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名族朝倉家に栄光あれ  作者: マーマリアン
良き結末とその覚悟
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第40話 不安



1545年 10月



「では森を伝えたのでそのまま尾張のことを」


一頻(ひとしき)り笑いあった俺達はお互い目を見て、次に進める。


「先ずは佐々成政。齢10から20の者。この者も尾張に居りませんでしたが、名の近いものとして成宗という壮年のものが居りました。この者に目立つ所は無い様子ですが子の政次、勝重らは昨年に行われた織田と今川との戦で功を挙げ、小豆坂の七本槍と名を馳せる程の勇の者とか」


正直、佐々成政も何をしたか詳しくは知らない。

信長の直臣であり、その死後の後継者争いで柴田勝家に着いて秀吉に負けた。そんな感じだ。

強いて言えば何処かの険しい山脈越えを行ったという武勇は聞き覚えがあるくらいかな?

また家老では無いが重臣ではあった。あの実力主義の家中で長年全線にいたんだ。優秀だったはず。


今鷹瑳が言った戦は小豆坂の戦いか。あの黒衣の宰相と呼ばれた雪斎を総大将とした戦だ。



「他にも成宗には子が三人いて、その内の1人が織田信秀が嫡、吉法師と共に野を駆け回っているとか」



ああ、多分それが成政だ。もう信長に付いていたのか。

「また、同様に他にも六郎様が探して居りました前田利家ないし犬千代の名の者も吉法師と行動しておりました」



ちくしょう。利家も既に信長に付いているとは。

信長は既に才能を見抜いているのか?10を越えたばかりなのに自身の配下を集めてる。行動が早いな。

虎の子だけに坦々と天下を見据えているのだろうか?


しかしなぁ、信長が動き初めているのを知ってしまうと、一乗谷が炎上する恐怖が鮮明に生まれて来るな...



それにしても信長の家は尾張守護代の臣とは言え津島があるから国力は飛んでもなく大きいハズだ。朝倉程ではないが元々の普代もいるだろう。普代の嫡子を取り込めばいいと思うが。織田の嫡男でもあるのだから簡単だろうに。何か理由が...才能を重視しているのだろうか?



それとも幼い頃から行動を共にすることで忠誠心を埋め込もうとしてるのか?

この時代の武家ならどこもやってる手法であるが、大抵は大人の都合で子供が選ばれる。兄上や俺も重臣の子を、ひいては父上によって孫三郎達を付けられた。友達は用意されていたのだ。



それを元服前の子供が自分で考え抜き、自ら選抜しているのなら凄いな。将来を見据えて友情とかも計算に入れてるんだ。



もしかしたら後世に伝わる彼の衆道への傾倒は、男色や愛を抜きにした忠誠心を上げる為だけの行いだったりして。

勿論、戦の昂りを戦場で発散したり、ついムラムラして小姓を相手に事に及んだりもあったかもしれない。......っ!


辞めよう。信長について分析するのはいいけど衆道について深く考えを巡らせてる場合じゃない。今は鷹瑳とドラフト会議中なのに。我がアサクラーズの指名選手について集中するべきだ。



「では彼等は無理だろうな。このままいけば将来は当主候補の近い地位に就くのだ。家で立場の無い三男四男なら尚更だろうし。彼等は辞めることにする」

そう俺の意思を鷹瑳に伝える。



そこでふと、会議の区切りがついた事で空気が弛む。そのせいか先程まで考えていた事で不安がよぎると言うか感じるというか...


...少しだけ、やっばり少しだけ、信長について考えを纏めたくなった。



「鷹瑳、少し考える。次の報告を待ってくれ」

鷹瑳は分かりました。と言い手元にある資料に筆を取って書き加える。今話した事を纏めてるのだろう。




成政と利家に近付くのは無理だな。


俺は基本的にスカウトが成功する可能性が高い者としか接触しないようにしている。

継ぐ家があるものや出世コースに乗っているものは候補から外す。土地に縛られてる者もだ。

これから交渉予定の森は例外だ。名目は一族の武勇を聞き付けて家族ごと招き入れたいとしているのだから。これは実際に名声が有る者じゃないと使えない言い訳だが。



仮に幼い彼等に接触してスカウトを持ち掛けても、自分で判断出来ないだろうし、親や親しい者に相談するだろう。そんな彼等の中で、親族を除くと一番親しい者は信長だ。


戦国の世においてミソッカス扱いの三男四男である彼等は親族よりも信長に重きを置いているだろう。自分達を認めて見出だし、ゆくゆくは家族親族を抜いて己の実力で出世させてくれるだろう人は神に近い存在だ。そんな人には直ぐ話すだろうさ。



そうやって相談された信長は怪しむだろうな。遠くの朝倉が何故自分の集めた名も無き、されど才ある小さな者達を連れて行こうとするのかを。


「自分が会って、接して認めた才能ある者を遠く離れた朝倉が見付ける」



考えるのはそんな所か。不気味だろうな。そう言う所は徹底的に調べられるだろう。好奇心も強そうだし、戦国大名なら誰だってそうだ。

結果は、怪しそうなこともしてるし、金周りが良くて富に成りそうな者も沢山ある。


かなり不利益だ。


それに信長が越前に詳しくなるのも不味い。

かなり歴史が変わってしまったが、信長が天下を目指す限りは史実と似た流れが起こるかもしれない。

金ヶ崎の撤退戦に似た状況になっても、秀吉が居なくても損害少なくスルリと逃げるかもしれん。

折角、秀吉こと藤吉郎を手に入れたのにパァになってはなぁ。




そうなると伊賀甲賀に接触したことは不味かったかなぁ。

あの時は朝倉の名前で接触したから俺の名は出てないが、主である六角には朝倉から接触があったと届けた者もいるだろう。

移籍話が無くなったのだから主家への点数稼ぎに利用されたのではないだろうか?

そうでなくても六角は既に怪しんでいるハズだ。その時期と朝倉の金回りも良くなった時期は被るし。何かしら関連があると疑っている者もいるかもしれん。




うーん。考えが甘過ぎたな。色んな処に不用意に接触し過ぎた。

朝倉の力が大きく成りつつある今、周囲の国はさらに警戒するはずだ。


俺の名も朝倉と土岐頼純が和睦する時に、道三の娘と婚約する時に多少知れ渡ることになったろうし。俺が色々金策に関わっていると道三が知れば吉姫の回りにもっと人を送るハズだ。

折角追い出したのにまた送るだろう。前の陰の掃討戦なんて少なくない金が掛かった。大量の人員を送られると本当に厄介だ。




最悪は、面倒だが...六角家や道三が俺に注目してもいい。

六角の当主定頼も道三も年が年だ。俺より先に死ぬだろう。だが信長は俺と年が近い。それに天下を狙ってるんだ。越前を巡って何度も凌ぎを削るのなんて後免だ。

これから争うことになるであろう今川や弟の信行に勝って貰うという手もあるが、今川が上洛に成功した時に俺達朝倉に何かを要求するか分からん。勿論これは他の勢力にも当てはまる。

今の越前は裕福だ。物に溢れて飢餓が少ない。農地も増えている。そんな所が京に近い。おまけに今川が上洛する頃には鉄砲の生産町も完成しているハズだ。誰にも垂涎たる地になるし、敵対すれば自勢力に牙を剥ける眼を張る脅威に見えるだろう。


目を大きく見張らせている者と、口から涎を垂らしている者から注目されるのは個人単位でも国単位でも怖いもの。




とにかく、そんな所を放っておくか?自国で飢えてる者は沢山いるんだ。チャンスがあるなら戦国の大名らしく奪えるモノは美味しく頂くだろう。

石鹸の製造法を寄越せと将軍越しに圧力をかけてくるだろう。今後は石転は自分達で作ると言って、石の材料である象牙の仕入れ先の明との貿易を幕府で行うから敦賀を寄越せと言ってくるかもしれない。



俺達が頼純にやったように。


そして最後は一乗谷も寄越せと言ってくるだろう。

被害妄想が過ぎるかもしれんが、俺は一度戦国大名の力を使ってしまった。今の俺にとって因果応報と言う言葉が一番怖い。




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