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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
歩き始めの物語
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とある日の様子

 さて、今日も元気にモンスター退治!

 私は最近、睡眠時のみ魔鎧を展開している。


 それというのも、思った以上に噂の巡りが早く、時たまに通りすがる人達が口にしているのを聞いたからだ。

 優美な鎧に身を包んでいたし、きっと王国の兵士とかなのだろう。白銀の勇者と呼ばれていたのが聞こえた。というか、尋ねられた。


 この辺りで噂になっている白銀の勇者がどんな者なのか知らないか?


 私は、噂だけなら知っている。長身の、巨大な剣を携えた隻眼の男だと聞いた。と、答えた。

 その時の兵士は渋柿を食べたようななんとも言えない表情をしていた。きっと、私が広めた嘘の情報に踊らされているのだろう。

 簡素な礼だけ言われ、兵士達は離れていった。



 これで暫く私がその探している人物だとは特定されないだろう。

 それにしても、白銀の勇者……私がそんな名前で呼ばれているとはむず痒いものがある。いつまでこれで乗り切れるか、少し王国への対応についても考えないといけないかもしれない。


 私は整備された道から外れ、少し森の中へと足を進めていく。

 当初の予定通り、モンスター退治と、食べられる木の実を少し集めておこう。おやつにもなるし。



 暫く進むと、頭上から物音がした。

 これにはもう慣れたもので、瞬時に後方へと飛び退く。


 どさり。


 頭上から降ってきたのは巨大な蛇のモンスターだ。毒こそ無いが、今のように頭上から不意打ちを仕掛けてくる厄介なモンスターである。

 私が奇襲を避けたところで、無防備になった蛇の頭を狙って切り落とす。


 子気味良い切断音と共に、蛇の体が跳ね回り辺りを赤く染めて、そして動かなくなる。

 流石にこの蛇のお肉は食べようとは思えないなぁ。


 切り伏せた蛇をそのままに、私は更に進んでいく。あの蛇もきっと何かの餌になってくれるでしょう。南無南無。



 もう少し先に進むと、食べられる木の実のなる木を見つけた。名前は知らないけど、甘みが強く少し酸味のあるおやつには打って付けの木の実だ。

 手のひらサイズの赤く熟した食べごろの瑞々しい果実を1つ手に取り、一口齧る。


 柔らかい食感と口の中に広がる果汁が、口の中に広がって、至福の時間を作り出す。

 これは以前食べたものより甘味が強い。

 甘いものが食べられるなんて、幸せだなぁ。

 中の種を吐き出し、さらにもう一口。甘い。


 うん、やっぱり甘いものは素晴らしい。

 私は果実を1つ食べ切り、もう一つを手に取る。


 おやつ用にと思ったけど、この果実は柔らかすぎて袋の中に入れてたら潰れてしまう。たくさん採っておきたいけれどこれで我慢しよう。



 そうして、また私は果実を片手に森の中を歩く。森の中の生活も、慣れてきたものだ。


 何か入れ物があれば、この果実を絞った汁とかならジュースとして持ち運べるのにな。長くは保たないだろうけれど、即日なら大丈夫でしょう。


 瓶って偉大なんだなぁ。なんて。



 今日はもう少し先に行ってご飯を調達しよう。この世界で旅をするのなら現地調達。塩だけは、村から貰ってきてたりするので、食べられるお肉ならば塩で味付けをして焼くのだ。


 ワイルドな女でしょ? ふふん。



 ……。




 さてさて、やっぱり森の奥。人の通りのある道から外れた所にはモンスターが多く現れる。

 今目の前に居るのは、額から小さな角の生えた猪のようなモンスター。牙も大きく、丈夫そうだ。


 見た目からして体当たりを主体にしているのかな? なんて、身構えていると、猪はその巨体に似合わない予想外の攻撃を仕掛けてきたのだ。


 淡く光る猪の角から放たれる風の刃。


 咄嗟に身を躱したが、鎧の腕部分に肌まで達する鋭い切り口を残した。攻撃を受けた箇所がじんわりと熱く感じる。

 肉までは切られていないようだが、あれの直撃を受けるのは不味い。と、距離を取ろうとすれば、猪は勢い良く私目掛けて猛進して来た。


 剣を抜き、猪の牙を目掛けて横薙ぎに振るう。その弾かれる勢いを使って転がり、猪の突進を回避した。


 流石に、あれだけ動いていると牙も切り落とせないか。傷は付いているようだけれど。



 さて、相手は魔法を使う。

 そして、巨体での突進は直撃すると私の体なんて簡単に吹き飛ばしてしまうだろう。


 ならば、どうするか。


 そんなものは明白だ。初めて戦う相手なのだから、出し惜しみなどしていられない。怪我すると痛いし。


 なので、全力で行かせてもらいます。


 「変身!!」


 私は光に包まれ、魔鎧の姿へと変わる。猪も警戒したのか、遠くから魔法を放ったようだ。

 だけれど、無意味である。そんなものでは私に傷一つつける事は出来ない。


 魔法は無意味だと理解したのか、今度は先よりも勢いを付けた突進を繰り出してきた。



 私はそれを避けるでもなく、迎撃するでもなく、ただ、受け止めた。

 猪の牙を掴み、猪の突進を受け止める。


 踏ん張った足が少し地面を抉り滑るが、猪の動きは止まった。


 そして、この猪をこの状態のまま持ち上げ、強く地面へと叩きつけた。

 地面が少し陥没し、猪の頭が地面へと突き刺さる。そして、無防備となった腹部に、白爪の剣を突き刺した。


 今日のご飯はイノシシ肉だ。

 私は猪の後脚の片方を切り落とし、それを持ってその場を後にする。切り落とした足は、グルグルと振り回し、簡単な血抜きをした。この変身時のパワーだからこそ可能とさせる力技だ。

 


 こうして、私の1日は過ぎてゆく。

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