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名族朝倉家に栄光あれ  作者: マーマリアン
良き結末とその覚悟
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第27話 忍里

1544年 8月




稲刈りが始まる季節だ。

とりあえず種籾(たねもみ)の選定は行ってくれるらしい。只、これも一部地域からの開始だ。「沢山実が詰まっているから沈む」何て理論は簡単に理解出来るが、それを急にやれと言われても現場の農民は困るだけだ。

根気良く説明しないとダメだろう。こんな時に秀吉みたいな者が居てくれたらと思う。農民の気持ちも、武士の言いたいことも理解出来る人間。

上と下の板挟みになっても成功するイメージがあるしね。



例に倣っていつものように、幾つかの村で試験するが成功して欲しい。俺も前世でやったこと無いし、テレビからの情報だから不安でもある。

まぁ越前には海があるから選定に使う塩に関しては問題無いのが有難い。この時代の塩は値が張るからね。



美濃には朝倉の草と呼ばれる諜報機関が密かに侵入した。

彼等は混乱中の美濃を煽り、さらに武将の内応を行う諜報の最前線だ。流石に武将には武将が会いに行く。面と向かって話さなければ信用もないしな。草が行うのは対面迄のお膳立てみたいな処までだ。


というかちゃんと諜報機関はあるじゃないか...

俺がそれとなく服部について進めたら、それとなく諜報機関の存在を教えてくれたよ...



兼定の刀匠集団への頼純直筆の書状をもって向かう者は流石に其なりの位でなければならない。

守護直々の書状なので、今回は山崎家の元当主の山崎長吉が向かったそうだ。

彼は早くに隠居し、息子の吉家に家督を譲った。後継の吉家が文武に秀でると早々に気付いた彼は、若くして家督を譲り、後は山崎家の裏方に徹している。隠居したと言ってもまだ40代の彼は父上の重臣でもあり、一乗谷館にも出仕している。

今回の役目を任せられる人物だろう。




それと俺が提案した武将で引き抜きに許可が貰えたのは藤堂虎高だけだった。その虎高も工藤兄弟の話と現在の身辺調査を終えてからだ。

父上としては優秀なのに甲斐から出奔したことと、戻ってきたのに貧困な生活を送っている彼に何か欠点があると思ったらしい。

確かにそうだな。頭になかった。俺は只、虎高は運に恵まれて無いだけと思っていたがそれは歴史の知識だけだ。実際には違うのかもしれん。

調査は必要だな。




残りの織田家の家格とポジションが分からない奴等と、美濃のベーズ、朝倉の宿敵の榊原家を含む三河周辺を調べてくれることになった。

まだ産まれてない人物の、俺も詳しく知らない親世代を雇うのは流石に気が引けたので父上に申告する前にリストから外した。



それと強く望んだ服部に関しては保留になってる。いくら伊賀から離れたとはいえ関係者又は子孫が伊賀に残っていることで、その伝から朝倉の情報が漏れるかもしれない。最後に「縁は知らない処からやってくる」

そう言われた。


また俺専属の忍者に関しても時期尚早と言われた。

曰く「脇がまだまだ甘い」そうだ。それでも、もう少し成長したら草から何人か派遣するから先ずは忍について学べとのこと。



そうなるのかぁ。

だが自前の忍がいるならそれに越したことはないな。

他国の忍とは信用度が段違いだし。



そんな中で服部が召集に応じてくれたらどうしようか?

忍働きは朝倉の草が専任するだろうし。

半忍半武士?にするか?裏工作専用の部隊として。卑怯者の謗りを受けるかもしれんが、宗滴殿なんて大好きそうだな。考えておこう。




とりあえずは調査してくれるらしい。だが望みは薄いな。


はぁーあ、せめて伊賀と甲賀が支配下にあったらこんなに悩まずに済むのに。六角が羨ましい。

山が多く飢えた土地と言うが情報機関が手に入るのだ。彼等には定期的に別の領地から食糧を供給すること条件にすれば裏切ることもないだろう。供給者が居なくなればまた飢えた状態に戻るのだから。そして後は山々の木々の開拓なり移民なりで丸裸にして力を落とせばいい。



実際にやったら机上の空論になるだろう。

地元の彼等も反発することは必須だろうし。他人事だから簡単に言ったけど、何だかんだ六角は伊賀甲賀をちゃんと支配下に置いているんだ。六角なりの武士と忍びの付き合い方があるんだろう。



まぁ伊賀甲賀の話は置いといて

父上達は忍の有用性は理解している。

だけどもっと人員なり資金なり投入するべきだと俺は思う。イヤ、浪人探しの際に力を見せて貰ったから実力があるのは知ってるよ?今も美濃の国人衆と渡りをつけているし、藤吉郎をアレだけの情報だけで連れてきたのは忍び界でもファインプレーだと思う。


ただ史実で朝倉の忍びというモノを聞いたことがない。

北条に風魔、上杉に軒猿、毛利に世鬼、尼子に鉢屋、武田に歩き巫女....

名だたる大名家の栄光には有名な忍びが居たのは事実。

名が世に響いた忍者は雑魚みたいな風潮もあるだろうが、活躍を隠しても隠しきれない位に彼等が活躍したんだろう。



だからさ、朝倉に『○○』を俺達でも作るべきだ。


大名家専属の忍びという、格好良さに惹かれてるのも否定はしない。だけど情報戦を制する事は重要だ。現代でも国家間は勿論、民間でも法に引っ掛からない程度にやりあってる。



朝倉家の領地に忍の里を作れないかな?越前にではなく朝倉家に。

今やってる事の防諜も強化されるし、彼等の家族が領内に居ることになるから信用もある程度おけるだろう。

忠誠心は幼い子供の時から育てればいい。加賀からの孤児も沢山いるんだ。腹一杯食わせよう。そして、朝倉に誓わせよう。時間はかかるが将来性はあるはずだ!!




なんて熱く語った忍里創設計画の創案をまとめて提出した処、思いの外に通った。随分と拍子抜けしたよ。


理由を聞いたら美濃の国人衆の調略に当たっている孝綱から提案されていたらしい。それを聞いた宗滴殿も賛成した事で父上も考えた末に了承したんだと。


創設に金はかかるが今の朝倉には可能であることも了承理由の一つだ。去年や一昨年なら反対してたってさ。

それと諜報組織を纏める役職は世襲しないことを宣誓文認めることになった。1人の者が諜報力を持つのは危険と言うことで、宗家の人間が共同で管理するという旨だ。

流石に分国法には書けない。折角作った忍者集団も全然忍んで無いことになる。




後、孝綱から聞いた話によると真田は元々の源流である海野氏が諜報能力を持っていたが彼等は信濃に拘って残ったり武田に対抗する長野家を頼りながら細々と暮らしているらしい。俺に誘われた時に、朝倉に来たのが真田で残ったのが海野だそうだ。孝綱の弟の1人も信濃に残ったらしい。

それと朝倉に誘った俺がどんな奴か調べようとして間者を送り込もうとしたが、あまり結果は得られなかったという。

正直名門の名にかまけてると思ってたけど結構防諜に関してはしっかりしてるんだと思った。

そうじゃないと戦国の名門は維持できないか。




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