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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
始まりの物語
3/65

白い霧の中で

 ここはどこだろう。


 自分の体が浮いているような、何かに優しく包み込まれているような不思議な感覚。



 自分の体も見えないくらい、辺りが真っ白だ。



 ここはどこだろう。


 -聞こえますか?


 どこからか、声が聞こえる。それは、遠くからのようで、すぐ近くからのようで、反響しているようで、くぐもっているようで、それでいてハッキリと聞こえた。


 -どうやら、ちゃんと聞こえているようですね。



 男なのか、女なのか、区別のつかない透き通った声が続ける。



 -私は、世界の理の管理者。あなたに、お願いをする為に姿を表しています。



 世界の理の管理者? 神様みたいなものなのかな?

 そのようなお方が、私にお願いごと?



 -管理者は、直接自分の世界に手を出す事は禁じられております。通常ならば世界の理を設定し、その行く末を見守るだけの存在。



 私と話をしてるって事は、今は通常じゃないのかな?


 -はい。管理者は、自分の世界を見守るだけの存在。世界とは無数に存在し、それぞれに異なる管理者が存在しています。しかし、私の管理する世界に、異物を紛れ込ませた厄介者の管理者が現れてしまったのです。



 あれ、さっきは世界に直接手を出すことが出来ないって……


 -管理者が、世界に手を下す事は出来ない筈でした。しかし、それは自分の管理する世界だけだったのです。自分以外が管理する世界に手を下す事は並大抵の事では不可能でした。しかし、僅かな歪みを作るだけでも世界には大きな影響を与えてしまったのです。ほんの、僅かな歪みでさえ。



 話のスケールが大きすぎて、よく分からないんだけど、それと私に、どんな関係があるの?



 -……その、僅かな歪みに巻き込まれ、元の世界から隔絶されてしまったのが、貴女なのです。



 それで、私はこの真っ白な空間に?



 -幸い、即座に発見できたので魂の消失までは防ぐ事ができましたが、肉体は失われてしまいました。



 私は死んでしまったの?


 -それに近しい状態ではあります。が、死んではいません。



 うーん、よくわかんないや。



 - 貴女の肉体、阿木早織としての人間の肉体は元居た場所では存在が消滅してしまったため復元することが出来ません。世界から流れ出してしまった為に、です。


 溢れてしまったものは元の器には戻れないって事?


 -はい。しかし、流れ出した先には作り直す事が可能ではあります。



 流れ出した先は、別の世界だったって事?



 -世界とは、全てが隣接しているのです。なので、流れ出した先はどこかの世界である事は間違いありません。貴女は既に、こちらの世界の存在となってしまいました。



 元の世界には戻れない、か。


 -申し訳ありませんが、私の力ではそれは叶いません。



 なら、こちらの世界では、私は生きられるの?



 -それは、可能です。



 うん。なら、私をこちらの世界で生きさせて。どんな世界かは分からないけれど、それはそれで新たな発見の連続で楽しそう!


 -それで、良いのですか?



 もう、どうにもならないことを言ってもどうしようもないんだから。良いも何も、私はまだ死にたくないだけ。



 -分かりました。では、こちらの世界に貴女の肉体を再構築します。崩れた破片をこの世界のものと繋ぎ合わせるだけなのですぐに終わります。



 うん、ありがとうございます。


 -では、阿木早織。自由に、生きなさい。


 自由に?


 -自由に、です。悪の頂点として君臨しても良し、平穏に暮らしても良し、ここから先は私の力の及ばないのですから。



 自由に、か。それなら、私は…………って、そうだ! この世界、人は居るの?



 -ええ、存在しております。言葉は、こちらの世界に馴染ませましょう。この場にいる限りはまだ私の力の及ぶ距離です。


 そっか、良かった。流石に私1人とかだったら寂しいもん。


 -この世界で生きてゆくには強い心の力が必要です。



 心の力、か。ヒーローになれそう。


 -力とは心。心は力になります。それでは、さよならです。この場での記憶は、残らないと思っておいてください



 あ、そうなんだ……少し、残念。不思議体験だったのに。



 -……いきますよ、阿木早織。心の力を信じなさい。




 光が……眩しいのに、綺麗。


 本当に、真っ白な世界。

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