56
「のりちゃん、ちょっと顔赤いよ?」
その変化に気づいたらしいちゆちゃんが、座ったままわたしを覗き込んでいった。
「大丈夫? 風邪ひいた?」
「ううん、大丈夫だよ」
「本当に?」
そういって、額をくっつける。
あまりのことに、一瞬びくっとなる。
演技をしていたはずのもうひとりのわたしが急に舞台を降りる。
「んー、でもすごく熱いけど?」
「そ、そうかな」
そらした視線が、ちゆちゃんの真っ白な足に惹きつけられる。
小さな爪。細い足首と柔らかくカーブを描いたふくらはぎ。
小さく膨らんだ膝と、そこから伸びてスカートの中に隠れる太もも。
ちゆちゃんの脚。
ちゆちゃんの、あし。
「ん? どうしたの?」
声をかけられてはっとなる。
「な、なんでもない」
そう答えてもう額が離れていることにようやく気づく。わたしは目のやり場に困って、反対側の床を見た。と、そこで脱ぎ捨てられたわたしのソックスが目に入る。しまったと思った途端、胃のあたりがじゅっと焼けたように熱くなった。
「おっと落ちてる」
そういっていったん机から降りてソックスを拾い上げた後、ちゆちゃんはまた机に座り直した。




