プロローグ 〜孤独な世界〜
私は1人だ。孤独だ。誰も私のことを見てくれない。誰も私のことを理解しようとしてくれない。誰も私のことを……。
私は霧崎 七香。中学2年生。運動が得意。でもクラスでは浮いてる存在。少ない友達も最近は話をしてくれない。最近は気味悪がられるからあまりクラスの中心には出ていかない。初めはこれくらい普通だと思ってた。けれど、違うみたい。それに気づいたのは、数ヶ月前だった。気づいてからは絶対にみんなの前で本気で運動をしないことと目立つようなことをしないこと、そしてみんなの輪の中に入らないことを必死で守っている。輪に入ったら、休憩時間とかに体育館でみんなとスポーツをするんでしょ?そんなことしたら、バレる。だから、みんなといたいけどみんなと話したいけど、それでも……。
「私は話したらいけない。我慢したら、いつかは報われる。だから我慢。我慢するのよ。」
いつかみんなのように気軽に話せるようになるまでの我慢。
小学6年生の春。私たちにとっての最後の運動会。私は勝ちたくて、毎日の練習を頑張った。例えば毎日走り込みをして、腹筋も背筋も忘れずに頑張った。その頑張りのおかげなのかなんなのかは分からないがありえない記録が出た。なんと100mを小学生にして11.0秒で走ったのだ。この頃はまだ、「速いねー」「すごいねー」だけで終わっていた。しかしもっと恐ろしい事も何度か起こった。例えば球技大会の時、バレーをしたのだが、ばれのネットを優に飛び越えることも出来るほどの高さまでジャンプしてものすごく強いアタックを打ったり、身長159cmしかないのにジャンプ力だけでダンクシュートを決めたり……。小学生のはできないことがたくさんできた。しかも運動だけ。周りのみんなの目は当然痛い。私にしかできないこと。それは初めは尊敬の眼差しで見られていてもだんだん嫉妬と、自分も出来るようになりたいという欲望から私はいじめを受けることになった。
「七香はいいよね。なんだってできるんだから。私達とは違うのよね。」
いじめに耐えられなくなった私は中学に進学する時に、必死で勉強して、私立の学園に行った。同じ小学校だった人は誰もいなかった。これでようやく安息が訪れる。そう思ったのもつかの間でやはり自分の運動神経をコントロールできず、体育をやってみれば、みんなの基準が自分に合わなさすぎてみんなのできないが私には簡単。これができないなんておかしいの類に入ってしまうほどの運動神経だった。私はあまりみんなにそのようなことは言わなかったのだが、みんなからは上から目線だとかなんとかと言われて孤立してしまった。
そして今は1人でいる。教室の端っこで。誰にも気づかれないように静かに。でももう慣れた。これくらい平気だよ。
私は1人だ。孤独だ。誰も私のことを見てくれない。誰も私のことを理解しようとしてくれない。誰も私のことを……