魔王のいない世界
キンリーン王国へ行く途中のツグナ街で一夜を過ごそうと決めていたエッジ。
そこにたまたま通りかかったナジミと言う年配の男性に出会いナジミがツグナ街の人間だと分かったエッジはツグナ街まで案内される事となった。
「いやーナジミのおっさん。まさかおっさんが宿屋の店主だったとは。」
エッジはそう言うとナジミの肩をバンバンと叩いた。
昨日ツグナ街で案内してくれたナジミは何とこの街の宿屋の店主であったのだ。
「おう、まさかお前がフェイワーズ一流剣士だったとはな。それを訊いたら我が宿屋に泊まってもらうしかあるまいと思ったのだ。」
誤解のないように説明しておくがフェイワーズ一流剣士とはエッジが勝手にそう言っているだけであって実際とは大きな差があると言う事だけここに弁明しておく。
「ところでエッジよ。もう行ってしまうのかい?」
「あー実のところを言うとせっかくよくしてくれたあんたに何の礼もしないで旅立つのは正直気が引けるのだが、俺にはなんとしても達成しなければならない目標があるからな。」
「そうか・・・まあフェイワーズ一流剣士と名乗るお前ならどんな困難も乗り越えられるらろうよ。」
「ありがとなナジミのおっさん。今度この街に来る時は街人総出で歓迎してくれ。
とりあえず今は俺とナジミのおっさんとの間だけの秘密にしておいてくれると助かる。」
「分かった。それじゃ早くキンリーン王国に到着して国王に会えると良いな。」
「おうよそれじゃまたな。」
こうしてエッジはツグナ街を旅立つのであった。
「ふうーやっと着いたぜ。キンリーン王国。」
ツグナ街をでて丸半日。エッジはキンリーン王国へと辿りついたのであった。
「よし、なるべく早くまずは国王に会うべきだな。」
エッジはそう言うと全速力で城下町をかけめぐり城の門の所へと急いだ。
「おい、そこの青年止まれ。」
当たり前だと言えば当たり前だがエッジは門の所で兵士に呼び止められた。
「貴様キンリーン城に何の用だ?」
二人いた内の兵士の一人が険しい表情でエッジの方を睨みつけた。
「よくぞ。訊いてくれました。俺の名はエッジ・ラングスタン、魔王を倒して英雄になる。フェイワーズ一流剣士である。」
エッジはそう言うとどんな問題と言ったポーズを決めるのであった。
「はぁ?何をわけのわからない事を。お前はどこの出身の者だ。」
もう一人の兵士が呆れたような顔でエッジの方を見た。
「おい、何だお前その人を馬鹿にしたような態度は。えーい兵士風情では話にならん。今すぐ国王に合わせろ。」
「なんじゃ騒々しい。」
城門での騒ぎを聞きつけたのか何者かが城内から出てきた。
「こ・国王様!!」
兵士二人が膝をつき頭を下げた。
「おうあんたが国王かまさか国王自ら出向いて下さるとはこちらも手間が省けた。あんたに宣言したい事が」
「話は全て訊いておったぞ。」
「えっそれじゃ話が早い俺は魔王を倒して・・・」
「この世界にはすでに魔王は存在しない。」
「ふぇっ!!」
国王の言葉に頭の中が真っ白になるエッジなのであった。