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校則で体育の時は服だけでなく靴下も替えないといけなくて、指定の白いソックスはすぐにずり落ちてしまうためソックタッチは必需品だったのだけど、たまたま立風さんはその日教室に忘れてきてしまったらしく、わたしが使っている時、これまたたまたまそばにいた立風さんが、私にも貸してくれない、と話しかけてくれたのだ。
その時いわれたひと言を、いまだによく憶えている。
――あ、これ私の持ってるのと同じだ。おそろいだね。
おそろいだね。
おそろいだね、という響きはなんて素晴らしいのだろう。あんなにかわいい人と、わたしがおそろいだなんて。いや、人そのものがおそろいじゃないことは鏡を見るまでもなくわかってる。
そうじゃなくて。
どんなに小さくても、どんなに短い一瞬でも、誰かと何かしら重なることがあると、すごく嬉しいものなのだ。友達の少ないわたしにとっては特に。ましてやそれがあの立風さんだったのなら、もう嬉しさを通り越して感動でのぼせてしまう。実際その時もぼーっとして頭が働かず、おかげで測定値はほとんど低い数値をたたき出していた。
体重だけを除いて。