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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
絡み合う物語
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装備一新

 「おい、良さげなものがあったぞ。って……嬢ちゃんどうした?」


 戻ってきたおじさんは、鏡の前で膝をつき項垂れる私を見て少し苦い顔をする。その手には彼と比較して幾分小さいサイズの鎧をつけたマネキンが抱えられていた。



 「大丈夫です……久しぶりに自分の姿見たら、全然昔と変わってなくてショックを受けただけなんです」


 「そ、そうか……まぁ、若いってのはいい事じゃなねえか。それよりほれ、調整が必要だから一度これを身に付けてみろ」


 「あ、はい……分かりました」


 立ち上がった私におじさんはマネキンから取り外した鎧を次々に渡してくる。それを覚束無い手つきながらも、自身に装着していく。


 革の鎧とは違う、全体が金属の軽鎧。サイズも私には大きすぎず、小さすぎず、丁度良さそうだ。



 「ふむ……悪くはないな。どうする、これにするか?」


 鎧を全て取り付けた私を見て、おじさんは頷く。


 「えっと……じゃあ、お願いします」


 値段が分からないので、チラリとレンに目配せしたところ、微笑んで頷かれたので購入を決める。鎧って高そうなイメージがあるけれど、どうなんだろう……?


 そんな私の疑問は他所に、おじさんは値段を提示した。


 「元々倉庫の肥やしになってた売れ残りだからな、安くしておくぜ。こんなもんでどうだ?」


 「えぇっ……と、そうですね。ありがとうございます。それでは、その値段で」


 「あいよ。丁度だな」


 値段の分からない私を後ろに、レンが自然な流れで会計を済ませる。けれど、レンの硬貨袋から金貨は出てこなかった。

 金貨1枚よりは安いようだ。良かった。


 「それと、私はこちらをいただいてもよろしいでしょうか?」



 私の鎧の精算を終えると、レンは展示されているものの一つに手をかける。

 金属の一枚板の胸当てに、腰を覆う金属の垂れ。そして丈夫そうな厚手のマントのある鎧だった。両手にはブレスレットと、脚には膝までのガントレット。大きさは私よりは少し大きいレンに合わせられる程度だろう。それに頭をすっぽりと覆い被せるような、柔らかい生地の帽子を合わせておじさんに受け渡す。



 「それなら留め具の調整をすれば問題なさそうだな。一回身につけてみてくれ」


 「ありがとうございます。それでは調整よろしくお願いしますね」



 レンが装着した鎧を確認し、ゆるい部分やきつい部分の留め具を調整していくおじさん。レンの周りを何周か回ると、問題ないと判断したのかレンから離れる。


 「どこにも問題は無いな?」


 「ええ、ぴったりです。ありがとうございました」


 「値段はそこに書いてある通りだ。少し高いが大丈夫なのか?」


 「問題はありません。では、こちらから」



 そして、レンが取り出したものは金貨だった。ついに金貨での支払いを見ることができた。

 やはり、私の鎧は倉庫の肥やしとか言われていた分、値引きでもされていたんだろうか。いや、性能としては前の鎧とは全然違うのだから安くてもいい筈だ!



 などと思っていると、金貨を受け取ったおじさんはジャラジャラと別の硬貨をレンに手渡す。


 レンの鎧でさえも、金貨の価値は超えていなかったようで。




 「アギサ、どうしますか? こちらで武器も取り扱ってはいるみたいですが……」


 レンの視線の先には棚に立てかけられた武器が置いてあるのが目に入る。値札が付いているところを見ると、あれらも売り物なのだろう。

 スペースとしては狭いので、やはり鎧をメインに売っているお店のようだ。



 「良さげなのがあったら買っちゃおうか。おじさん、見てもいいですか?」


 「いいぞ。買ってくれれば尚良いぞ!」



 鎧が売れて上機嫌のおじさんが、ほくほくとした笑顔で答える。

 そんな変わった武器が欲しいわけでもないので、きっと大丈夫だろう。



 移動して武器を見ても、ロングソードやショートソードなど、一般的な武器が目に入る。その中からショートソードより少し短めの短剣を手に取って、構えてみる。


 うん、重くないし振りやすそう。モンスターの解体にも使えそうな感じだし、丁度いいかも。



 「おじさん、この短剣一つとこのナイフ二つで」


 そして、更にそれよりも短いダガーナイフのような、刺突を考えて作られているらしきものを手に取って渡す。


 隣ではレンも同様に短剣と、私とは違ってそのイメージに似合うような長い、魔法使いが手にしているような杖を選んでいた。



 「ん、そっちの嬢ちゃんは魔法使いか。買うものはそれでいいのか?」


 「はい。アギサのと合わせて……これで足りますか?」


 「いや、計算も面倒くさい。これだけで充分だ。残りはまけといてやるよ。結構な量の買い物をしてくれた礼だ」



 レンが取り出した硬貨から、価値の大きいであろう一つだけを手に取り、おじさんはそう言った。


 「ありがとうございます。また、来ますね」


 「そん時も何か買っていけよ」


 「おじさん、ありがとうございました。近くに来くる事があったらまた来るね! 買うかは分からないけど!」


 「おう、買わせるからな! 絶対に何か買わせてみせるからな! また来い!」



 謎のテンションのまま、おじさんに見送られて店を出る。


 買った武器は短剣は鎧の背面腰のホルスター、ナイフは両脚部に固定具をつけてもらった。


 レンは腰に短剣を携え、杖はその手に。



 

 少しだけ強くなったような気がした。

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