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機械仕掛の異世界英雄伝説  作者: 桃芳亜沙華
歩き始めの物語
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歩き出した噂

 私は、いつの間にか救世主だとか、勇者だとか呼ばれている迄になっていたようだ。

 最初、野盗に襲われていた村を救ってから、道行く先で襲われている人や、襲ってきたモンスターを返り討ちにしていたら、そうなっていた。


 まぁ、勝手に呼ばれだしたんだから仕方ない。けれど、念の為最初の村の人達には私の事を語る時は屈強な大男って言うように伝えていた。

 もしかしたらこの先も似たような事があるかもしれないと、保険として、ね。

 ちゃんと効いてくれるかは分からないけど。




 村の人達には記憶喪失と答えて、何故こんな力を持っているのかも分からないと答えた。実質、似たようなものだから。

 そのついでに、この森で見つかる安全な食料等も教えてもらい、少し分けて貰った。

 おかげで、何か食べるものにはありつけそうだ。

 それに、村で振舞って貰った料理も美味しかった。



 またそのうち遊びに来ようと思ってる。


 たくさんお世話になったわけだし。


 そう、あの化け猿の牙と爪は殆ど村に置いてきた。とても価値のある物だと分かって、たくさん持っているのが怖くなったからではない。断じて。

 置いてきた牙は新しい村の象徴として、木彫りの像に取り付けられる予定らしい。


 爪は1つだけ私がそのまま持ち歩く事にした。

 私の剣で削り、形を整え、村の工房を借りて磨き、素材そのままの真っ白な剣が出来上がった。

 変身してないと、丸腰なので。


 それと同時に、村の人たちから選別として金属の板を鞣した革で覆った一般的な軽鎧と、姿をあまり見られたくないという私の要望で、女性旅人によく使われる、少し装飾の付いた質素なローブも貰った。

 ここまでしてもらうのは流石に悪いと断ったのだが、村を助けた事と、化け猿の素材を足してもまだ足りないと言われ、これで手を打つ事にした。

 これ以上はいらないよ、と。


 こうして、村を後にした私は道すがら、襲われている人を助けたり、モンスターを倒したりで自作の剣の使い心地を試したりしていた。

 生身でも扱えるほど軽く、斬れ味も申し分無し。


 剣を構えるとへっぴり腰になっていたのも最近はマシになってきた。

 訓練をした翌日には筋肉痛で、変身……聞いたところでは、魔鎧……というものに似ているらしい。私は全身が鎧というか、ロボットになってしまうのだが、取り敢えず私もこれからはそう呼ぶ事にする。魔鎧の状態で肉体を休息させるといった方法を取っている。

 どういうわけだか、変身している間肉体は休眠ているようで、小さい傷などが暫らくすると治っていたりするのだ。

 更に言うと、普通魔鎧というのは体の一部のみに現れるそうだ。そして、それぞれが特殊な能力を持っていて、それこそ個人差がある自分だけの装備、のようなものだという。

 確かに、野盗のリーダーも腕だけにしか出ていなかった。


 やはり、私のは他のものとは勝手が違うらしい。言ったら面倒なので誰にも言わないけれど。





 それと、あの野盗達は村人の若い男の人達が王国に突き出しに行くそうだ。野盗達のリーダー始め、数人は息絶えてしまっていたらしいけれど。

 うん、私人を殺してしまっていた。

 まったく実感沸かないけど……殺してしまったんだなぁ。



 けれど、ここでは生きるか死ぬか。善だ悪だと正義の味方みたいな事は言わないけれど、自分と関わりを持った人達が殺されてしまうのは嫌だな。

 今度からはそういう人達を最優先にしていこう。

 一番は、自分の身の安全だけれど。



 そういえば、誰かに自由に生きろって言われてたような気がする。

 自由に、か。

 それなら、この広い世界を見て回るのもいいかもしれない。自分の足で、時間をかけて、ゆっくりと。


 途中、誰かと一緒に旅をするのもいいかもしれないなぁ。



 そんな先の想像を浮かべながら、私は歩いてゆく。先の分からない旅。恐らく、危険の伴う旅。

 私はそれでも、先に進む。

 私の知らない何かを、知りたいから。もっと、不思議なものを見たいから。だから、自由に、誰にも縛られず、歩いてゆく。

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