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結局それって気に食わないって話だろ、とさっちゃんはどこか悟ったようなものいいでそういった。
「それって好きだから普通、嫌いだから普通じゃないってこと?」
「そう。その好き嫌いにしたってたいした基準もなくて、いい方は悪いけど、ただそれが気持ちいいか気持ち悪いかってだけのことじゃん? まあ、さすがに気持ち悪いのはイヤだけどさ、でもだからっていって、好みに合わないからそれは普通じゃないってすぐに切り捨てるのはさ、やっぱりいけないよな」
頷くと、そうだよな、とさっちゃんは満足気に頷き返した。
「誰にも迷惑かけない、なんてのは横暴だけど……そんなの無理に決まってるわけだからさ。でも、本人が本当に好きで、気持ちよくって、それで本人がなんつーか成長? でも前向き? でもいいけど、とにかくそんな感じでいい方向に進めてるんならさ、まあ嫌いからすぐに好きになれっていうのは難しくても、まわりもさ、話を聞いてみることぐらいはできると思うんだ。それでも相容れないならさ、その時は仕方ないけど、だからっていって拒絶するんじゃなくて、そっかあって、そういう人もいるんだなって、素直に認めるっつーか、容認? ってまあ同じだけど、そんな風にさ、ただ嫌いって、気持ち悪いってところから、ちょっとでも好きの方向に傾けられたらさ、すげぇいいと思わない? だってそっちのほうが気持ちいいわけだしさ、自分にとっても」




