表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
歩き始めの物語
17/65

そして旅立つ者は

総合PVが1000を突破しました!

たくさんの人に読んでいただけて、本当に嬉しいです!

ありがとうございます!


これからもよろしくお願いします!

 その手に握られたのは、全てが白色の剣。

 軽く、丈夫な、とあるモンスターの爪を加工して作られた貴重な一振り。



 あれから、毎日素振りや鍛錬を欠かさずにやってきた。自分の目の前で繰り広げられた惨劇を、二度と見ないために。

 強くならなければならない。


 鈍重な鍛錬用の剣に持ち替え、ブレなく一閃する。

 ただ、それの繰り返しを何時間も、何日も、何ヶ月も繰り返していた。


 少年は成長する。

 憧れた存在を目指し、今日もまた鍛錬を続ける。



 あの日、村で自分は命を救われた。

 真っ白な、世界の闇すらも浄化させるような、天から舞い降りたが如き勇者に。

 身を呈して、自分の盾となったあの人に、あの時死ぬはずだった運命を変えられた。


 他者を寄せ付けない圧倒的な強さ。


 鎧袖一触を表したような、手で触れるだけで相手を薙ぎ倒す、人間離れした強さ。



 その正体は、少年より少し上くらいの、女の人だった。

 あの超人的な強さは嘘のように、華奢で、儚げな印象を受ける少女。風にたなびく黒髪は、艶やかに、人の意識を吸い込むような奥深さがあった。



 少女は記憶喪失なのだという。

 自分に何故このような力があるのかを知らないと。


 村の人たちは少女を勇者だと、救世主だと褒め称え、崇めるように宴を開いた。


 少年も、親に連れられて、少女に助けられたお礼を絞り出した。

 その言葉に、少女は優しい微笑みを浮かべていた。


 先程までの、困ったような笑いではなく。



 少年はその日から、鍛錬を始めた。

 あの日、自分に守る力があれば、村の人たちは誰も死なずに済んだのかもしれない。


 自らの恵まれなかった体格に理由をつけて、不貞腐れていた少年はこの日、動き出したのだ。

 少女の持つ歯車に突き動かされたかの如く。



 あれから少女は村には来ていないが、村に訪れる人達の噂によると、モンスターを退治していたり、襲われていた人達を助けたりしているのだそうだ。

 少女にとって、誰かを助ける事は当たり前の事だと言わんばかりに。


 少年は村長に頼み込んだ。

 少女が手にした、あの剣が欲しいと。


 村長が凄く困った顔をしていたのを覚えている。だけれど、村長はそんな少年の頼みを聞き入れてくれたのだ。


 当然、反対する大人達もいた。

 少年が鍛錬をしているのを、一時ですぐに辞めてしまうだろうと、殆どの大人はそう思っていた。


 だが、村長はそうではなかった。


 少年が必ず強くなると、鍛錬を続けていくと確信していたのだ。



 それから半年後、更に厳しい鍛錬を積み重ねるようになった少年の元に、村長によって、あの白色の剣が届けられた。


 少年はそれを受け取ると、試し斬り用の丸太を一太刀。



 それだけで、少年の続けていた鍛錬が、どれ程のものなのか、明確に分かるほど、素晴らしい一太刀だった。


 少年は、近い内に旅に出るという。



 この一年で少年の成長は速度は天才的だと言われるほどだ。

 体格も鍛錬に合わせるかのように、鍛えられ、身長も伸びた。



 少年の剣の腕は今や、村の中では右に出るもの無く、時折立ち寄りに来た旅人や、兵士にさえも打ち勝って見せたのだ。


 だが、少年はそれだけでは満足出来なかった。


 あの時、自分が見た最強を。


 それには程遠い事が分かっているから。



 少年は旅に出る。


 自らの心と体を鍛えるために。



 少年の思い描く、理想の強さを手に入れるため。




 そして、白銀の勇者に出会いに行くために。








 少年は、旅に出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ