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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
始まりの物語
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 歯車が、動き出した。

 一つ、また一つと噛み合い、動き出す歯車が私の体を作り上げていく。重く、力強く、私が作られる。

 眩い光の中で、私の肉体は、鈍く白に輝く金属に覆われていた。滑らかな曲線を描き、指先まで包み込む金属は、光が収まると太陽の光を鈍く照り返した。


 体を動かしてみるが、動きにくいと感じるような事はない。それどころか、今までで一番力が漲っているのを感じるのだ。

 体に張り付くようなフォルムの鎧。ただ、シンプルに、白を基調とし、私を包む。


 不思議と重さは感じない。これだけ体中を金属で覆われているのにも関わらず、全くと言っていい程、重さを感じないのだ。

 そして、体中を確認していく最中、一つの違和感を感じた。


 触覚、ものを触っているという感覚はあるが、熱や臭いなど、一部の感覚が感じられないのだ。

何かがおかしい。顔も、様相は分からないが全体を覆うヘルメットの様な形状なのにも関わらず、息苦しさも蒸し暑さも感じない。

 落ち着いて、体を動かさず、集中する。

 ピタリと、微動だにしなくなる。ほんの僅かな動きも無くなったのだ。

 この体は、呼吸をしていない……?


 私の体はどうなっているのだろう。

 これではまるでロボットのようではないか。


 腕を思い切り地面に叩きつけてみる。


 「わっ……!!」


 それは想像を超える威力で地面を揺らし、その場の土を弾き飛ばし、押さえつけ、地面を陥没させた。

 だが、衝撃は感じたものの、僅かな痛みさえこの腕は感じていない。



 「もしかして……本当に今の私はロボット?」


 ぷしゅーっ。

 まるで、それに答えるかのように、体の随所から排熱を施した。

 私は確信する。ロボットに変身してしまったと。



 何度もこの体について試し、調べてみたところ、いくつかの事が分かった。声は少しくぐもった感じはあるが、出せる。音はしっかりと、方向や距離まで分かる程に聴こえる。ものを触っている感覚はあるが、熱を感じることはなく、また痛みも感じない。視界も良好。ハッキリと遠くまで見渡すことが可能だ。

 変身は任意で解除する事もできる。

 大きな動きや、溜めの必要な動作をしていると、排熱が行われることも判明した。

 この排熱、上手くできない状況になった時、途端にピンチになったりするなんて事が無い事を祈ろう。



 それにしても、変身か。戦隊ヒーローや、ライダーを彷彿とさせる。


 正体不明の謎のヒーロー。

 ちょっと、格好いいかもしれない。



 などと、呑気なことを考えていると、日が傾き始めていることに気が付いた。

 この辺りは見渡す限りの草原地帯。人工物は見当たらない。それどころか、生き物の気配も感じられない。

 かといって、このままここで一晩明かすのも怖いと感じる部分がある。



 行く宛も、目指す場所も分からないけれど、この場から離れよう。

 ここに居ても、何も始まらない。



 私は、機械の体のまま走り出した。そのスピードは、車等にも引けを取らないくらいだったと思う。だが、これでもトップスピードよりかなり抑えてはいるのだ。

 本当に、不思議な体になってしまった。


 この先の事はなるようにしかならない。そう考え、私は先に進んでいく事を決意した。


 日が暮れるまでに、何か人の痕跡を見つけられるといいな。




 夕暮れの草原を、白い影が突き抜けていった。

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