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「気持ち悪くなんかないよ」
わたしと同じことをしていたと知って、むしろ嬉しかった。
「でも、冴木さんは気持ち悪かったみたい」
「さっちゃんに話したの?」
「まさか、いわないよそんなこと。でも、怪しんでたんじゃないかな。私と同じ中学の娘がテニス部にいるから、その娘からいろいろ聞いてたみたいだし」
「気持ち悪いって、本当にそういったの?」
「うん。あんまり変なことするなよっていわれたから、私すごくイラッときて、なんであなたがそんなこというの、のりちゃんのなんなのって訊いたら」
――親友だよ。親友だから心配なんだよ。
「はっきりそういわれちゃって。じゃあ好きじゃないんだって訊いたら、好きだよって返されて。そうなの? 私ものりちゃんのこと好きだから、じゃあ私も同じ言葉を返してもいいよね、のりちゃんに近づかないでねって、そういったの。そしたら」
――それこそ、規子のなんなんだよ。
――それに好きって、どういう意味だよ。
「その言葉を聞いた時すごく腹が立ったの。どういう意味かなんて知ってるくせにって。でも誤魔化したりしたら負ける気がして、だからこういったの。人としてとか友達としてとか、ましてや親友としてじゃなくて、恋愛対象として好きなのって。キスだって、それ以上のことだって、したいし、されたいって」
――されたいってなんだよ。
――規子を見て、いつもそういうこと想像してんの?
――気持ち悪いんだけど。




