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わたしの足が、ちゆちゃんの中に入っていく。
わたしを呑み込んだちゆちゃんはしっとりしてて、ちょっと冷たくて、その肌触りに、履き終えた瞬間わたしは知らず、ぞくりとした。
全身を貫くようなその刺激にたまらなく興奮している自分に気づいた時、がらり、と扉が開いた。
「あ、のりちゃん」
やってきたちゆちゃんに声をかけられて、破裂しそうなくらいに心臓が脈打った。
手を振りながら、ちゆちゃんがこちらに向かってくる。
「追試どうだった?」
「あ、うん。どうかな。一応がんばったけど」
「そっか。でもとりあえず終わったんだよね。おつかれさま」
「ありがとう。ちゆちゃんもおつかれ」
「うん、本当つかれちゃった」
「あ、ごめん。退くね」
そういって立ち上がりかけたわたしを、いいよ、そのままで――と制して、ちゆちゃんは机に座り、ちょっと聞いてよのりちゃん、といって日直や図書委員の仕事の愚痴をこぼした。わたしは動揺していることを悟られまいと、必死で耳を傾けるふりをして、そうなんだとか、大変だったねとか、笑ったり頷いたりしながら、自然な相槌を打つよう努めた。




