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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
歩き始めの物語
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白銀

 翌日、最後の木材を打ち付け終わった。


 簡易的とはいえ、雨風の凌げる私の拠点が完成した。万歳。

 拠点と言っても、夜寝るために作ったようなもの。居住性で考えると、とてつもなく悪いとも言えるだろう。


 けれど、自分の手で作り上げた拠点か。感慨深いものがあるなぁ。

 しみじみと出来上がった家を眺める。


 巨大な隣接していた木の枝に板を通して固定し、更にそこから地面へと伸びる支柱を作った。その上に、大木の枝を利用しながら壁となる板を張り付け、屋根を乗せた家。ツリーハウス。

 秘密基地感あっていいよね!


 私は集めておいた硬い皮に包まれた果実を割り、齧り付く。酸っぱい。けど、疲れた体にはとても美味しく感じる。



 完成した家に入り、座り込んでこの先の事を思考する。



 さて、家も完成したわけだけど、これからどうしよう。旅をしていくという目標はあるけれど、そんな急いでいるわけでもないし。

 暫くはこの辺りで腕でも磨いておこうかな。

 生身の身体能力も、元いた世界よりは上がっているようで、更にこの世界に来てから実戦で鍛えていた分、少しだけ体付きがしっかりしてきたと思う。

 もう少しでお腹に力を入れたら腹筋が割れそう。



 そういえば、以前に立ち寄った村で聞いた話だけれど、魔鎧の名前……というのもあるらしい。

 多くは、魔鎧発現時に名前を知る事があるらしいけれど、中には自分で名付ける事でその力を開放するタイプの魔鎧も存在するらしい。


 らしい。というのも、そもそも魔鎧自体がレアなものであるため、その中でも異質な名付ける魔鎧というのは、言い伝えレベルのものなのだ。

 けれど、私のこれを魔鎧と呼ぶのなら、私はこれの名前を知らない。


 ともすれば、名前を付けた方がよいのでは?

 名前を付けることで、何か起こる可能性というのもある。

 メインブースター以降、新しい能力は解除されていない。一度試してみるのもありなのかもしれない。


 それにしても、名前……か。

 名前をつける、とは言っても、すぐには浮かばない。それとも、周りが呼んでいるのをそのまま、この魔鎧の名前としてしまおうか。

 うん、その方がハッタリが効いたりしていいかもしれない。


 と、いうことで、名前を仮に白銀としてみる。




 私はその場で立ち上がり、叫ぶ。


 「変身! 白銀!!!」


 『パターン白銀-シロガネ-が登録されました。ロック解除、開始』


 声がした。

 そして、いつもとは違う光。まるで、煌めき輝くような銀色の光が私の体から溢れ、私を形作る。


 新しく、歯車が噛み合い、動き出す。


 細かい装飾が施された白銀の鎧。今までのような、ただシンプルだけだったものとは違い、全身を騎士のような、やや重厚な鎧によって覆われていた。

 優雅な甲冑、とも言うべきだろうか。

 真紅のマントを翻し、大型の盾を携え、その盾の裏には巨大な剣が盾を鞘として差されていた。


 盾から剣を抜こうとすると、鞘の部分が左右に別れ、引き抜かずとも剣が手にされた。

 磨き抜かれた白銀の刀身を持つ剣、そこには私の姿がハッキリと写し出されていた。


 頭部は、今までのような丸いヘルメットではなく、鎧と呼ぶに相応しい甲冑姿で、バイザーの奥から淡く光る赤いものが2つ、燃え滾るような何かを感じさせる。

 凄い、名前を付けるだけでここまで違うなんて。


 以前とどのように変わったのだろうと確かめる為に外に出る。



 私は家から飛び出し、メインブースターを展開させようとする。が、出ない。


 『タイプ白銀では、メインブースターの使用はできません』


 声が聞こえた。そんな。


 私はバランスを崩すことなく着地をする。何度も胴体着陸ばかりするのも格好がつかない。


 確かに、少し走ってみるとすぐに違いは分かった。

 とてつもなく、重いのだ。この体は。

 以前も軽くはなかったが、比べ物にならないくらい私の体は重さを増している。


 まぁ、盾と剣だけでも、普通なら相当な重量があるだろう。それを抜きにしてもだ。白銀の体は重い。



 今までより身軽には動けないかもしれない。


 これは、名前の選択を間違えてしまっただろうか。とりあえず、残されているもう一つの能力、ソードウェポンを展開させてみる。


 今までは右腕に折りたたみナイフのように内蔵されていた剣が、左右の手首、手の甲側から程々の長さの剣を突き出させていた。

 任意で、片方だけというのも可能のようだ。


 もしかして、これはメインの剣や盾が弾かれた時の緊急防御用だったりするのだろうか。

 間合いを測る練習は、この大剣も腕の剣も覚えておかなければ。


 そこまで確認したところで変身を解除する。

 そうして、もう一度叫ぶ。


 「変身!」


 先程とは違い、淡い光が私を包み込む。

 今度は、普段の姿だ。


 白銀と呼びかけなければ、こちらの姿に変身するらしい。私は心底安堵する。

 この姿は使い勝手が良いのだ。


 何はともあれ、私は新しい力を手に入れる事には成功した。

 完全に戦闘特化の変身として、使うようにしよう。正面衝突のような、ぶつかり合いにしか使えないだろうけれど。


 もう一度変身を解除し、いつもの白色の剣を携え、森へと向かう。

 仕事が終わって新しい力が手に入って、お腹が空いた。今日はたらふく食べるぞ。獲物は一匹だけで充分膨れるのだけれど。

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