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新世界  作者: 新々
83/84

83

 うるおった唇が、歌うようにわたしの名前を呼ぶ。

「のちりゃん」

 ちゆちゃんの香りに混じって、シャンプーの匂いが鼻に届く。顔を近づけると、その匂いは重みを増したように濃くなっていった。

 さっきと同じように鼻先が互いに衝突を避けて左右に傾く。

 吐息が、熱が、ぐっと近づいて。

 そして。


 わたしは初めてちゆちゃんに触れた。

 唇に、唇で。

 くちびると、くちびるで。


「ん……ふぅ……」

 そのつもりもないのに、自然と声が漏れてしまう。お互い落ち着ける場所を探るように右に左に向きを変えながら、なんども唇を重ねては離して、

「好き」

「好き」

 といい合ってはまた重ねて、声と吐息を漏らして。

 気づくと世界は真っ暗だった。

 それが目をつむっているせいだと気づくのに、しばらく時間が必要だった。

 す、とまぶたを上げると、ちゆちゃんも薄ら瞳を覗かせていた。

 暗がりの中でも、その瞳の中にわたしが映っているのがはっきり見えた。

 ちゆちゃんの瞳が捉える世界に、わたしがいる。

 わたしのいるちゆちゃんの世界を、わたしが覗いている。

「のりちゃん……もっと、ちょうだい」

「わたしも……ちゆちゃんが、欲しい」

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