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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
絡み合う物語
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鏡が写す真実

 あの鎧は見なかった事にしておこう。


 「えっと、私の鎧がそろそろ壊れてしまいそうなので新しいのを購入しようと思うんですけど……」


 そう、私は鎧を新調しに来たんだ。とはいうものの、鎧の相場はまったく分からない。

 さっきレンが薬を売って稼いだお金でちゃんと賄えるのだろうか。


 「ふむ……確かに相当使い込んだようだな。こんなん身に纏ってたとしても、もう殆ど鎧の役割も果たせないだろう」


 私の周りをぐるりと回って、鎧の全体的な損傷具合を確認しているようだ。元々がそこまで性能の良い鎧ではないとは言われていたので、この一年役目を果たし終えた事はなかなかのものではないだろうか。


 「私が身に付けられそうなもの、ありますかね……?」


 「嬢ちゃんに合いそうな鎧か……少し待ってな」


 おじさんは私に近付き、自分の体との差で高さを測ったようだ。

 裏で作業している女性達に声を掛け、更に店の奥へと消えていってしまった。


 店にレンと二人で取り残される。



 辺りを見渡せば、無数の鎧。

 それはどれも大きく、とても私の体には合わないだろう。

 


 この街を歩いていて、女性で鎧を纏っていた人達は例外なく大柄な人ばかりだったのだ。男の人と比べても遜色無い程の女性身に付けるようなものしか無いのであれば、私が身に付けられるようなものを取り扱っているかどうかといった所だろう。


 悲しいことに、ここで生活し始めて一年。魔鎧の力に頼らずに、生身で生活する事で鍛えられたであろう私の肉体は、見た目では殆ど違いが分からない程度の変化しかなかったのだ。

 もっと、筋肉がついている筈なのけれど、どういうわけなのか自分の腕を見ても、一般人と見間違えられる程にはぷにぷにぼでーなのだから。


 お腹も、このまま生活していれば腹筋が割れたり……なんて、少しわくわくしていたところもあったのだが、例外なくぷにぷに。

 筋肉とは縁がなさそうな、一般的な現代人の肉体なのである。



 一つの仮説として、私の肉体がこちらに来てから変化をしていない可能性。

 それともう一つ、こちらに来て言われるようになった、年齢よりも下に見られるといった、外見的な問題。


 当初は自分がアジア系の顔付きで、現代と同様に童顔のように見られてのものだろうと思っていた。

 思っていたのだが、どうやら少し違うようだ。


 このお店は女性向けの鎧を売りにしているといっていた。それは推測でしかないけれど、男の人より外観を気にする人は格段に多いと思われる。


 壁に掛けられていたのだ、鏡が。

 全身を写す姿見程の大きさの鏡が。



 私はそこで漸く理解した。

 明らかに、自分の姿が自分の知るものより若いのだ。


 鏡に近付き、はっきりと自分の顔を間近で見る。



 ……。




 中学……?

 いや、流石に高校生の頃と同じくらいだろうか。

 自分で見ても、そこに写る自分が年相応には見えなかった。



 お嬢ちゃん。そう言われるのも納得である。


 寧ろ、この一年間でまったく疑問にも思わなかった私の鈍感さ加減に呆れる程に。



 私は静かにその場に崩れ落ちた。

全盛期の肉体。

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