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「自分でもどうかしてるって思ってたんだけど、でも、同じもの使ってるし、一瞬だったら他の人にも見つからないかなって、そう思って」
すっとバッグからリップを取り出す。その慣れた動作に、もうなんども触れられているのだということを、ようやくのように知る。
「着替える振りしてのりちゃんのと交換したの。見える?」
と裏返して見せてきたリップの底の部分には、ハートのシールが貼ってあった。
「前にもいったけど、私ね、お気に入りのものにはみんなこのシール貼ってるの。本当は蓋に貼ってたんだけど、気づかれると思ったから貼り直したの」
「そうだったんだ。全然知らなかった」
「のりちゃんといっぱいキスしたかったから、なんども取り替えたんだよ」
そういって子供っぽく笑う顔を見て、いつかイタズラとかするよといっていたことを思い出した。
「でも、そしたら止まらなくなっちゃって……のりちゃんがもっと欲しくなっちゃって、我慢できなくて」
そこでいったん押し黙った後、実は下着も交換してたの――と、ちゆちゃんはぽつりとそういった。
「一緒の下着つけてる月曜日の時だけ、プールの授業で着替える振りして、私こっそりのりちゃんの下着履いてたの。サイズは同じだし、わからないかなって……私、のりちゃんの履いて、なんどもしたんだよ。気持ち悪いことして、本当にごめんね」




