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「ごめんね、ちゆちゃん。傷ついたよね。もうさっちゃんとは絶交するから」
「ううん、そこまでしなくていいの。冴木さんも謝ってくれたし、気持ち悪いっていったのも撤回してくれたから」
――わかったからもう泣くなって。
――あたしもいい過ぎた。気持ち悪いっていったのは撤回する。
――ごめん、謝るから。本当に、ごめん。
「なんどもごめんっていってくれたんだけど、でも私、全然涙が止まらなくて、それにちょっとヒステリックになってたところもあって、たぶん座り込んでる私を立たせようと思ったんだろうけど、冴木さんの手が私の肩に触れた時、思わず払いのけちゃって。せっかく撤回するっていってくれたのに、私のこと気持ち悪いって思ってるんでしょ、触らないでよ、感染るよって、そういっちゃって」
「それで、さっちゃんはなんて?」
「感染せるなら感染してみろって。そしたら私の気持ちがわかるかもしれないからって。からかってるのかなって思ったけど、顔は真面目だったし、冗談でいってる風でもなかったから、じゃあ触るよ、本当に感染しても知らないよっていったの。そしたら思う存分やれっていうから、私」
殴っちゃった、とちょっとだけ楽しそうにいった後で、
「あ、でもパーだよ? って、そういう問題じゃないよね。ごめん」
とすぐにそういい直して、もう一度ごめんと沈んだ声で謝った。
「……そっか、だから腫れてたんだ、ほっぺた」




