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規子、と呼ばれてちょっとだけドキッとする。
「どうしたの、さっちゃん? さっきからいつも通りおかしいよ。後、ちょっとほっぺた腫れてない?」
「いつも通りならおかしかないっての。ほっぺたは……まあいいよ。でも、おかしいといえばおかしいのかもな」
真面目な顔になっていう。
「ってか、おかしくない人なんていないよな、マジな話。おかしいって普通じゃないってことでしょ? じゃあ普通ってなんだよ。普通な人間っているのかよって。のりすけもさ、そう思わない?」
「うん。そうだね」
話が見えないけど、否定する根拠もないので一応同意する。のりすけに戻ってちょっとだけ寂しくなったわたしのことなんか気にしない様子で、さっちゃんは続ける。
「普通ってなんか基準みたいなイメージだけどさ、たとえば普通の成績ですっていって、オールCだったら、どう思う?」
「普通、じゃないと思う」
「だよな。全部Bだったあたしがいうのも変だけどさ、それって逆に普通じゃないよな。でもさ、それってあたしらの感覚で、毎回その成績で、本人にとってはそれが当たり前だったら、きっとそいつにとっては普通なんだよな。まわりが異常だ、おかしい、なんていったって、結局そいつが勝手に思い込んでる普通っていう基準からずれてるってだけで、いつもオールCの本人からしたら、まわりがみんな普通じゃないんだよな」




