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「……ちゆちゃん?」
ちゆちゃんはわたしの肩に頭を埋めて、ごめんね、ごめんねと泣きながら、わたしをいっそう強く抱きしめた。
「えっと、ちゆちゃん? ちょっと……痛い、かな」
「……ごめん」
す、と腕がゆるむ。でも、ちゆちゃんはわたしを抱きしめたまま、離れようとはしなかった。
すすり泣く声が耳もとでこだまする。
薄ぼんやりした天井は、それだけに距離が計れなかったけど、不思議とすぐそばにあるように感じた。
手を伸ばせば触れられそうなくらい近くに。
そうやって天井をしばらく眺めながら、ちゆちゃんのいった好きの意味を考えてみる。でもそれは考えるまでもなく、ちゆちゃんがどういう想いでその言葉を口にしたかなんてことはすぐに理解できた。
その瞬間、わたしの中で何かが氷解した。
すっとちゆちゃんが身体を浮かす。ちゆちゃんの影に、天井がすっかり隠される。垂れ下がった髪がわたしの頬をなでて、ちょっとくすぐったい。
「私、のりちゃんが好き」
「わたしも、ちゆちゃんのこと好きだよ」
自然と言葉が口から出る。




