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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
始まりの物語
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空へ飛び立つ翼

 そろそろ夕方かな。日が茜色に変わり出した頃、遠目に村らしきものが見えるようになっていた。


 この変身のおかげで、重たい牙や爪を担いだままでも、長時間走り続けることが出来た。

 草原を突き抜けていくと、底が見えない程の地面の亀裂があった。ここが、この草原の境目なのだろうか、と。その先にはやや舗装された土の道があり、木々の合間を縫って森の奥へと続いていた。

 だが、亀裂はかなりの広さがあり、どうやって渡ればよいのやら……と、暫く頭を悩ませていた。



 この状態の身体能力に、賭けてみよう。

 もし、この牙と爪の束を投げて、余裕でこの亀裂を飛ばすことが可能なら、私も飛んでみよう。そう思い立ったのだ。我ながら馬鹿だと思う。手で投げるのと自分で飛び越えるのはまったく違うというのに。


 しかし、この時の私はそんな事に疑問も浮かばず、全力で爪と牙の束を投げた。

 それは、高く高く天を穿つように飛び、亀裂等ゆうに飛び越え、更に飛び、この場からかなり離れている森の入口付近まで飛んでいってしまったのだ。

 どれだけ飛ぶの。これには、投げた本人である私も呆気に取られていた。


 そして、これなら簡単に飛び越える事も出来るんじゃないかと、謎の自信に満ち溢れ、奈落への入口を大きく助走を付けて飛び上がった。

 凄い。体が高く宙に舞い、信じられないほどの飛距離を誇っていた。


 だが、それでも。



 この亀裂を飛び越えるには距離が足りなかった。


 みるみるうちに、下へ下へと落ちてゆく。

 次第に高度は無くなり、ついには地面よりも下へと私の体は落下していってしまった。



 「え、ちょっと、嘘……!?」


 必死に手をばたつかせるが、停滞もしてくれない。当然だ。

 私の体は暗い奈落の底へと吸い込まれるように落ちていく。亀裂から漏れる陽の光が、遠く、遠く離れていく。


 いくらこの体が頑丈でも、この高さから落下してしまえば……

 最悪の想像が頭をよぎる。


 「うぅ、ロボットなら、空くらい飛んでみなさいよ!!!」


 吐き捨てるように叫んだ。



 『メインブースター、ロック解除しました』


 剣の時と同じ、声が聞こえた。


 背中が開き、内側からジェット機のエンジンのようなものが迫り出す。そして、ロケットエンジンを中心に折り畳まれた翼が開き、ふくらはぎが開いて、変形は完了した。

 見えないが、このふくらはぎにも何かあるのだろう。



 「こうなったらやけくそだぁっ! 点火!!」


 私の言葉に反応するように、背中に大きなエネルギーが集まり、それが爆発する。

 爆発したエネルギーは一定の方向へと向けられ、放出されたエネルギーが私の体を上空へと撃ちあげる。


 真っ直ぐに、亀裂の先にある光へと。



 「足の方も、点火!」


 脚部にも、エネルギーが溜まってきていたので、合図を送る。

 背中ほど大きなエネルギーではないが、同じように爆発したエネルギーが更に私の体を強く上空へと押し運んでいく。


 さながら、逆バンジーのように。



 そうして、私の体を無事、亀裂の外へと飛び上がらせる事に成功した。

 例の如く、着地は胴体で。






 ……。






 あの時、メインブースターのロック解除が無かったら私の冒険も終わってたんだろうな。と、しみじみ思う。




 それにしても、ロック解除に必要な条件とはいったいなんなのだろうか。少なくとも、必要な時に解除されるのは間違いない、と思う。まだ2つしか解除してないから分からないけれど。


 そもそも、いくつロックがあるのかも分からないけれど。私の体なのに。



 化け猿と戦う時には、戦うための剣が。

 亀裂に落ちた時には、飛び上がるためのブースターが。



 これから先も、必要に応じて解除されていくのだろうか。楽しみに思う反面、危機的状況にならないと解除されないのでは……と思わなくもない。

 好き好んでピンチにはなりたくないかな。




 次第に村は近付き、この調子なら夜になる前には到達できそうである。

 そして、何か食べたい。流石におなかすいた。


スーパーロボットへの道はまだまだ遠い。

目指しているわけではないけれど。

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