尋問開始
暫く更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした。
王都の細い裏道を抜け、進んだ先にある開拓途中のまま放置されている広場へと連れられたガナードとベルルマントは、無造作に転がされた朽ちかけの木材へと腰を下ろしていた。
緊張する面持ちの二人の視線の先には、朗らかな表情を見せて話す少女と、不思議な雰囲気を纏う女性の姿がある。
二人が敵意の混じった視線を向けたところで、まったくと言っていいほど意にも介されない。まるで暖簾に腕押しているかのように、受け流されてしまっているのだ。
「それで、どうして私達のことを知っていたのですか? いえ、私たちの事を知ってるというより、私達は貴女達のことを知らないのに、貴女達は私達のことを知っていた。それは、何でなのでしょうか? 心当たりが無いわけでも、ないですけれど」
一瞬、ほんの刹那とも言える程僅かに、鋭くなった女性の視線がベルルマントを穿つ。
「そ、それは……!」
ベルルマントは言い淀む。
恍ける事は不可能だろう。自分の反応が既に答えのようなものだ。
チェノ婆があれだけ手を出すなと、関わるなと言っていたにも関わらず、早々にそれを破ってしまった。
自分がこれからどうなってしまうのか。
あのチェノ婆ですら、二度目が無かったのだ。
まるで何かに閉じこもるように、途端に何も見えなくなってしまったと。プロテクトを掛けられてしまっていた。
圧倒的な実力差。
一回目の占いで位置が王都であったと聞くや否や、飛び出して行ってしまったガナードを咄嗟に追い掛けてしまったのだ。
心のどこかでは、この広い王都を探したところで見つかるはずがない。見られていた事を警戒して既に彼女らは王都を後にしているかもしれない。
そんな、甘い考えがあった。あったが故に、遭遇してしまったあの瞬間、それらが恐怖となって彼女を襲っていたのだ。
女性の視線が、彼女の心を打ち砕く。
「レン、そんなピリピリしないでよ。敵じゃないよ、多分」
その状況を知ってか知らずか、少女が女性を宥めるように言った。
その視線は、ベルルマントではなく、ガナードへと向けられて。
「アギサ……ですが、怪しい事に変わりは」
「君、確か……あの時シバルド村に居たんじゃないかな?」
女性の声を遮るようにそう言った彼女は、ゆっくりとガナードへと近づく。
「えっ…? あっ……!」
そして、彼の腰に手を掛けると、彼が反応するよりも速く腰に携えられた一振りの剣を引き抜いていた。
「その剣は……」
「そそ、そういうこと。レンには前に話したと思うけど、あの時にシバルド村で作ってもらった剣は一本だけだったんだよね」
引き抜いた白い剣を、彼女は確かめるように撫で、自らの腰に携えていた剣を引き抜いた。
「なのに、全く同じものが二つもある。そして、この剣は私が仕留めたモンスターの爪を加工したもの……」
少女は自らの剣を納めると、もう一つを軽く振り、ガナードへと柄を向けて差し出した。
「あの村には同じものを作れる素材を置いて来てた。同じものなんてあの村でしか作れない。まぁ、君が? シバルド村の誰かから奪った可能性だってあるけれど、そんな事をするようには見えなかったからね」
少女の威圧に、一瞬体が硬直したガナードだが、差し出された剣を受け取り、鞘へと戻す。
「そうだね、確かに……どうして私を見ていたのかくらいは聞いておこうか。嘘は、吐いちゃダメだよ?」
そんな事出来るはずもないと思いながらも、彼らは頷くことしか出来なかった。




