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青春チャンネル生放送【B.A.B.E.L編】

青春チャンネル編の最後、焼き肉を食べる2、3日前に配信していた生放送編です。

具体的な数字は出しませんが、こういう企画が出るくらいには再生数を稼げてるみたいですよ。

「準備はいいかい?いくよ……みんな、いつも観てくれてありがとう!」

「ファンの皆様へ感謝を込めて」

「アオハルと三ハゲで送ります」

「なんとビックリ生配信だぜ!」


「「「「青春(アオハル)チャンネル・エクステンドーーー!!」」」」


フルダイブVR空間にあるミーティングルーム的な場所に花吹雪が舞い踊り、ファンファーレが鳴り響く。ちなみにこれらの演出は全部この空間に備え付けられたものだ。ミーティングルームっていうよりは宴会会場だな。


「改めまして視聴者の皆さん。毎度のご視聴ご声援、どうもありがとう!もとはといえば事務所の迷惑な思いつきから始まったこのゲーム企画も、今や青春チャンネルの目玉と言っても過言じゃない人気を博するコンテンツとなりました」


キハゲ、俺、アオハル、チャハゲの順番に長机に着席した状態で、アオハルがテレビのアナウンサーもかくやとばかりの爽やかさで挨拶を始める。

ちなみに今回は生配信ということで、カメラ操作なんかの手伝いや各種演出のために青の事務所の方が数人アシスタントに入ってくれているぞ。おかげで緊張度がうなぎ登りだぜ!うーん、辛い。


「さて、今回の生配信は僕らが上げたプレイ動画をダイジェストで振り返りながら、その時々で寄せられたコメントや質問に答えていく感じで進めていこうかなと思います。今やすっかり名前を呼ばれることなくハゲで定着しちゃった三人も、質問には答えられる範囲で答えていってね?」


「ん」

「了解です」

「ドンと任せな」


正直にいうと、知らない人が複数いる空間で生配信などという未知の状況には不安しかない。だが俺はやらねばならぬ。この生配信が終わったら、週末は青が打ち上げに焼き肉を奢ってくれると言ったがゆえに!


茶管も「連休だから小旅行を兼ねて俺も行くぜ。オフ会ってやつだな!」と合流する気満々だ。リアルの茶管を見るのは初めてだから割と楽しみなような、それもまた不安なような。


「それじゃあまずは記念すべき第一回、B.A.B.E.Lから振り返っていこうか。魔物ひしめく塔を駆け上がるアクションゲームで、この時はまだ僕とアカハゲだけだったんだよね」


「当時は正直こんなに続くと思ってなかった」


今となってはまともにアルバイトもできない俺にとって重要な資金源となっている青春チャンネルだが、最初は一回こっきりのゲスト参戦だと思っていたもんだ。何が売れるかなんて人生わからないな。


「でも第一回は撮れ高の化身みたいなところがありますよね。これから先のダイジェストで見れるんでしょうけど、アオハルさんの幸運ステータスのバグり様たるや」


「あーやめて言わないで。僕だってB.A.B.E.Lはもう恥の塊でしかないんだよ、ぶっちゃけこれが今回の配信の最大の山場だと僕は思ってるからね」


それでもこのゲーム企画がここまで来たのはひとえにB.A.B.E.Lで発揮された青の屑運によるものだから、屑運ではなく最高の幸運だったと言えなくもないんじゃないかな。


「んんっ!気を取り直してダイジェストを見ていこうか。まずはアカハゲの登場シーンだね」


俺たちの視界の先と背後にそれぞれ配置されたスクリーンに腕組みをした仁王立ちのハゲマッチョが映し出される。我ながらいい出来のアバターだ、洋画を見ながら何時間もかけて微調整しただけはある。

ひとつ問題があるとしたら、動画に流れるコメント量が多すぎてその雄姿が八割ほど見えないところだろうか。色付きコメントなんかも多くて目がチカチカする。


「おうおう、『すべての元凶』『始まりのハゲ』『HAGE・THE・FIRST』なんて好き放題書かれてんなぁ。まあ、だいたいあってっけどよ」


「ちなみに今だから聞きたいんだけどさ、仮にアカハゲがハゲマッチョじゃなくてもっと当たり障りのないアバターで来てたら君たちはどうしてたの?」


「さあ……さすがにデフォルトは無理なんで、モデルや俳優をベースに適当なイケメンでも作ってたんじゃないですかね?」


「俺もそんな感じじゃねぇかなぁ。そーゆー意味じゃあアカハゲが今のアバターで来てくれてよかったな、危うく無個性集団になるとこだったぜ」


アオハゲチャンネルなどと揶揄される程度には我ら三ハゲはこの企画の顔になりつつある。やはり時代は個性だ、無個性のイケメンよりもキラリ輝く筋肉ハゲの方が人気が出るんだよ。わかってるのか、そこのただのイケメン。



『はいはいはい、その手をどけようね。この動画のメインが誰か知ってる?ハゲマッチョはモンスターくらい素手で殴りなよ、その筋肉は飾りなの?』


『おいおいおい、お前はまさかアバターの筋肉がステータスに反映されるとか思ってる初心者か?そんなやつにこの武器は手に余る。俺に任せろよ、主役は守ってやるから』


そして第二のシーンは最初の部屋をクリアした直後、ドロップアイテムを巡って渾身のギスりあいを見せているところだった。もうちょっとマシなシーンないのかと当事者ながら思うものだけど、顧客が求めるニーズというのはいつの世も人の不幸や対立であるということか。


「直球に言わせてもらうとアホですね、二人とも」


「もうちょっと考えてから始めるもんじゃねぇのか、こういうのって」


「「申し開きもございませぇん……」」


我ら行き当たりばったりの化身、ぶっちゃけノープランでした……。でもほら、普段あんまり主張しない(と言われている)アオハルが欲望全開でアイテムを奪おうとしている姿は新鮮でいいんじゃないかな。


「えーっと、次は……皆様お待ちかね、青春チャンネルの方向性を決定づけた問題のシーンです。アオハルさん、覚悟はいいですね?」


「え、もう?もうちょっと引っ張ろうよ、ま、まだ早いよ!」


「声が震えてんぞ」


映し出されるのは二つのシーン。その片方では顔を真っ赤にしたアオハルが肉球のついた手袋を手にし、もう片方では開けた宝箱を前に呆けた表情を晒している。


『クソっ、クソっ!……これで満足かにゃーん!?』

『……被ったにゃぁぁぁぁん!?』


「(声にならない声で笑いながら机を叩く音×3)」


「放せ、放してください!おのれスタッフ、あなたたちもそっちの味方か!放せー!」


「ゲェッホ、ウェッホ!いやいや、これで笑うなっつーのは酷だろ!ホラ見ろ、コメントも()で埋まってんじゃねぇかよ」


「ふ、ふふふ、ふっふふふ、あははははは!あは、は…………」


「あ、キハゲさんが笑い過ぎで精神異常センサーに引っかかって落ちた!カメラストップ、ストーップ!(スタッフ)」


……………………

………………

…………


「えー、緊急ストップをかけてしまい大変申し訳ありませんでした。笑い袋の底がぬけちゃったと言いますか、はい」


「あれは仕方ねぇさ、気にすんな。なんもかんもアオハルの屑運が悪い」


「マジかよアオハル最低だな」


「あの、もう一回カメラ止めてもらっていいですかね?こいつらシバきたいんですけど」


すかさず『その要求には応えられません』というカンペを掲げるスタッフさんはさすがだ、モデル事務所の職員よりもテレビ番組スタッフの方があってるんじゃないかな。


「話を戻すけどよ、この動画シリーズにおけるアオハルの運の無さったらねぇよな。毎回オチ担当っていうか」


「任じられた覚えも自発的に担当した覚えもないんだけどねぇ!動画の時だけなんかおかしいんだよ、普段の僕ってここまで不運(ハードラック)(ダンス)ってないもん。……ないよね?」


「いつもは可もなく不可もなくというか、たまに大爆発することを除けば普通ですよね」


スラムドッグ・ウォークライの一件は話せないとして、セレスティアル・ラインの成金っぷりやIRで無限戦機やったときのSupernovaみたいに派手なことをすることもあるけど、確かにそんなしょっちゅうじゃない。


「まあ地味だよな。たまに存在感が無くなる」


「よし、君はいつか絶対に対戦ゲームで完膚なきまでに叩きのめすからね。いつまでも対戦なら僕より上だと思わないことだ」


「他のプレイヤーが絡まない対戦システムなら、どんなゲームでも受けてたとう」


「その時はぜひ私たちも呼んでくださいね……っと、ここでB.A.B.E.L編での質問コーナーだそうですよ?」


デデン!と効果音が鳴り、スクリーンには「コメント返し:その1」というテロップが表示された。


「えーっと、ウチのスタッフが動画コメントから気になったものを抜粋、それに答えていくってことでいいのかな?……いいみたいだね」


「B.A.B.E.Lの時のやつならほぼ俺かアオハルだな」


個人情報やプライバシーにかかわるものはノーコメントもOKとなっているので最悪沈黙を貫けるのはありがたい。なんせこっちはズブの素人だ、うっかりとんでもないことを言ってしまう可能性も無きにしもあらず。


Q1:なんでわざわざアイテムの取り合いになるバベルを選んだんだろう?

アオハル:僕ら普段めっちゃ仲いいですからね。お互い譲り合って上手いこといけるかなって。

アカハゲ:初手からギスッといてよくそんなこと言えるな……。


お、スゴい。リアルタイムで字幕がスクリーンに映されてる。それにしても字幕ですら俺たちはハゲ扱いなのか……。まあいい、それじゃあサクサク答えていきますか。


Q2:アオハルは(ネコ)でアカハゲは太刀(タチ)……続けて、どうぞ

アカハゲ:?何を続けるんだ?

アオハル:多分僕らが知らなくていい世界からの言葉だと思うよ。これを選んだスタッフは後で僕から話があります、配信終わったら名乗り出るように。


Q3:(バベルジャンプのシーンを見ながら)息ピッタリすぎない?

アオハル:アレとソレでもそれなりに意思疎通はできるかな?

アカハゲ:八割くらいは通じると思う。


Q4:なんて爽やかな笑顔なんだ……(一層ラスト『やっぱりゲームって、楽しいな』の場面)

アカハゲ:この後、二層からのデータが吹っ飛んで走り直しになったんだよな。

アオハル:ナンデダローネー、ゲンインフメイダカラワカラナイネー。

アカハゲ:スゲェ、字幕が棒読みに対応してる……。


Q5:ズバリお二人の関係は?

アカハゲ:親友。

アオハル:親友。


「とりあえずはこんなところ?それでは、次はビター・ビター・アンド・スイート編でーす!」


筆が乗ったらビター・ビター・アンド・スイートとWILD BONDのも書くかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 関係性を聞かれてノータイムで親友だと答えられる二人が好き
[良い点] バベル編を振り返れるこの話最高っ!!! [一言] >筆が乗ったらビター・ビター・アンド・スイートとWILD BONDのも書くかもしれません。 赤鯨さんの筆よ、ビックウェーブに乗っかってくれ…
[一言] アオハゲ τ アカハゲ ゎ・・・ ズッ友だょ!
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