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六話「戦乱」

次の日の朝……

エレナの手筈で早々に旅の用意がされていた。

その手早さはまるでアルフレッド達をいち早くここから追い出したいといったものなのかそうではないのか、彼らには察することもできない。

それでも抜かりない準備がされていたことに感謝を述べるのであった。


「それでは行ってまいります。総領事様」


エレナは畏まったようにお辞儀をして出入り口の門まで見送りにきたアメシストにそう告げる。

アメシストは今まで見たこともないような無邪気な笑みを浮かべ「行ってらっしゃい」とエレナに告げた。

アルフレッドが見ていることに気が付くといつものような不敵な笑みを浮かべる。

それを気にする素振りをアルフレッドが見せないとアメシストはなにも言わずにそのまま屋敷へと戻っていった。

エレナがこちらにくると「行きましょう」と言って皆を馬車に乗せた。

そして彼女は馬車の前部に座り馬を操り馬車を動かす。

馬車はこの間乗った豪勢なものではなく、一般的な籠のような作りで荷馬車として使われているタイプである。床の部分には藁を敷いてあり気楽に座れたり寝れたりできるようになっている。

後ろの部分は布が上から掛けてあり外からは様子をみることはできないようになっており、前部は馬の操縦者と気軽に会話できるようになっている。

四人は何事もなくトーアを抜けて次目指す町……工場町「ガイガル」に向かっていた。


ガイガルはこの世界有数の機械を取り扱う町である。

機械とは鉱石や木を加工して人間の住居や武器、魔法石などを低コストで作り出すことのできものであり、使用設置には帝都の許可と承認が必要となっている。

そのためガイガルはレルア、トーアと比べ規模も大きく人口も多いさらには帝都の目も掛かっているためか治安もよく人が集まり、情報があつまる。

その節の人間にはもっとも好まれる町となっている。


「で、次の町でどうするんだブルーネ?」


アルフレッドは思い出したように唐突にブルーネに問いかける。

ブルーネは「フッフー」と鼻を鳴らして、なにか紙を取り出しそれを読み上げる。


「まず、私たちはガイガルの町長の元へと向かい。別紙の証明書とエレナの口添えで身柄を保証してもらう。それとこれからに必要な装備を買って……」


そしてブルーネの表情が強張る、口を開けて震えて始めている。

エレナは前を向いたまま文章の続きを口に出す。


「ガイガルで第三の竜……翠「サンドライト」の情報を探せと……書かれているはずです」


その言葉にブルーネはハッとして我に返る、その表情はいくらか青ざめているが少なからずは平常に戻りつつある。

アルフレッドは「竜……?」と訝しげに聞き返す。

エレナはそれ以上は黙って口を閉ざしてしまった。

その態度に呆れたように諦めたようにアルフレッドは短くため息を付くと馬車の壁にもたれかかった。

それから幾らか時間が経つと唐突にブルーネが口を開く。


「私と違い人間社会に溶け込んだアメシスト……最後まで帝都に抗い続けたガーネット……そして帝都に拘束されたのがサンドライトだ。サンドライトは最後まで平和的に帝都と分かり合おうとした、しかしガーネットの行動が危険の目を生み出しサンドライトは拘束された……」


そこまで話すと大きく息を吐いてブルーネはどっと汗を吹き出した。

そしてエレナが「お疲れ様です」と表情も変えずに言うとそのまま続けてエレナが口を開く。


「サンドライト様の身の安全はアメシスト様が多額な資金を帝都に送り続けることで確立されています。そして唯一サンドライト様にお目通りが叶うのはアメシスト様だけなのです」


そこまで言うとアルフレッドの表情が青くなる。

恐る恐る口を開きエレナ、もしくはブルーネに向かって。


「ま、まさか僕たちがその竜に会うのか?」


それを聞くと、ブルーネは恐る恐る頷き、エレナはなにか問題が、といった表情をしている。


「僕たちは帝都に顔を見られてる、態々敵の本拠地に飛び込むなんて馬鹿な真似出来るわけないだろ」


と声を荒らげてアルフレッドはいう。

しかし、エレナはまったく感情の篭らない声でこう言い放った。


「これがアメシスト様の目的です。竜族の開放……そして反逆の狼煙を上げる。そこまで考えておられるのです」


「ちょっと待ってくれ……開放?」


「はい、あなた方には情報収集とともにサンドライト様の開放を命令されています」


それを聞いた瞬間、アルフレッドはブルーネの顔をすごい形相で覗き込んだが、ブルーネの恐怖に満ちた表情を見て落胆の表情をした。


「一応、逃げ出してもいいのですよ」


エレナの言葉をきいてアルフレッドには逃げ出すといった選択はできないのだと再確認させられた。

ティアはなにも言わずアルフレッドを見ていた。


「まもなく到着します」


そして四人の乗った馬車は問題もなくガイガルの町へと到着した。


時刻はお昼どきを超えていた。

町は昼食を取ろうとしている客に溢れる飲食店やマーケットは軽いお祭り騒ぎになっていた。

規則的にならんだ町並みにアルフレッドは驚きの声をあげている、鉄で作られた家や大きな石造りの家が並ぶのは普通の町では見ることができない。

それだけこのガイガルという町が機械というものが浸透し、生活の一部になっていることが見て取れた。

そしていたるところに帝都の兵士が見回りをしているのもこの町の特色なのだろか……そう考えていると馬車は無駄に大きな漆黒に彩られた館に到着した。

エレナが「待っていてください」と言ってそそくさとどこかへいってしまう。





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