表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新世界  作者: 新々
80/84

80

 午前中の会話をぼんやり思い返す。あの時いっていた普通じゃないとか、気持ち悪いとかいう話は、きっと昨日のちゆちゃんとのやり取りのことをいっていたんだろう。本当のことはさっちゃん本人に訊いてみないとわからないけど、でも。


 ――ちょっとでも好きの方向に傾けられたらさ、すげぇいいと思わない?

 ――だってそっちのほうが気持ちいいわけだしさ、自分にとっても。


 あれは、心からの言葉だったんだろうと今ならわかる。

 根拠はないけど、強いていうなら親友の勘――かな。

「でも本当に感染うつってたら、どうしよう。冴木さんがのりちゃんのこと好きになっちゃたらどうしよう」

 ちゆちゃんが不安げな声でいう。

「なるわけないよ。心配?」

「心配っていうか……本当にそうなったら、すごく嫉妬しちゃうかも」

「なんか怖いね」

「……うん。すごく怖い。でも、それぐらい私、のりちゃんのことが好きだから。大好きだから」

「私もちゆちゃんが好きだよ。大好き」

 すっと身体を離して、お互い見つめ合う。

「のりちゃん」

「ちゆちゃん」

 首に回されていた手に力がこもる。その優しい誘惑に、わたしの身体が前へと傾く。触れそうになった鼻先の軌道をお互い示し合わせたように左右へ逸らして、その下にある柔らかいものを重ね合わせようと、さらに近づいた、その時。

 カン、カン、カン――と、階段を踏む音がすぐ真下で響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ