉぉおおお!!』
『『『バ、ババンバぁ!?』』』
「この後、ババンバオーブを球にした蛮族ラグビー大会が始まったんだよね」
「顔面キックどころか凶器攻撃ありのこれをラグビーなんて言ったら、ラグビー関係者に棍棒で殴られっぞ」
チャハゲの言う通り、殴る蹴るどころか弓矢に棍棒が乱れ飛び、オーブを奪い合う人間の横でダイアウルフとジャガーが牙を剥き出しにして取っ組み合いをしているような血みどろの闘いがスクリーンに映し出される。いかにラグビーが闘球と書くとは言え、ここまでの闘いを想定してはないだろう。
そして俺はというと数人のホンビ族とそのバディアニマル達に寄ってたかってボコボコにされている。その光景はさながらスズメバチを圧殺するミツバチのようだ。
「この、速攻でアカハゲさんが敵に袋叩きにされたの笑いましたよ。まあ瞬間的とはいえ雄叫び上げるだけで動きを強制停止できるなんて球技では強すぎなんで当然ですけど」
「絶対これから面白くなりそうなのにここで死ぬのかーって思ってたら、リスポーン終わってもまだやってんだもんな。でもあのラグビー大会は楽しかった」
意外とオーブが武器として優秀でなぁ、思いっきりブン投げられたのが頭に当たると即死級ダメージになるなんて知らなかったわ。おかげでオーブを持ってるやつに安易に近づいたら逆に命をとられかねないスリリングな戦いになったけど。
「そろそろ最後の質問コーナーだね。みんな、気合入れていこー!」
Q1:いつもこの4人で遊んでるんですか?
アオハル:実はみんなそれぞれ得意なゲームのジャンルが違うから、いつもってわけじゃないんだよね。
チャハゲ:人数が要るならだいたいこのメンツを呼ぶけどな。
キハゲ:みなさんもうちょっとロボゲーしましょうよ、ロボゲー。ロボットは漢のロマンでしょう?
アカハゲ:じゃあまずは皆ラオシャンに集合で。
アオ&チャ&キ:友達をエサだと思ってる目をしてる!?
Q2:ハゲが蛮族に馴染み過ぎてて……。
アカハゲ:弱肉強食って楽しいよな。
アオハル:食べる側も食べられる側も慣れてるもんね……。
チャハゲ:実際の原始人的蛮族だとハゲって難しいよな。剃るにはちゃんとした鋭い刃物が要るし。
キハゲ:ハゲマッチョと爽やかイケメンの時点で誰が割を食うかわかってたようなもんですねぇ。
Q3:この戦いで一緒に戦ったババンバの戦士だけど、なんだかんだ言いながらアオハゲさんの情報には助けられたよ。
アオハル:ありがとう、ありがとう……!そう言ってくれてとても嬉しいよ、でも僕はハゲじゃないからね……!
チャハゲ:いい加減諦めろって。
アカハゲ:ハゲはいいぞ。
キハゲ:さ、アバター作り直しにいきましょうねー。
アオハル:やめろー!たとえ電脳世界でも僕の毛根は奪わせないぞー!!
Q4:ウホ?ウッホホ?ンッバババ!
全員:ババンバァアアア!!
「えー、名残惜しいけどこの生配信もどうやら時間が来たみたいだね。振り返ってみて思うのは、神はこの世にいないってことかな。みんなはどう?何か感想やこれからの意気込みでも」
「俺ぁ動画にするかどうかは置いといて、今度は四人でBBASやりてぇなぁ」
「次回はインフィニティ・レムナントを「「「却下だ」」」じゃあなんでもいいです」
「普段とはちょっと違うけど、みんなと遊べて楽しかった。次も楽しく遊べるといいな」
締めの言葉をお願いします、とカンペが来た。いよいよおしまいだ、打ち合わせ通り最後はビシッと決めようか!
「それでは皆さん、また会う日まで!」
「心の底から感謝を込めてお送りしました」
「1イケメン3ハゲによる青春チャンネル・エクステンド、これにて終了です」
「ハゲと筋肉が恋しくなったらまた見てくれよな!」
「「「「ご視聴ありがとうございましたーー!!!」」」」
3ハゲでアオハルを担ぎ上げ、騎馬戦のようなポーズでサヨナラのご挨拶。暑苦しいにもほどがある筋肉密度の映像が映し出されるけど、みんな笑顔は爽やかだ。
これに続きがあるのかどうかはまだわからないけど、うん。
悪くない。いや。楽しくて面白い、いい経験だった。
では皆さま、良いお年を!




