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――あたしは何があっても規子の親友だからな。
ふと、さっちゃんの言葉を思い出す。
「そう、なのかな。ちゆちゃん、さっちゃんと話したの?」
「うん、昨日ね。冴木さん、何かいってた?」
「何かって……別にいつも通りだったけど」
「そっか。私ね、昨日の放課後冴木さん呼び出されて、のりちゃんに変なことするなよって怒られたの。私のしてること、冴木さんたぶん気づいてたんだと思う」
「してること?」
「……前に、のりちゃんは友達がストーカーにあってるって話したよね。バッグが開いてたり、視線感じたりしたって。あれ、本当は友達じゃなくて全部のりちゃんのことでしょ?」
そうだよ、と今さらのように肯定すると、ごめんね、とちゆちゃんが謝ってきた。
「それ、全部私がしたの」
話を聞くと、その契機はまたしてもさっちゃんだった。
なんでもあの日、ちゆちゃんもカフェテリアにいたそうで、わたしがさっちゃんのジュースを飲んでる姿を見て、相当に嫉妬したらしかった。ちゆちゃん本人の言葉を借りれば『うらやましくて、悔しかった』のだそうだ。
「だからね、私もしたかったの」
「したかったって、何を?」
「間接キス」
そういって、そばにあったわたしのバッグを引き寄せた。




