第11話 朝倉の威光が通じないようだ
1542年10月
父上に陶器と花火の職人誘致の話はどちらもOKを貰えた。
というか、朝鮮半島の陶器職人は父上も以前からラブコールを送っていたらしいが大金を積まなきゃ来てくれないっぽい。
まぁそうだわな。
この時代の船旅は気軽じゃないし、安全でもない。もしかしたら故郷に帰れないかもしれないし、見下してる島国へ優れていると思ってる大陸から出ないといけないのだから。
しかも越前という一国ではあちらからすると小国扱いだ。来る気も無いんだろう。
来る気がないなら仕方がない。それがダメなら火薬職人には来て貰えるように祈っておこう。
後、ビックリしたのが俺のこの誘致話を後押ししてくれたのが鷹瑳だった。コイツは基本的に俺の突拍子のない案を全面的に応援してくれる。
どんなものか分からないのに俺に賭けるなんて博打が好きなのだろうか?やっぱ生臭なのかもしれん。
朝鮮の職人が来てくれなさそうなので代案と言うことで窯設備への投資と日本各地の窯工房職人を誘致しようと言うことになった。
だが簡単にはいかないぞと釘を刺された。
古来から焼き物に適した土が採れる場所に工房は造られてきた。土地が職人を離さないのである。職人も満足して工房にいるのだろう。そこから引き剥がすのは難題である。
さらにお隣の近江の国にはあの狸の焼き物で有名な新楽焼がある。
現代でも有名な新楽焼は戦国時代でも有名だった。というより焼き物の界のエース。土も良く京に近いので職人にとっては最先端らしい。
それに対して我らの越前焼きは雑器が中心。雑器と言っても雑な出来という意味ではなく、大量生産された容器。
簡単に言えば趣向を凝らしてないということだ。
それが父上には嫌なのだろう。文化者を名乗り、領地が文化興隆の真っ最中だ。だから父上は朝鮮半島にラブコールを送り続けた。誰だって優れたことで有名になりたいのだから。
俺としてもこれには注力して貰いたい。いつか来る南蛮人との交易するときに輸出する物は多いほうがいいだろうからね。これは気長に待つことになった。
後はあれだ、武将の青田買い。
有名な武将の引き抜きは朝倉家のメリット・デメリットどちらも大きいだろう。そしてその内容が何かは分からない。だけどやろう。歴史を改変すれば未来を知っているというアドバンテージが無くなるが、信長が越前に来る未来もなくなるかもしれない。
その代わりに他の勢力が勢い増して襲来するかもしれない。
不安も大きいし、今後は読めない未来を永遠と考えなければならない。だけどこのままじゃ一乗谷炎上コースだ。
やるしかない。




