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それは温かい幸せよりも、より強くちゆちゃんを感じられた。
だからもっとその刺激が欲しかった。もっとちゆちゃんを感じたかった。
感じて、苦しんで、気持ちよくなって、そうやってちゆちゃんで何もかも満たして、溺れるくらいの快感を得たかった。
そんなわたしが、ちゆちゃんの私物の置いてある教室にひとりいて、何もしないでいられるわけがなかった。
きらり、と空が一瞬きらめく。
その瞬間、わたしの頭の中にも閃光が走った。
遅れて届いた雷鳴と同じく、時間差で心臓がバクバク鳴る。
けれども不思議と気持ちは落ち着いていた。
身体と心がゆっくりと乖離して行く。
やがて離れていった心に引きずられるようにして、わたしはちゆちゃんの席へと移動した。
イスに座り、クーラーで冷え切った寒々しい刺激をお尻に感じながら、フックに引っかかっているソックスを手に取る。冷たく、湿り気を含んだその感触に、身体中が燃え上がったように熱くなる。
わざわざ鼻を近づけなくても、ソックスからはちゆちゃんの匂いがした。




