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相手がちゆちゃんだったら、たぶんわたしは何をされても、どんなことを要求されても、拒むことも断ることもしないだろうと思う。少なくともしてきた憶えはないし、今後もするつもりはない。
絶交して、といわれたら、さすがに頷くことはできないけど。
だからちゆちゃんがいってた話というのが気になった。でも、さっきから黙ったまま、わたしの勘違いじゃなければ少し緊張気味にわたしの首に手を回しているところをみる限り、あまりいい話ではなさそうだったから、聞くのがちょっとだけ怖かった。
でもきっとそれはちゆちゃんも同じだろうし、最初に声をかけたのはわたしのほうだから、わたしから話すのが礼儀というか順序というか、筋だと思う。
どうせ嫌われるのはわかってるし、それならもういっそのこととことん嫌われてしまったほうがいいのかもしれない。
本当はそんなのイヤだけど。
でも、それくらいのことをわたしはしてしまったのだから。
二、三度深呼吸をした後、ちゆちゃんからそっと離れて、バッグに手を伸ばそうとした、その時だった。
離れかけたわたしの身体を追うようにしてちゆちゃんが抱きついて、
「……ごめんね、のりちゃん。もう、我慢できない」
と耳もとでそう囁いた後、勢いそのままわたしを床に押し倒した。
「ち、ちゆちゃん?」
ちゆちゃんはぎゅうってわたしを抱きしめたまま、
「……私、のりちゃんが好き」
と小さく、でもはっきりとそういった。
「私、のりちゃんが好き」
もう一度、同じ言葉を重ねる。
「ごめんね……好きになっちゃって」




