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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
紡ぎ合う物語
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ロック解除

 体に異常は感じられない。メインブースターを収納し、即座に立ち上がる。


「今のを受けて、まだ立ち上がれるか……」


 腕を翳していた兵士が、感心したように言う。やはり、先程の一撃は並の攻撃力ではなかった。少なくとも、私が今まで受けた攻撃の中ではトップクラスの破壊力だった。


 直撃した箇所を撫でるように触ると、違和感に気付く。


「う、嘘……」


 胸部が、凹んでいた。これ以上私から胸を奪うつもりなのか。


 焦りは更に加速する。特に防御力に優れた胴体の前面を凹ませる程の威力。構造上、関節や頭部などにこの攻撃が直撃したとしたら、これだけでは済まないだろう。



「なーるほど。この俺の技を受けてそれだけ元気って事は、お前が噂の白銀の勇者ってやつか」


「白銀の勇者、だと? こんなガキみてぇななまっちょろい奴がかよォ!」


「しかし、解せないな。こんな華奢で小柄な奴がそれだけの力を秘めてるとは思えない」


「構わん。どの道、この場で始末する。後の憂いとなる可能性がある以上、いかしておくわけにはいかん」


「確かにな! しかしツイてるぜ! 白銀の勇者! こっちから探す手間が省けたんだからよォ!!」



 勝手な事を言ってくれる。どうやら、相手の中での実力者はあの三人のようだ。

 私に攻撃を仕掛けた奴。その隣で悠然と佇んでいる騎士。そして、大柄な体躯に自分の身の丈程もある大剣を交差させて背中に持っている奴。


 そして、私の周囲を取り囲み、剣を構える兵士達。前方の三人を含め、全員が頭部まで覆い尽くすような漆黒の鎧を身に纏っている。よく見ると、それぞれが同じ鎧のようだが、一人一人どこかしら一部の形状が変わっているようだ。それは前方の三人も例外ではない。


 しかし、逃げ場は無い。ひょっとして、私は今未曾有のピンチなのではなかろうか。



「白銀の勇者よ。お前に恨みは無いが、ここで消えて貰う」


 私を撃ち落とした兵士。腕部の鎧の形状が他とは違う、その男が再び手を翳す。あれを受けるのは危険だ。どうにかして回避しなくては。


 しかし、攻撃の正体が掴めないまま、どうすればいいのか。

 ええい、余計な事は考えないで可能な限り、感覚を研ぎ澄ませるんだ。



「…………ふん、だんまりか。死ね!」


 漆黒の腕に膨大な魔力が凝縮され、一瞬の煌めきを放ち腕が揺らめく。攻撃は、既に放たれたようで、その腕からエネルギーは既に失われている。


 見えない。攻撃の速度も、姿が捉えられなければ回避する事も。


 刹那。背筋が凍るほど、不気味な音が聞こえたような気がした。その刹那の瞬間、反射的に私の身体は動いていた。



 何かに、僅かに掠ってしまった左腕から、膨大なエネルギーに弾き飛ばされる。腕ごと弾き飛ばされ、町を囲う石の壁に体が叩き付けられた。



「……爆発、とは違う?」


 動かない左腕を見て、熱によるダメージではない事を確認する。いったい、どんな攻撃をしてきているのか分からない。見えない上に強力な攻撃は、ここまで厄介なのか。


「……直撃を避けたか。だが、避ければ避けるほど、貴様は苦しんで死ぬ事になるぞ!」


 再び煌めく腕。着弾までに時間があったことから、攻撃の速度自体は速くはないのか。まだ、余裕があると動き出そうとした瞬間。攻撃は既に目前に迫っていた。


 攻撃が至近距離まで到達すると聞こえる音。咄嗟に起き上がらせようとしていた体を、伏せさせる。


「こんな攻撃ありなの……?」


 背後にあった石の壁は、その攻撃によって崩壊するかに思えた。だが、実際はそれが通過した場所を塵のように消滅させ、通過していったのだ。削り取るように。


 あの攻撃は下手をしたら味方を巻き込む可能性があるのか。先の攻撃と今の攻撃、速度の違いの意味はなんだ。目に見えないけれど、ちゃんと実体はあった。攻撃していたのは透明な球のような塊。だったら、どうすれば防げる。


 私の思考を邪魔するように翳された腕が煌めく。


 どうにかして、防がなければ。



 相手の攻撃を防ぐ、盾を……


『シールドウェポン、ロック解除されました。両腕部より展開可能です』


 右手に何かを握る感覚と同時に、無機質な声が頭の中に響いた。

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