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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
歩き始めの物語
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聖女の泉

 ボスティア草原の騒動から一年が経つ。

 だが、ビモグランデ王国に動きは一向に見られなかった。



 ヴェギアは今、この一年で集められるだけ集めた情報にひとつひとつ、見落としが無いか、不審な点は無いかと書類との睨み合いを続けている。


 現状、判明している事と言えば、白銀の勇者と呼ばれる者が女性であるということ、シバルド村ヒーライ村を隔てる大森林にて、姿を見たという報告が多数あるという事だ。

 白銀の勇者が女性というのも、眉唾ものではあるが。



 大森林には、ボスティア草原ほどではないが強力なモンスターが出没する事もあると言われている。

 魔法を使うモンスターの報告まであるのだ。


 確かに、噂通りの強さを白銀の勇者が持つというのなら、大森林は身を隠すのにはこれ以上無いほど条件の整った場所だろう。



 ヴェギアは悩む。

 大森林とは、その名の通り、広大な森林地帯である。その中で、人間を一人探すとなると、骨が折れるどころの話ではない。

 かと言って、大人数で押し掛けたとしても、相手がそれを警戒して逃げられてしまうか、下手をすれば、敵対したと判断され、返り討ちにされてしまうかもしれない。

 そうなってしまえばもう、どうしようもなくなってしまうのだ。


 ならば、どうするべきか。



 ヴェギアは頭を悩ませる。


 密偵を大森林に送り、少しずつではあるが、探索は進んではいる。目撃頻度から考えて、大森林の奥深くに潜んでいるわけではなさそうだ。


 不意に、執務室の扉が鳴る。



 「む……入れ」


 「お忙しい所、失礼致します!」


 ヴェギアは時計を一瞥し、納得する。


 そうか、定期報告の時間か。考え事をしている間に、思っていたよりも時間が経ってしまっていたらしい。



 「異常はあるか」


 「本日帰還した探索部隊のうち、一人が大森林の聖女の泉付近にて、人工物である小屋を発見した模様です!」


 「聖女の泉だと!? 間違いは無いのか?」


 「我々の望遠能力を持っても、小屋があるという事がなんとか判別するのが限界でした。申し訳ありません……」


 「いや、充分な収穫だ。ご苦労だった」


 「ありがとうございます! 報告は以上になります、失礼しました」



 報告に来たヴェギアの部下は、敬礼を済ませ部屋から音も無く出ていく。


 「それにしても、聖女の泉とはな……」



 一つ、ハッキリとした事がある。

 白銀の勇者は、少なくとも、我々が最大に危惧していた存在ではない。行動に、裏が無い……とは言い切る事は出来ないが、恐らく無いと言ってもいいだろう。


 聖女の泉。

 かつて、天より使わされし聖女が、その身を清めたと言い伝えられる、とても美しいと言われる泉の名だ。

 そこには、純粋な者しか立ち寄る事は出来ず、悪しき心や不純な動機を持って近寄る事は出来ないと言われている。


 アギルゼス王国の聖域ともされ、無闇矢鱈に近寄る者は元より居ないのだ。


 だが、そこに白銀の勇者が住んでると思わしき小屋があるのだという。それは、白銀の勇者が悪しきものではないという一つの証明でもあった。



 そして、ヴェギアの中で点と点が結び付く。


 「まさか、白銀の勇者の正体は……!」



 聖女なのではないか。


 窮地に陥った者を救い、モンスターという驚異を退けてくれている。

 白銀の勇者。


 その姿はとても美しい純白の鎧に身を包んでいると言われている。



 もはや、疑う余地は無くなっていく。


 白銀の勇者と敵対する事は、絶対にあってはならない。そして、おいそれとこちらから近付いていい存在でもない。


 ヴェギアは頭を悩ませる。



 この件、国王様にどのように報告をしたら良いのだろう、と。

実は書いてて楽しいこの人

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