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新世界  作者: 新々
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 一世一代の大舞台を踏んだような気持ちだった。

 中学の時、演劇部に入りたての頃、当時の部長からおもしろい話を聞いたことがある。なんでも演技をしている時、ごく稀にキマることがあるらしい。キマるとは部長の言葉で、いわゆるりつかれてしまうようなことをいうのだけど、部長曰くその時の記憶がないわけではなく、むしろ鮮明に憶えていて、演技中もずっと意識があったのだとか。

 ひとつの身体の中に、自分とキャラのふたつの意識が存在していて、キャラが自分の身体を使っているところをそばでながめるって感じかな――と、部長はそうもいっていた。

 その当時はあんまりよくわからなかったけど、今なら部長のいっていたその意味がわかるような気がした。

 わたしはまさに今、キマっていた。

 あるいは自分がふたりに分かれてしまったといってもいい。

 ちゆちゃんと話すわたしと、それをそばで眺めているわたしと。

 傍観するわたしはでも、足もとでちゆちゃんを感じる気持ちよさと、いけないことをしたといううしろめたさと、ひょっとしたらバレるんじゃないかというスリルとがない交ぜになった、じわじわと温まるような熱っぽい興奮に襲われて、身体が熱くて仕方がなかった。

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