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名族朝倉家に栄光あれ  作者: マーマリアン
良き結末とその覚悟
37/54

第37話 その男高慢につき


1545年 10月



鷹瑳の待つ部屋に入る。鷹瑳の傍らにある書類の(たば)。今回の資料の数は前回と比べて多いな。調べる人数が多くなったからかな?


「お待ちして居りました。六郎様も楽しみにしておられるご様子なので早速報告しましょう」


ニヤニヤすんなよ。前は同じ様な状況で泣いたのを忘れたのか~...ってこれは言ってはいけないな。やめよう。


「うむ。では頼む!」

己の短慮に少し自己嫌悪になったが、報告を速く聞きたいのは事実だ。声も弾む。


「藤堂虎高なる者。以前は甲斐の前守護である武田信虎に仕え、その諱を与えられる程の者。そして現在は近江の国在住。六郎様が多くの手掛かりを御教授なさったので彼の者の情報は直ぐ手に入りました。姓が変わっていたので工藤兄弟も始めは誰か分かっていなかったようですが、諱を与えられた余所の国から来たと言ったら思い出してくれたようです」


やはり有名だったか。虎高。スラスラと紙を見ながら話す鷹瑳。そして続ける。

「孝景様が仰っていた名の上がっていない理由。それと工藤兄弟に何故諍いを起こして出奔したのか聞いた所、彼が余りにも鼻持ちならない者であるからとのこと。念のため甲斐の国で確認した処、天狗虎と称されたそうです」

鼻持ちならないならウチでは危ないな。プライドの高い朝倉家にいたらキレた奴に殺されるぞ。奴じゃない。奴等か。

それと信虎に気に入られていた男が工藤兄弟は嫌いなのだろうな。父を信虎に殺されて流浪する日々を送る事になったのだし。


ちなみに、工藤兄弟には悪いが私怨から虎高の評価を下げると思っていたので、甲斐での情報収集には力を入れる様にと念を押したのだが.....工藤兄弟の虎高レビューと忍の報告が相違無い事にビックリだよ。

どんだけ色んな奴に嫌われてるんだ。



「また名が上がらない理由として、元は三井姓で藤堂の名は彼が婿として入った家の姓なのですが」

元々は近江の国の出身で、そこから信虎の元で名を挙げた。そのかいあって地元で婿養子として迎えられることになったのか。

勇名を馳せてからの地元からのオファーなんて益々鼻持ちならなくなりそうだ。



「婿養子になったのはよかったのですが、彼が入った藤堂家はまともな武具も揃える事が出来ない程の極貧らしく、当主も領民に混じり開墾しているようです。これを改善すべく有能な婿を連れて来たのですが高慢な者に誰も助けを出さないのは世の常、朽ちていくのは当然かと」

何か最後は僧侶らしく締めたな。



「では藤堂家に援助する。条件は虎高が家族を連れて朝倉家に出仕。その身を犠牲にして藤堂家を救えるのだ。喜んで来るのではないか?」


高慢な者はなら飛んでくるだろうな。燻ってる処に他家からの仕官要請だ。更に名家と来たら絶対食い付くだろう。藤堂家も役に立つと思っていたウザい婿が追い出せる。さらに藤堂家は婿の虎高の替わりに血縁の者が家を継げて援助を貰える。それに俺達は将来の高虎もgetできる。まさしくWinーWinーWinの関係じゃないか!



「...本当に御雇いになるので?」

藤吉郎の時と同じくらい嫌なのだろう。

鷹瑳も嫌いらしい。他国の者で傲慢、諍いも起こす。有能な所があっても害になると思ってるのかもしれん。



けれど俺は知ってるんだぜ?

前にお前が孫三郎と藤吉郎に故事を教えていたことを。侍に成ろうと頑張っている姿を認めたのかな?


実際藤吉郎は朝早くから夜遅くまで頑張ってるしな。最近では弟の小竹にも自分が学んだ事を教えているらしい。

母と弟、姉それに生まれたばかりの妹を楽にしてくれた朝倉家に恩を返したいと言っていたしな。それに「忙しい六郎様のお力になりたいのです!」と良い笑顔で言ってくれた時はホロリと来たよ。


俺も衆道を嗜もうかなぁ考えた一件でもある。

いくら戦国時代の考えに染まって来たとは言え、前世の記憶は武器であり、枷でもある。平成の価値観から絶対にやらないでおこうと決めていたのだが。...

断じて藤吉郎の笑顔が可愛かったとかではなく、忠誠心の為に。誰かに言う訳でもないがもう一度言う。忠誠心の為に。


.....。



今はあんまり考えるのはよそう。鷹瑳も俺が悩んでいるのかと思っているのか神妙なままだ。

ごめんね。変なこと考えてたんだ。

「...雇おう」

俺は内心では焦りながらも、取り繕った神妙な顔を保ちながら答える。

「高慢な性格はもう直らんだろう。だが使える者で有るのならば得難い。それと槍の名手である景紀の所に送れば高慢な鼻を削ぎとって貰えるのではないか?」

とっさに思い付いつきで言ったが、かなり良い案だと思う。あの景紀ならどんな者でも受け入れてくれるだろう。

朝倉家のセーフティーネットでもあるのだ。


「父上の所ですか?..イヤ..嫌しかし...フム...」

俺の提案を考える鷹瑳。


「...確かに父上の所が宜しいでしょう。色々と。では援助する値段を決めようとしますか」

鷹瑳も自分の父親の事を俺と似た様に考えているのかもしれない。

そう言って集めた情報を参考に藤堂家の領地の情報から援助金を試算していく。


30分程協議して答えが出たので、次なるスカウトの話に戻った。






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