不快な視線
この作品、視点が切り替わることが多いのでページ毎のレイアウトを変更しました。
メインはそのままに、王国側、少年側視点でレイアウトでページのカラーが変わります。
エルフであるレンフィエンタ・アメニコルフィールことレンと暮らし始めて一週間が過ぎた朝の事。
同居人が出来た為に、この一週間は家の改築工事を行っていたのだ。おかげで、今までよりも広く、かつ少し便利に作り直すことが出来た。
大部屋が一つと寝室、そして倉庫。今まで大部屋一つだけだったので、凄く家という雰囲気が良くなった。大部屋も拡張されたからね。
レンは、この世界で初めての友達と呼べるのかもしれない。あの話を聞いた翌日、私はレンに自分がこの世界ではないところから来たという事。更に、自分の持つ魔鎧を見せた。
その威力を簡単にでも説明する為に、大木を両断して見せたのだが、レンは広範囲の木々を魔法で燃やし、消化し、切断するという事を同時にしてみせた。私もその光景に開いた口が塞がら無かった。口なかったけど。
……ずるくない?
それが最初の感想だった。
得意気に鼻を鳴らすレンは、他にも雷や氷、土や治癒などの魔法も使う事が出来るらしい。
一撃の威力で言うのなら、私の方が強いのかもしれないけれど、広範囲を制圧する事に感じてはレンの魔法の方が有効だろう。
魔法って凄い。
こうしてお互いの実力というものを見せ合った私達。きっと、お互いにお互いが自分の事を一番知っているのだろうな。そう思うと少し顔が綻ぶ。
……。
この一週間を振り返ってみたけれど、この世界に来て初めて楽しいと心から感じたかもしれない。
そんな時だった、レンが薬草を集め、薬を作っている時に王都へと言ってみないかと誘われたのは。
王都。
この国で最も栄え、王国の中枢を成す国王の住む城の城下町である。
私はまだ一度も足を踏み入れた事の無い場所だ。
レンはそこに薬を売りに行くという。
家に置いている薬とは別に、質を落とした物をたくさん作っていると思ったら、なるほどそういうことだったか。
私は少し悩んだけれども、了承した。
人混みに耐え切れるか不安だったのだ。人里から離れて生活し過ぎたから。
あれから一週間。
もしかしたら、王都で何か噂になっている事があるかもしれない。情報を集めるために近いうちに行こうとは思っていたのだ。
それに、お金もまぁ、無いこともない。
そろそろこの村で貰った鎧もローブも、あちこち傷んだり壊れたり破けたり。ボロボロなので買い替えるのもいいかもしれない。あと甘いもの食べたい。
コップへと注いだ木の実ジュースを飲み干し、そう思った。
こうして私は王都へと行く準備を済ませる。
私は普段通りの格好だが、レンは頭に耳を隠すようにして布をお洒落に巻き付けている。
布から流れ出す金色の髪は相変わらず見とれてしまう程に綺麗だ。
お互いに準備が終えた事を確認すると、泉を後にする。
それと同時に、凄く離れていた位置から私達を見ていた何かも、姿を消した。
「……気付いてた?」
「私がここに着いた時から居ましたよね? 何なのでしょう……」
「多分、私の動きを観察してたんじゃないかな」
「結界の外からここを除きみるなんて、イヤラシイ人も居たものですね」
「襲ってくるようなら返り討ちにするか、逃げてしまえばいいんだよ。レンというパートナーを得た私に楯突いた事を後悔するがいい!」
「……アギサ、それでは何か悪い人みたいですよ」
「私達は平穏に暮らしたいだけなのにね」
「そうですね……お互い、事情が事情ですから、そうもいかないんでしょうね」
「そればっかりは仕方ない。それより、レンは人間大丈夫なの?」
「私は特に何か思うところがあるわけではないですよ。気付かれてしまうと万が一にも大変なのでこうして耳を隠して幻惑の魔法で知らない人からは人間に見えるようにしていますけれど」
「魔法使ってたの!?」
「……アギサってやっぱりどこか変ですよね」
私達は王都へと向かう。




